筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」
はじめに
- 本書は,ビジネスの現場における「考える力(問題解決力)」をテーマにした本.
- 仮説力を高めることで,どこに進めばよいか迷わなくなる.
- 本書では次の3つのポイントを重視している:
- 部分ではなく,事業全体を見て課題を発見する力
- 情報を集めてから考えるのではなく,仮説を立てる力
- 読者ターゲットは,若手ではなく,ビジネスリーダー(課長・係長)
第0章|問題解決マップ
- 若手であれば,自分の仕事で発生した問題解決に取り組む.
- しかし,役職が上がってくると,自分の専門領域の問題解決だけに取り組むだけでは不十分になる.
- 実務では,専門性を高めることを求められるが,急に自分の専門とは関係のない分野まで含めて事業を俯瞰することが求められるようになる.
- 会社の中心となって活躍するには,早い段階から事業全体を考える力を身につける必要がある.
- 先が見えず,不安定な状況の中では,カッチリとした考え方で結論を導きだすことが難しくなっている.
- いまは,目の前で起きている事象から,仮の案(仮説)を出して,その仮説を検証しながら,仕事を進める力が必要になってきている.
- 仮説を立てるとは,次の2つのことを推論すること:
- この背景にはこういった事実が潜んでいるのではないか?
- こうすれば,うまくいくのではないか?
- 実務で使える問題解決力を身につけるためのポイント:
- 迷子にならないように,自分なりの全体像を持っていること
- 筋の良い仮説を出す勘どころを持つこと
第1章|ステップ1:現状分析
- 問題解決で何が一番大切かと言われると,きちんと分けること.
- 物事の実態を知るために分けることが大切.
- 問題は会社・組織の中で均等に起きているのではなく,どこか一ヶ所に集中して起きていることが多い.
- 問題解決のステップ1では,まずどの部分で問題が起きているかを確認することが効率的.
目の前に現れた問題にすぐに飛びつかない.目の前に起きている問題を分解してみることで,問題の発生場所を特定する.それが,問題解決のステップ1です.
このステップで必要となる武器が「こだわりを持って分ける」技術です.どこで問題が起きているかを見つけるために必要となる武器です.
獲得する武器1|こだわりを持って分ける
- 分けた部分ごとに差がある分け方が筋の良い分け方.
- 分けた部分ごとに特徴を見たときに,差が出てくれば,問題を特定できるため.
- 現象を分けた結果,「良い部分」「悪い部分」「良くも悪くもない部分」に分解できると,そのあとが,だいぶ楽になる.
- 問題を分解して「悪い部分」が特定できれば,その部分のことだけを考えればよい.
- できるだけ全部を考えたいと欲張ってはダメ.悪い部分だけを直すことで,効率的に業績を回復させる.
- 現状分析をする際は,とりあえずデータを見るのではなく,ここで問題が起きているのではないか?と少しでも仮説を持つことが大切.
第2章|ステップ2:問題認識
- 「問題とは,組織人として自分が本当に解決したいと思う『あるべき姿』と『現状』の差」
獲得する武器2|イライラ・キラキラを探す
- こんな現状は許せないとイライラしているのか,もしくは,こんな未来を実現したいというキラキラした思いを持っているか.
- ちゃんと心が動いていないと,そのあと,問題解決者として取り組みにあたっても,どこか妥協が出てきてしまう.
- 心が動いていないのに,問題解決に取り組んでも,つまらないだけ.
- 上司に言われたので仕方なく取り組んでいるというようであれば,結果はなかなか出ない.
- 問題認識のプロセスで自分ゴト化できていない.
- ちゃんと心が動いていないと,そのあと,問題解決者として取り組みにあたっても,どこか妥協が出てきてしまう.
- 問題解決したいと本当に思っているのであれば,誰かの言葉の受け売りではなく,自分自身の言葉で語ることができているはず.
- 難しい問題に取り組むのであれば,その問題に合わせた温度感(エネルギー量)を持つことが必要.
- 実際の仕事では,自分の役割の1つ上,もしくは,2つ上の立場で考えることができると,大きなインパクトをもたらす問題解決につなげることができる.
- 社長→部長→課長→係長→主任→新入社員
- あるべき姿がぼんやりとしてしまうと,何を解決したいのかが見えづらくなってしまう.
第3章|ステップ3:情報収集
- ここで大切なのは,起きている問題に対して,筋の良い原因仮説(原因に対する仮説)を出すこと.
- 原因仮説をとにかく多く出していっても,その内容がランダムになってしまってはいけない.
- 実際に,仮説を検証したとしても,その仮説自体の精度が低いと,仮説検証から得られる発見も少ない.
