君は、どう生きるのか
君は、どう生きるのか: 心の持ち方で人生は変えられる (単行本)
- 作者:古森 重隆
- 発売日: 2014/06/20
- メディア: 単行本
プロローグ|人生を最高に生きるために
どんなときでも,いくつになっても大切なのは,変化を恐れてはいけないということである.
自分の身や自分が勤めている会社に将来,何が起きるかは,ある程度は読めるが,本当のところは今の時点ではわからない.
私がこれまで生きてきた人生を振り返ると,「今を本気で生きること」「本気で仕事や課題に取り組むこと」「それらを通じて絶えず自己を磨き続けること」の連続であった.
そうやって自己を高め続けていれば,たとえどのような課題や困難が目の前に現れようとも,それに正面から立ち向かいそれらに屈することなく,「己の力で道を切り拓いていくことが出来るはずだ」という事がはっきり言える.
重要なことは,「人生を前向きに感じることが出来るか」「すべての経験から学ぼうとしているか」「それにより自己を向上させようとしているか」である.
なぜならそれらにより人は成長し,力をつけ,そのパフォーマンスは迫力を増し,成果を得られるからである.
1章|どう働き、どう生きるか
自分を磨いて挑戦する。これにまさる人生の醍醐味はない
- 自分を高め,それを成果に結びつけて自己実現できた人こそが,人生の勝者なのである.
- サラリーマンといえども,オーナーシップを持ってガムシャラに頑張って,「ああ、いい仕事をしてきたな」と振り返れる人生をめざす.
- オーナーシップ:自分の会社や事業,担当している仕事を,我が事として捉える意識のこと.
「ああ、あいつは会社のためにいつも一生懸命やっている」.そういう信頼を私に寄せてくれる人がいる.その信頼に私も応えていく.
「情けは人のためならず」と言うが,会社のためにベストを尽くせば,必ず自分にかえってくる.
もっとも私は必ずしも会社が応えてくれるであろうから頑張ってきたわけではない.自分の人生の中で努力すべきもののひとつであるからそうしてきた.
もしつまらなくても、ひたむきに働いてみる
- 社会を成り立たせている一員として,社会に対して役に立つ,意味のある仕事をして対価を得る.それが働くことの意味である.
- やり続ける中から,少しずつ実力が鍛えられ,役に立つようになり,また,誰かに感謝されたり喜ばれたりする回数が増えていくもの.
- 「仕事も充実,プライベートも充実」をめざしたいのなら,まずは仕事に全力投球することである.
- 踏ん張らないと,自分を伸ばすことも,責任を果たすこともできなくなる.ここが極めて重要なポイントである.
会社選びと私の”就活”
「人事部長や役員と波長が合ったから選んだ」などと言うと,直感だけでいい加減な決め方をしたように感じられるかもしれないが,しかし「波長」が合うというのは極めて重要な要素である.
私にはそのとき,富士フイルムの社風や社員の人柄が,フェアで極めて好ましいものに映ったのであった.
大切なのは,自分の五感を研ぎ澄まして,判断することである.これは会社選びだけに限ったことではない.
「伸び続ける人」「停滞する人」
- 「自分のため」ではなく,「会社のため」という意識で仕事をする人は伸びる.
- いわゆるオーナーシップを持てるかどうか.自分は会社に貢献しているかどうか,常に自分に問いかけなければいけない.
恵まれた素質や環境を天から授かっていることに胡座をかかず,あるいは己の素質の足りなさに絶望せず,何事からも謙虚に学び,たゆまぬ努力を続けていく.
そういう人間は常に成長し,少しずつでも実力を確実に身につけていくことになる.それが大事なところなのである.
「会社は自分のもの」と思えるか
逆にオーナーシップを持っていない人は,仕事に対する思い入れが浅いというか,自分が担当している仕事をどこか他人事に捉えている.
オーナーシップのない人は,「自分がその仕事をどうしたいのか」ではなく,「上司から指示されたから」「お客さまから言われたから」という理由でいつも仕事に取り組んでいるような状態になる.
だから仕事で失敗したときにも,理由を他に見つけ,「上司の指示が悪かったから」「お客さまが無理難題を吹っかけたから」というように,その原因を自分ではなく他人に求める.
これでは,いつまで経っても成長できないのは当然である.
