転職の思考法

はじめに

私はこの本を通じて、すべての人が「いつでも転職できる状態」をつくりたいと本気で願っています。

なぜなら、すべての働く人がいつでも転職できるだけの「市場価値」を持てたとしたら、あなたの生き方すらも変わる可能性があるからです。

そしてそのために、必要なのは単なるうわべの「転職情報」ではなく、情報を見極める「思考の軸」です。


第1章|仕事の「寿命」が切れる前に、伸びる市場に身を晒せ

STEP1|自分の「マーケットバリュー」を測る

「給料は、君が「自分」という商品を会社に売り、会社がそれを買うから発生している。あくまで売り込んでいるのは君なんだ。君はたまたま今の会社を選んだだけで、会社は君をたまたま買っている。つまり、雇用とはひとつの『取引』なんだよ。マーケットバリューを理解するには、まず自分を商品として考えることだ


「じつは、年齢によって身につけるべき技術は違う。20代は専門性、30代以降は経験をとれ。これが結論だ。専門性は、誰でも学べば獲得可能だ。一方で、経験はそうではない」

専門性のある人間にこそ、『貴重な経験』が回ってくる、こういう構造なんだ。会社の重要なプロジェクトはいつも専門性の高いエース社員が任されるだろ?当たり前だ。言い換えれば、専門性のないやつに打席は回ってこない。だから、20代は専門性を身につけて、それを生かして30代は経験をとりにいくのがベストだ


「君のような普通の人間こそ、『経験』で勝負すべきなんだよ。というのも、マーケティングやプログラミングといった『専門性』で上り詰めるには、明らかにセンスが必要だ。それは若い頃の環境や、与えられた才能に大きく影響を受ける。しかし、『経験』は、どこを選ぶかというポジショニングの問題だ。ポジショニングは、思考法で解決できる。君のような普通の人間こそ、どこで戦うのか、つまり『経験』で勝負すべきなんだよ

STEP3|強みが死ぬ前に、伸びる市場にピボットする

「そもそも、ピボットとは企業経営で使われる言葉で、方向転換や、路線を変えるという意味だ。たとえば、Aという事業を立ち上げたものの、うまくいかなかったので、事業Bにピボットする、こういう風に使う。キャリアの文脈でいうと、自分の強みに軸足を残しながら、もう片足を今後強くなる部分に少しずつ、ずらしていくという考えだ。たとえるなら、サーフィンのようなものだ。次から次へと波がくる。その波をとらえ、波が消えそうになる前に、次の波に移っていく。これが一生食べていくための最強の方法論だ」


すでに人気があるということは、イスの数が十分に多くなった状態ということだ。となると、仕事の賞味期限は『終盤』に差し掛かっている。一方で、まだ誰も気づいていないが、よくよく聞くと筋が通っている話は『ライフサイクル』の序盤にある可能性が高い。今後、伸びていく。つまり、本当のダイヤモンドは、周りは馬鹿にするが、理屈から考えると正しいことにこそ眠っているわけだ」

STEP4|伸びる市場の中から、ベストな会社を見極める

「強い会社というのは普通の発想と逆なんだよ。いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社。それが最強だ。だから、現代の経営者は考え直さないといけないんだ、優秀な人間が2年、3年でも、御輿を担いで一緒に頑張ってくれたら御の字だってな」


「重要なのは、先に論点を明確にすること。それが『働きやすさ』と『活躍の可能性』の二つだ。もちろん、事前に100%自分が何を求めているかを把握できる人は少ない。だが、君は新卒じゃない。就労経験がある。その経験を内省すれば、自分が求めているものをある程度は予測できるはずだ

「30代以降にとって、成長とは間違いなく自分の力で掴むものだ。だからこそ、自分が活躍できるかどうかを厳しく見極めろ。結局、成果を出しているやつにおもしろい仕事は来る。とくに30代以降はな。具体的に言えば、面接の場では次の三つを聞くのがいい」

  1. 「どんな人物を求めていて、どんな活躍を期待しているのか?」
  2. 「今いちばん社内で活躍し、評価されている人はどんな人物か?なぜ活躍しているのか?」
  3. 「自分と同じように中途で入った人物で、今活躍している人はどんな部署を経て、どんな業務を担当しているのか?」

「この三つを聞いたうえで、自分が社内で活躍できるイメージを持てたらOK。反対に持てなければ、活躍できる可能性は低く、結果的に転職後に苦しむ可能性は高い。覚悟が必要だ」


転職エージェントで紹介される案件だけで、転職先を絞ってはいけない。なぜなら、そこには本当に魅力的な求人が乗っていないことがあるからだ。もしも、自分が働きたい会社が明確であれば、様々な手段で仕事を探せ。SNSのサービスや、直接応募、自分で求人を検索するという行為を絶対に忘れてはいけない


第2章|「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない

転職が悪だというのは、新たな選択肢を手に入れる努力を放棄した人間は発明した、姑息な言い訳にすぎない。人間には居場所を選ぶ権利がある。転職は『善』なんだよ。個人にとっても、社会にとっても


第4章|仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?

仕事選びとは結局、思考法の問題なのだ。どこを選ぶか、誰と働くか、それを間違わないこと。ポジショニングとは「思考法」ひとつで、誰でも解決できるものなのだ。