- 筋の良い仮説を出せるようになるために必要なのが「事業部長の視点」.
- 起きている問題の背景で何が起きているのか事業部長の視点になって,つまり,目線を上げて,俯瞰的な視点で仮説を出していく.
獲得する武器3|事業部長の視点
- 「事業部長の視点」とは:
- 原因仮説の7つのパターン:
- 市場に変化が起きているのでは?
- ターゲットセグメントに変化が起きているのでは?
- 顧客ニーズを満たせていないのでは?
- 顧客に自社商品・サービスの魅力を届けられているか?
- 顧客価値を継続的に提供するバリューチェーンを構築できていないのでは?
- バリューチェーンを支える組織に問題はないか?
- 外部環境に大きな変化はないか?
第4章|ステップ4:課題抽出
獲得する武器4|多くの情報をまとめる
- 課題の抽出にあたっては,「80対20の法則」を押さえておく.
- パレートの法則:結果(問題)の大半(80%)を生み出す原因は,全体の20%に集中しているという法則
- どこかに悪い部分は集中している.それはどこなのかを探りにいく.
- ピンポイントで悪い部分を見つけることができれば,そこを集中して直せばよい.
第5章|ステップ5:解決策の方向性
- アイデアを多く出すよりも,解決策の方向性をしっかりと考えることを先にやるべき.
なぜ,競合ではなく,自社を選んでもらえるのか.なぜ,この解決策を実行すれば,儲けることができるのかという理由を考えるのです.
アイデアを考える前に,解決策の方向性を考えることは,うまくいく理由を用意することです.
課題を解決できるということは,解決できる理由があるからです.
獲得する武器5|4つの戦略論
1.コスト・リーダーシップ戦略
- シェアトップ企業が規模を活かして,安い価格で高品質の商品・サービスを提供することによって,顧客に選ばれるという考え方.
2.差別化戦略
- 差別化するとは,他社と違った特徴を出すことによって,一部のお客様から自社を選んでもらう理由を作ること.
- ある特定のニーズを持ったお客様だけを狙った商品・サービスを提供する.
3.顧客ロックイン戦略
- チャネルに注目し,買ってもらい,買い続けてもらうために顧客を囲い込むこと.
- 商品・サービスの中身自体ではなく,チャネルを押さえる.
- つい買ってしまう,もしくは,様々な理由で買ってしまう仕組みを作ることができれば,お客様は他社の商品を買おうかと迷わずに自社の商品を買い続けてくれる.
4.ソリューション戦略
BtoBビジネスの場合,お客様からの要望をヒアリングした上で,その要望に応えるための内容をカスタマイズして,提案します.
パッケージの商品ではなく,その会社の要望だけに応えるために,提案を作り上げます.
このように,お客様からの相談をもらってから始まるビジネスを考える場合に,有効となるのがソリューション戦略です.
- ソリューション戦略を考えるにあたっては誰が先方の購買決定者なのかを探り,その方に相談してもらえるような深い関係性を作っていくことが大切.
- 強化するバリューチェーンが明確になった後は,その部分を担う組織・人材も強化しておく必要がある.
解決策の方向性を大きく4つ作りましたが,どこから手をつけていくべきでしょうか.選ぶ基準は,「実現性」および「インパクト」の2つです.
「実現性」とは,その部分を変えられる可能性.「インパクト」とは,課題を解決したときの効果の大きさ.
第6章|ステップ6:アイデア創出
獲得する武器6|思いつきのアイデアを進化させる
- アイデアを考えるにあたって,制約条件は何か.そして,何を実現したいのか.アイデア出しをする前に,今一度確認しておく.
- 考える力がある人は粘りがすごい.すごい人は普通の人が考えることを止めるようなタイミングから,さらに思考を続けている.
たとえば,Netflixはなぜ,あんなに人気なのでしょうか.その一方で,失敗したサブスクサービスも出てきています.
面白い人は,誰かに依頼されていわけでもなく,なぜそのサービスが失敗したのかを勝手に考えているのです.
この繰り返しを積み重ねることで,その人の中に面白いとは何かを見極める力が鍛えられていくのです.そういった鋭い眼を持っているので,自分の創ったアイデアに対しても厳しく批判できるのです.
第7章|ステップ7:評価
- 「やりたいと思うことは,常にできることよりも多いもの」
- やりたいことの中で,本当に実行することを取捨選択する必要がある.
獲得する武器7|冷静に選ぶ
- 自分(自社)視点だけでなく相手(競合)やお客様(顧客)視点で考えてみることで,成功確率を高めることができる.