- 出来ないことを他人のせいにするのではなく,自分自身で行動せよ.
「自分の頭で考え抜く」ことなしに成長はない
- 他人の意見を謙虚に聞くのは大事だが,最後は自分の頭で判断する.
- こういう人間でないと,早い段階で成長が止まってしまうことになる.
- 「上司が言っているから従う」のではなく,「上司の考えが正しいと思う」から従うことが大事.
2章|強くあれ、そして優しくあれ
いい人であるだけでは戦いには勝てない
- 優しさとは,その人のことを思う気持ちである.
- 部下に対してであれば,「育ってほしい」「いい仕事が出来るようになってほしい」「やがては会社を支えるような人材になってほしい」と願うのが上司の本当の優しさである.
- ときには周囲と衝突や対立をしてでも「絶対にこれをやるべきなんだ」と主張するような強いバイタリティを持った若者が,最近ではめっきり減っている.
- 自分が突出したり周囲と摩擦が起きることを恐れ,その場の空気を読みながら,周りに合わせることを第一に考える人ばかりになってしまった.
3章|一冊の本との出会いが、人生を変える
「読書」と「実践」の繰り返しで真の力がつく
- いい本を読むというのは,自分が触れてきた周りの世界以上のものに触れること.
- 素晴らしい天才に触れることが出来る.自分では思いもつかないような考え方に触れることが出来る.偉大な業績を残したプロセスそのものに触れることが出来る.
- 本は知恵の宝庫なのだ.
本を通して大きくひらけていく自分の世界
- 一冊の良書は,一人の優れた師と出会ったに値する.
歴史書から学ぶ「中長期的な視点」
- 物事に対する中長期的な視点を身につけるためには,歴史書が役に立つ.
- さまざまな事件や出来事は,歴史の流れの中で必然的に起きている.
- 歴史書を読みながら,なぜこの人は勝てたのか,なぜ負けたのかを考える.それを自分の生き方・やり方に役立てる.歴史から学ぶとは,そういうことである.
第4章|何事もゴツゴツ向かって行け!
これほど、おもしろい仕事はない
- 営業でいちばん大切なのは,まずお客さまが何を求めているかを知ることである.
- たとえばお客さまは,もっと生産性の高い機械がほしいと思っているのか,もっと高品質の製品を作りたいのか,そのニーズをつかむ.
- 相手にニーズは何か,そのニーズにどういう価値を持った答えが用意できるか,ひとことで言えば,これがきちんとできる営業マンが,優れた営業マンである.
- メーカーの場合,お客さまが製品を買ってくれるかどうかは,製品の質で勝負が決まる場面が大きい.
- お客さまはその会社の製品の価値を買ってくれているわけだから,営業部隊がどんなに強くても,製品の価値が低ければ,勝負に勝つことは出来ない.
- ただし,開発部門や生産部門がどんなに質の高い製品を作ったとしても,お客さまのニーズと合っていなければ,その製品は絶対に売れない.
「答えがない問いに,答えを見つけ出す力」が大切
経験から学び,人から学び,読書などを通じて学ぶ.学んだことを試して,さらに学ぶ.その繰り返しだ.
そうしてどんな問題が立ちはだかってもびくともしない思考力,瞬時に正しいことを選び取る判断力,そして実際に行動に移す瞬発力......「基盤となる力」を高めながら一生,自分を磨いていかなければならない.
そして答えがない問いに答えを見つけ出し,決めたことをやり通すことによって,結果を残していく.それが仕事というものなのである.そうしたら,ちゃんと人は評価してくれる.
第5章|リーダーは”五体”を使え
リーダーとして人の上に立つときに
- その人のパフォーマンスは,その人物の人間力の総和によって表される.
- リーダーが「オレを信じてついてこい」と部下に言うことが出来,部下も「この人が言うのだからついていこう」と思えるような関係が出来ている組織は例外なく強い.
「決断力」を養う
- 決断には,勇気を持って何が起きているか事実を直視することが必要.
- 明確な状況認識と作戦とゴールが示され,一人ひとりが強い自覚を持つことで,組織はその方向に動き出す.
- リーダーは組織を成功へと導く.
- 「読む」「構想する」「伝える」「実行する」というすべてのプロセスは成功するためにある.
- 成功させてこそ真のリーダーである.成功させなければリーダーではない.
