20字に削ぎ落とせ
- 作者:リップシャッツ信元夏代
- 発売日: 2019/07/05
- メディア: 単行本
プロローグ
- 「相手に伝わる」とは言葉をつくすことではない.その正反対で,徹底的にメッセージを絞り込むこと.
- 「20字で語る」スキルが,この本に詰め込まれている.
第1章|なぜ,言いたいことが伝わらないのか
伝えることはひとつに絞る
- プレゼンで「その他のいろいろな情報」を提供してしまうと,情報過多となって,重要な情報の印象が薄れてしまう.
- 伝えたいことが多すぎて,分散している.
- 言いたいことをたったひとつのワンビッグメッセージに絞りこむことで,格段に相手に伝わりやすくなる.
- 大事なのは,ワンビッグメッセージを「20字で語る」ことで,より明確に,意図したとおりに伝わる.
- 聞き手に最も刺さってほしいワンビッグメッセージを20字に凝縮する.
- 人間はだいたい15字から20字程度のフレーズが覚えやすい.
- 英語であれば,10語にまとめるのがベストの長さ.
- 婉曲的表現で,相手に察してもらう文化だと,相手に解釈の余地を与えることになり,それが誤解だったり,伝わらなかったりすることの大きな原因となる.
ついあれもこれもいれたいと欲張って,メッセージが複数になってしまったら,聞き手は混乱してしまいます.
なにが一番伝えたいことなのかを考えぬき,そのたったひとつのメッセージが聞き手に伝わるために必要な情報だけを探し当て,余計な情報はすべて削ぎ落とす.
プレゼンとスピーチづくりはまさに情報の整理術であり,いかに最重要な情報のみへと整理するかにかかっています.
つまり,相手を動かすプレゼンのカギは思考法にあるのです.
自分の視点で語らない
- プレゼンもスピーチも,「聞き手」の視点こそ大切.
- 聞き手を主役にしてあげると,「他人事」から「自分事」として捉えることができる.
- 常に「聞き手が求めているものはなんだろうか?」という聞き手視点に立って考える.
できるだけ簡単に話す
- 「Keep it Simple, Specific(KISS)」
- シンプルかつ具体的を心がけることで,「簡単・簡潔・簡明に話せ」という意味
- 「効果的ではない言葉を減らす」
未来予想図を売れ
- 本当に売るべきものは「商品」ではなくて,「未来予想図」
- 人は惹かれる未来予想図が明確に見えると,手に入れたい!と思うようになるもの.
- 売り込まれていると感じると,人はガードを堅くするもので,相手の心に刺さりにくくなる.
- 未来予想図とは,「この商品,サービス,提案内容,アイデアなどを取り入れたら,あなたはこうなる!」という未来の姿のこと.
4つのF 失敗談こそ語れ
- 成功話ばかりを強調していると,聞き手は,「ああ,あの人はすごい人だから自分とは違うんだな」と心が離れてしまう.
- 一見ネガティブなことが,じつは聞き手にとっては興味を引かれる,自分も同調できるストーリーとなる.
- ストーリーづくりのための4つのF:
- Failure: 「失敗」
- Frustration: 「不満」
- First: 「初めての経験」
- Flaw: 「欠点」
- ストーリーはマイナスのものがプラスに転じるほうが,聞き手には興味深く響く.
- ストーリーづくりのための4つのF:
- 自身の苦労話をまず話したうえで,今の成功に至った経緯は,「私がすごかった」のではなく,「プロセスがすごかった」と成功の対象をシフトすることで,共感を得やすくなる.
低コンテクストを心がける
- コンテクストとは文脈とか前後関係といった意味であり,なにか特定のものを指す言葉ではなく,前後関係から意味を読みとるようなことを指す.
- 日本語で「空気を読む」といった時の「空気」にあたるもの.
- 高コンテクストは非言語の部分が大きい文化で,低コンテクストは,言葉に依る文化.
- 日本は世界でも最高峰に「高コンテクスト」の文化
- プレゼンやスピーチ構成は,相手がだれであっても,「低コン」を心がけて,曖昧さをなくしていくことで,伝わりやすくなる.
第2章|聞き手視点の情報整理
プレゼンは情報整理が7割
- 自分が持っている価値ある情報を提供することで,相手の頭と心を動かすには,考えさせ,行動に導き,学びを引き出すと同時に,聞いていて楽しいものでないといけない.
- 話をするよりもずっと前の段階で,綿密な構成づくりを始めなければならない.
- どういう文章で表現するか,どういうデザインでパワポを作るか,というずっと前の段階で,「情報を整理」することで,スピーチとプレゼンの成功が左右される.
- プロセスでいうと,「情報を整理」することに,約70%の時間をかける.
