自分を休ませる練習
- 作者:矢作 直樹
- 発売日: 2017/10/20
- メディア: 新書
はじめに
本来マインドフルネスとは,何かの行為を指すのではなく「今この瞬間」に気づいている状態を言います.
歩いているとき,家事をしているとき,どんなときでも,日常生活の動作ひとつひとつに心を込めて,今に意識を集中させる,それこそがマインドフルネスの状態であり,心とからだがリラックスできている状態なのです.
マインドフルネスとは新しいことでも何でもなく,「本来の自分を取り戻す」ということなのです.
第1章|やわらかな心を取り戻す
頑張る人って結構な割合で「頑張りすぎる人」化してしまう.これもまた事実です.
たぶん,良い意味での「いいかげんさ」が不足しているのでしょう.もっとやわらかい考え,やわらかい態度でいられれば,「こうすべき」とか「こうしなくちゃいけない」という頑なな態度にはなりません.すると自然に,それまでのように頑張りすぎることがなくなります.
こうすべきと考える人はまじめな人ですから,頭から否定はしませんが,しかしそれは自分にとどまらず,次第に他人にも同じように強いるようになります.そこが厄介なのです.人は皆,違う価値観で生きています.
今に集中できているとき,心は今を楽しむことができます.その状態こそ,マインドフルネスな状態であり,リラックスしている状態なのです.
「リラックスする時間がない」というのは思い込み.日々に集中することこそが,最高のリラックス.
誰に対しても,妙な期待をしない.
親だろうと,兄弟・姉妹だろうと,夫婦だろうと,親友と呼べるような人物だろうと,恋人だろうと,親しい上司や部下だろうと.誰であっても期待しない.
信頼はしても,期待はしない.そして,求めない.
どんなことだろうと,結果を求めない.求めると,相手や状況への「依存」が必ず生まれます.この依存が,ちょっと厄介です.
「何かをしてくれたらありがとう,してくれなくてもそれが当然」
「約束を守ってくれたら感謝,守ってくれなかったら忘れよう」
この二つ,私は常に心に置いています.
まあそんなもんかな,というくらいに,何ごとに対しても考えていればいいのではないでしょうか.突き詰めて考えると,いろいろしんどくなります.
第3章|ほどよい暮らしを取り戻す
歩くときは,歩くことに集中しましょう.
どこかへ「行くため」に歩くという意識は,手段に集中しており消極的です.
それよりも歩くことを楽しむ,「歩くため」に歩く,この気持ちこそ大切です.
坐るときは「立腰」を意識してください.
立腰とは,腰骨を立てて坐った姿勢です.腰をグッと伸ばす感じです.
立腰は血流や内臓の働きを活発にします.自律神経にも良い影響を与えます.
- ウォーキングは前進の筋肉に刺激を与える.自転車や階段の昇降は,とくに腸腰筋への刺激と活性化に寄与する.
- やることでリラックスできる,続けることで落ち着く,力がみなぎる.自分にとってのそんな気持ちいいことを習慣にする.
第4章|ありのままの感覚を取り戻す
心に思うことは,すべて顔に出ます.顔に出ると,次は口に出ます.
私たちが口に出していることは,その前に顔に出ているし,さらにその前に心で思っていること.
顔が疲れているということは心が疲れている証拠.
- 「気分が良くない」と感じる空間にいなくていい.「気持ちいい」と思う感覚に従えば,心はおだやか.
第5章|自然の中の自分を取り戻す
- 風の匂い,日の長さ,空の色.少しずつ変わっていくことに気づく.
- 機械の中で考えず,自分の頭で考える.写真で満足せず,本物を見に出かける.
第6章|「今」に意識を取り戻す
私たちに最も必要で,重要で,欠かせないこと.それは,「今を感じ,今を楽しみ,今に意識を取り戻す」こと.そのためには,集中すること.これが一番の早道です.
目の前のことに集中するために一番簡単なのは,「好きなこと」をすることです.最近集中できていないな,と感じる方は,まずは自分の好きなことに夢中になってみてはいかがでしょう.
- 自分の時間を守るという考え方も,私たちが「今を意識する」ために重要.
- 自分の時間を生きることで,「今」に意識が向く.
思考,評価,感情──.
この世には,私たちを左右する要素が多々ありますが,それらに左右されることなく,自由自在で,のびのびする.縛られない.これが理想です.
嫌だなあと思うなら,引き受けない.
感情を乱されるようなら,付き合わない.
誰かの勝手な思考や感情に,振り回されない.
そんなこと常識だよと笑われても,あまり気にしないこと.
公序良俗に反するような行為はダメですが,そうでなければ自分がやりたいように生きること,行動すること.他人の評価に一喜一憂しない.
頑張りすぎる人の毎日をラクにするチェックリスト
- 心をゆるめる:
- 頑張りすぎる
- 「いいかげん」になる
- 休む暇がない
- いつでもリラックスを目指す
- 誰かのことを気にする
- 自分の人生を大切にする
- 頑張りすぎる
- 日々の小さなことを大切に:
- からだの変化に敏感になる
- 歩くこと,食べること,ひとつひとつに集中する
- 長く,ゆっくり呼吸する
- たまには気晴らしを:
- 空を見上げる
- 季節の変化を味わう
- ふらっと近場で旅に出る