優れた経営者は”心”を持っている
- 上に立つ人間は,人間に対しての共感や責任感,広い意味での愛・思いやり,人を受け入れる力とかそういうものがないといけない.
- 「心」を持っているかどうかは,リーダーとしての器を判断するときの絶対に欠かせない条件となる.
- 心というのは,誠実に生きるということ.それは社会や会社,社員に対する愛情や責任感,使命感といったものである.
- 「もっと社会の役に立ちたい」「もっと社員に幸せになってほしい」という心は,決して忘れてはいけないもの.
第6章|課長よ、先頭に立って戦え!
「課長の行動力」がなければ組織は勝てない
- 組織における社長の役割は,戦うべきターゲットを定め,勝つための戦略や戦術を立てることである.
- 社長の戦略・戦術策定能力と,課長の戦術策定能力・戦闘遂行能力の両者が備わっていることが,勝ち続ける組織の条件となる.
- 「課」というのは,企業が戦ううえでの”戦闘の単位”である.
- 会社全体で戦ってはいても,営業や生産,研究あるいは間接部門等すべての現場,あるいは現実と直面する第一線でガチンコ勝負しているのは,「課」という戦闘隊なのである.
どんなに厳しくても、こんな上司に部下はついてくる
- 部下を指導する際には,「君はこういうところが足りない」「こういうことをやらないと今後伸びない」と,正しく導いてやる必要がある.
- そして,部下の仕事をきちんと正しく評価し,ときには,「君の仕事はよかった」と褒めてやることも重要.
- 「おまえに期待している.だから頑張れよ」.こういう気持ちをこちらが持っていれば,相手は応えてくれるものだ.
先を読み、決断出来る人になれ
「氷山の一角」から「氷山全体」をイメージする力
- 決断の前に必要となるのが,正しく現実を把握すること.
- 人はしばしば 先入観や希望的観測,悲観的観測などによって現実を歪んで捉えてしまうことがあるため,これが非常に難しい.
そもそも情報というのは,最初はみんな不完全なのが当たり前だ.チラッチラッと姿を見せてくる.垣間見えるだけ.あるいは断片しか見えない.
その中でいち早くどういうことが起きつつあるか,その情報の背後に潜む本質をつかむ.そこから何をしなければいけないのかを誰よりも早く読む勝負でもある.
事実とどう向き合うか,そしてそれにどう対応するかに,その人の人間力が反映される.実力を映し出す鏡のようなものなのだ.
「本質を見抜く力」を磨く
新聞や雑誌を読むときも,表面的な情報だけをインプットするのではなく,その情報の奥にある事実や本質をつかみとることを意識しながら読むことが大事だ.
たとえば,ある会社が何かを発表したという新聞記事があったとする.なぜわざわざこの時期に発表したのか.そこには必ず意図がある.
その意図を自分なりに考えて仮説を立ててみる.自分ならこうするが,なぜ彼らはこういう行動をとったのかと.
すべてのことは偶発的ではなく流れの中で起きていることを忘れてはいけない.現象だけでなく,流れの後ろにある本質を読むのだ.
思考を重ねる
- 考えあぐねてしまってどうしても決断が下せないというときには,時間さえ許せば,あえて寝かせてみることも大事.
- ただし考えるのをやめていても,心の奥底ではずっとその問題のことが気になっているものである.
- 顕在意識(表層意識)は休んでいても,潜在意識(無意識,自覚されない意識)は働き続けている
- 潜在意識の中でその問題を考えているうちに,過去の体験や記憶を参照しながら問題が次第に整理されていき,あるときふっと答えが出てくるときがある.
心身の不健康は、決断力を鈍らせる
- 健康を保つための4つの要素:食事 / 睡眠 / 休養 / 運動
- 健康でなければ,いい判断,いいパフォーマンスはできないし,いい仕事はできない.つまり,充実したいい人生を送れない.
”有能な参謀”の存在が大きい
- 限定された能力で精いっぱい考え,自分なりに正しいと思える道を選びとるしかない.
- 決断には必ず不確定要素が含まれる.一〇〇パーセント正しい決断などあり得ない.
- 物事の成否は,決断を下した時点で決まるわけではない.下した決断をもとに成功に持っていけば,それは正しい決断になる.