- 残り30%は,デリバリー,つまり,実際の伝え方の準備.
「聞き手」を動かしてなんぼ
- スピーチやプレゼンのゴールは,相手を動かすこと.
- あなたが発した情報に相手が共感して,動くところまでいってこそ価値がある.
- 人間を動かすには,3つの要素が必要:
- エトス(信頼)
- パトス(感情)
- ロゴス(論理)
- 人間とは,感情が先に来て,つぎに理性で判断する生き物.
「聞き手」は誰?
- 「聞き手」の関心があるトピックを探り出す.
- マーケティングと同じように,収集した情報から,自分のプレゼンはどんなメッセージが刺さりそうか,聞き手視点になって考えてみる.
「聞き手」のメリットは?
- 「聞き手がその話を聴くことで,得られるプラスは何か?」
- 人は自分のプラスになる「自分事」であれば,関心を払う.
- プレゼンになると,つい「この新製品の機能はこれこれで」といったことを言いたくなるが,「それが相手にとってどう役立つのか?」と何度も自問しながら,その理由を書きだす.
「聞き手」になぜ自分が話すのか?
- 自分がいかにこの商品のスペシャリストか,どんなパッションを持っているのかというのを見せてプレゼンするだけで,相手への刺さり方はまったく変わってくる.
- 「自分にしか語れないストーリー,経験談,知識」はなにか.
- 自分の強みや過去の経験など,自分の内側を観察してみる.必ずあなたにしかできないことがあるはず.
「聞き手」にどう行動してほしいのか?
- このプレゼンや公演が終わったら,聞き手にどうなって欲しいのか:
- Persuade: 聞き手を説得したいのか
- Action: 聞き手に行動して欲しいのか
- Inspire: 聞き手を啓発したいのか
- Notify: 聞き手に通知したいのか
- Think: 聞き手に思考してもらいたいのか
- 「聞き手」から「どういう行動を引きだしたいのか」をわかっているのが,スピーチ/プレゼンの大前提.
第3章|何を伝えるのか
優れたスピーチは9段階構造
- プレゼンやスピーチにも,こうすれば必ず聞き手の頭と心に届くというゴールデンパターンがある.
- 9段階構造のポイント:
- すべてはワンビッグメッセージに向かっていること
- ポイントごとに「トランジション」(移行)が含まれていること
- オープニングとクロージングが,それぞれ3分割されていること
- 「9段階構造」の流れ:
- オープニング
- 第1ポイントへの移行
- 第1のメインポイント
- 第2ポイントへの移行
- 第2のメインポイント
- 第3ポイントへの移行
- 第3のメインポイント
- 終わりへの移行
- クロージング
- 9段階構造のポイント:
- 「移行」の必要性:
- ポイントを語るだけのプレゼンであると,情報が「点」として並んでいるだけで,つながっていない印象になってしまうから.
- 移行を入れた途端,点が線としてつながり,興味が最後まで持続するようになる.
- どんな移行を入れるかは,聞き手視点で考えなければならない.
スピーチひとつ作るのに,こんなに細かく,いろんなことを考えなきゃいけないのか!と思われるかもしれませんが,残念ながらその通りです.
スピーチがうまい人たちはそこまで作りこんでいるから,抜群によくわかるのです.
つかんで,約束し,行き先を告げる
- オープニングは,いかに聞き手を引きつけるかという導入部分.ここに成否がかかっているといっても過言ではない.
- オープニングには,つぎの3つの要素を入れる:
- The Bang!(バーン!):インパクトのあるつかみ
- Big Promise(ビッグプロミス):聞き手への約束
- Roadmap(ロードマップ):話が進んでいく「道筋」「順路」
- ビッグプロミスとロードマップを示すことで,聞き手は,スピーチ内容に対して期待感を持ち,頭の整理もつきやすくなる.
メッセージを絞り込む収束的思考
- 「何を絞り込むか」と同じくらい,「何を捨てるか」が大切.
- 聞き手が,「このプレゼン,もう少し長ければよかったのに」といってくれることは滅多にない.
- 彼らはもっと情報を詰め込んでほしいのではなく,もっと簡潔に,明確にしてほしいと思っている.
- したがって,「情報を伝えること」と,「情報を控えること」のバランスのとり方が重要.
聞き手視点でメッセージを組み立てることを忘れずに,絞り込み作業は,心を鬼にして行うことです.
あなたが気に入ったアイデアであっても,潔く切り捨てること.それがスピーチ/プレゼンの質を高める秘訣です.
ワンビッグメッセージにつながらない情報を思い切って削ぎ落とすとき,あなたのプレゼンは「なんてわかりやすいのだろう」と聞き手にとっては歓迎するものになるはずです.
聞き手で違う「響く」ポイント
- 同じことを伝えたい場合でも,相手のバックグラウンドや興味によって,響くポイントは変わってくる.