サラリーマン人生には三回のチャンスがある
勝負どきは誰にでもやってくる
- チャンスというのは,出世のチャンスや業績を上げるチャンスということではなく,会社のために自分が決定的な役割を果たせるチャンスである.
- 「このとき働かないでいつ働く,会社のために今頑張らなくてどうする」という勝負どきが誰にでもやってくる.
情報をできるだけ集め,一生懸命考えて,創意工夫して実行する.結果を出す.それが自分を一回りも二回りも大きくする.
そして,それを見ていてくれる人は必ずいる.次はこれを,次はもっと大きな仕事を,と任せてくれるようになるものなのだ.
対応に奔走した日々
メーカーの役割は,社会に役立つ商品を作り,適正な利潤を上げ,その利潤を元手に社会さらに役立つ未来の商品,未来の価値の開発に対する投資を行うことである.
社会や人々の暮らしをよくする価値ある商品を世に出し続けていくことである.
そのことを忘れて,目の前の競合他社との戦いに汲々とするあまりに,いたずらに価格競争に走ってしまっては,会社も疲弊するし,新製品を開発できず,社会のためにも結局はならない.
目先の利益を確保することに追われて,研究開発費を減らせば,新しい価値をもった商品を世に出すのは不可能になる.
独自技術でオンリーワン,ナンバーワン製品を出すことが,結果的に企業と社会の双方に真の益をもたらすことになるのだ.
五六歳、初めての海外勤務
「ここが勝負どころ」という場面が,仕事をしていると必ずあるものだ.
勝負どころはピンチでもあるが,チャンスでもある.逃げずに立ち向かって克服できれば,そのぶんだけ自分も成長できる.そしてチームや会社に貢献できる.
すると,「こいつは会社に貢献する仕事ができるヤツだ」ということで,上司からより責任のある仕事,やりがいのある仕事を任されるようになる.そしてその責任ある仕事をクリアすることによって,さらなる自己成長が可能になる.
そうやって勝負どころで結果を残すことができれば,ポジティブなスパイラルに入り,どんどん自分を高めていくことができるようになるのだ.
だから勝負どころでは,決して逃げてはダメだ.チャンスの前髪は絶対につかまなくてはいけない.
第9章|経営者として迎えた富士フイルム最大の危機
日本を代表する一流企業であり続けるために
- 縦軸と横軸を座標とするマトリックスを書いて,縦軸の技術には,現在の技術と新しい技術,横軸の市場(事業)には現在の市場と新しい市場,というように四つの象限に分けて,検討を行った.
- 重要な判断のポイント:
- 市場に成長性があるか?
- 当社の技術を活かすことができるか?
- 継続的に競争力を持ち続けられるか?
- 「既存の成長事業の育成」と「新事業の創出」というアプローチで取り組んだ.
- 重要な判断のポイント:
- 企業は,たえず新しいものを生み続けていく文化や体質を持っていなければならない.
- 自分たちが培ってきた技術を活かすことができ,なおかつ市場の成長が見込める六つの分野の事業を成長事業分野に定め,集中的な研究開発投資や設備投資を行っている:
第10章|日本人よ、戦う気持ちをとりもどせ!
世界で「戦う力」を日本はまだ充分に持っている
- 日本企業が進むべき道ははっきりしている.海外市場を主戦場に,商品開発力や技術力で勝負していく.
創造力とチャレンジングスピリットを
- 優先順位をつけ,何に取り組むか決断しなければ,前に進むことは出来ない.
- プライオリティを実行する力が弱いことは,国際ビジネスの舞台においては致命的な弱点となる.
- 欧米の企業にせよ新興国の企業にせよ,重要な問題については,すぐに優先的に果断に行動する.だから日本企業はいつも一歩後れをとる.
従来のやり方にとらわれずに,その国の人々が求めている真のニーズをつかみ,日本企業の持つ高い技術力を持って,ニーズにあった製品をリーズナブルな価格でタイムリーに提供する.
それが出来るかが,今後の日本企業の課題のひとつである.
エピローグ|手ごたえのある人生を生きるために──どんなときでも”自分の中の無限の可能性”を信じよ
- 心の持ち方ひとつで,人生はガラリと変わっていく.
- 物事に対し前向きに立ち向かい,常に明るいイメージを抱くということが,充実した人生を築き上げるうえで大事なこと.