- 聞き手はどういう興味や価値観を持つ人たちなのか,何を求めているのか,しっかりと調査分析した上で,彼らにもっとも響く根拠は何かを洗い出していかなければ,相手に響くスピーチには仕上がらない.
第4章|どう心をつかむのか
プレゼンは情報のプレゼント
- 歌手は歌でエンターテイメントを提供するが,スピーカーやプレゼンターは「情報」でエンターテイメントする.
- たいていのビジネスプレゼンはストーリーがないから,退屈なのである.
ストーリーは三幕構成
- ストーリーの三幕構成:
- まずは第一幕で,ストーリーの状況設定が行われる.
- 第二幕では,その状況に何らかの危機が訪れる.
- 主役の登場人物は,さまざまな困難が降りかかりながらも,果敢に立ち向かい,危機的状況に変化をもたらす.
- 最後の第三幕では,その変化の結果得られた新たな状況が描写される.
テレビ番組の『プロフェッショナル 仕事の流儀』や『情熱大陸』を思い出してみてください.
ドキュメンタリーとはいえ,よく構成を見れば,事実を追っているのではなくドラマに仕立てているからこそ,視聴者は感銘を受けるわけですよね.
このような番組もやはり,「三幕構成」の手法が使われています.
どんなビジネスにも苦労とチャレンジとドラマがあります.あなただからこそ語れる体験があるのです.それを掘り起こしてストーリーにしてみましょう.
シナリオは夢見型と脅迫型
- ストーリーには,聞き手に夢を見させるシナリオと,聞き手の危機感を煽るシナリオがある.
- 「夢見型」シナリオと「脅迫型」シナリオを混ぜることで,さらにコントラストを煽ることができる.
- 夢見型シナリオと脅迫型シナリオを交互に出したあと,本題への移行をする.
印象は7秒,おもしろさは30秒
- スピーチでは,最初の7秒になにをいうかで決まる.
- 話が始まったところで,聞いている側は,30秒で話がおもしろいか,おもしろくないかを判断するとされている.
- 最初の7秒が第一印象のポイントだが,第一印象が良くなくても,第二印象がよければ,聞き手は話に引きこまれる.
- 反対にいえば,印象を強めるにはチャンスは2回しかない,ということ.
第5章|プレゼンのス出来を左右するデリバリー
聞き手はカボチャではない
- スピーチ/プレゼンの最大の特徴は,聴衆が一度だけ,そして耳からしか聞かないこと.
- 大事なワンビッグメッセージを,より聞き手の心と頭に伝えるためには「話し方」も重要になってくる.
- 相手とつながって感情をキャッチボールしながら,相手の心と頭を動かすというのがスピーチ/プレゼンの要.
同じ言葉でも伝わり方は違う
- メラビアンの法則:
- 印象を形づくるときに何がどの程度影響しているかを表した法則
- 話の内容などの言語情報が7%,口調や話の早さなどの聴覚情報が38%,見た目などの視覚情報が55%の割合だった.
- つまり,人間のコミュニケーションでは,顔の表情や視線,身振り,姿勢といった非言語のコミュニケーションが重要な役割を担っているということ.
- 非言語な部分にこそ,聞き手の心をつかむマジックが潜んでいる.
最大の敵は「無変化」
- 10分以上,同じ調子が続いてしまったり,動きがなかったりすれば,急速に相手の注意は離れていく.
- 声のトーンで変化を持たせたり,声の抑揚をつけてみたり,コントラストをつけたりすることで,プレゼン全体の「無変化」を回避することができる.
間の取り方で劇的に変化する
- 聞き手とのキャッチボールをするためには,効果的な「間」が必要.
- 間を取る理由は主に3つある:
- 聞き手に重要なメッセージを腹落ちさせてあげるため
- 次のシーンで何かが起こる前ぶれとして,聞き手の注目を引くため
- 相手からの反応をしっかりと受け止めるため
- 間を取る理由は主に3つある:
「えー,あのー」をなくす3つのステップ
- 「えー,あのー」を減らすだけで,非常に話が聞きやすくなる,スピーチがうまくなる.
- 人は次に何を話していいかわからない時に沈黙となってしまうのを恐れて,「えー」「あのー」といった言葉で,間をつなごうとする.
- 「えー,あのー」症候群を克服するための3つのステップ:
- 発していることに気づく
- 発する直前に気づく
- 間をと取る
劇的に変わるリハーサル方法
- 録画したものを3通りの方法でレビューする:
- そのまま見る
- 音を消して見る
- 音声だけ聞いてみる
- 聞き手に映っているあなたの姿は,ビデオで確認してみるのが,1番正直であり,直さなくてはいけない箇所がわかるはず.