右脳思考
- 作者: 内田和成
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/12/26
- メディア: 単行本
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はじめに
誰も思いつかなかったユニークな戦略で自社を飛躍させた経営者に,「どうしてそのような意思決定をしたのか」と尋ねると,「勘です」とか,「答えは誰もわからないのだから,やってみるしかない」というような回答を多くもらう.
- 本書で伝えたいのは,ロジックだけでなく感情や勘,すなわち右脳を働かせることで仕事をより効率的に進める,あるいは,成果をあげることができるということ.
第1章 右脳を使うことが重要な理由
1.1 ロジカルシンキングの落とし穴
- 仕事でも新しいことを考えたり,自分の好きなことを盛り込んだりした提案をするほうが面白いに決まっている
- 実は「ひらめき」「よいアイデア」というのは,それを考えついた人がワクワクしているものである
- ロジカルシンキングで優れた提案をする前に,あるいは提案すると同時に,意思決定者がこの提案に対してどのような気持ちを持っているかを知ることがきわめて重要になる.
- 人間は誰しも,自分がやりたいと思ったことは一所懸命やるが,人から言われたことで興味がないことは,ほどほどになりがち.
結局,人間を動かすのはそれが正しいか,間違っているか,あるいはやるべきかどうかという理屈,すなわちロジックではない.
やりたいとか,面白そうとか,やらないとまずいなといった気持ち,すなわち感情である.
1.2 成功している経営者は「思いつき」で動く
- ロジカルシンキングで考えると成功確率が低いので止めたほうがいいという道を選んでいることが多い
- 直感や経験から気づいたこと,感じたこと,つまり右脳的なことを,後からきちんと理屈づける,すなわち左脳で理論武装する.
1.4 人を動かすのは感情
- なぜ彼/彼女は納得しないのだろう,あるいは何が気に入らないのだろうということを見極める.
- 相手を説得し動いてもらうためには,相手が何を考え,どう感じているのかをきちんと理解することがカギとなる.
第2章 右脳の使い方
2.1 仕事は3つのステージで成り立つ
- 観・感・勘を使う.まず,観察することが観,次いでそこから何か感じ取ることの感,最後に「なんかおかしい」あるいは「これは面白い」と働く勘.
- 人を動かしたり,組織を動かしたりするためには,まず相手がロジックを理解する以上に,感覚で納得する必要がある.
2.2 右脳と左脳をどう使い分けるか
- 課題発見では「エイヤー」で「とりあえず」問題を発見(右脳思考)し,そこから先は,ロジカル(左脳思考)に考える.
企業を経営し,組織を率いていて難しいのは,問題が起きているのは明らかなのだが,何が原因であるかがわからない場合である.
こうした場合はロジカルに答えを出そうとしても答えが見つからない.
その場合は,たぶんこれが答えだろうと仮の答えを考えてから問題に当てはめてみるほうがよい.
その仮の答えを定めるには勘が必要となる.
- 意思決定時には「なんかおかしい」という感覚を大事にする
- 意思決定する際にも.プライベートで行うのと同じように,これは「やばそう」であるとか,「これなら大丈夫だろう」,あるいは「これが好き」であるといった要素を大いに加味すべき.
2.3 個別の問題ではなく問題全体を捉える
- 「エイヤー」で解決策の仮説を立ててみる
2.4 意思決定の最後の決め手は勘
物事を決めるに当たって,勘は重要であるが,一方で勘だけに頼ってよいのかという疑問もある.
そこで,実際の意思決定に当たっては,自分の勘で考えた答えを別の切り口から検証するプロセスがあるとよい.
2.6 変革の必要性を訴えるとき
- 組織に変革を起こすときには,変革の必要性を理解して何をやるべきかわかっているのか,やる気があるのか,やれるだけの能力が備わっているのか,この3点が必要である.
やる気がないのであれば,いくら能力があっても,やるべきことを理解し十分な計画を練ったところで,うまくいくわけがない.
その場合は,どうしてやる気が起こらないのかを明らかにすることが肝心で,これは観察・対話・想像などの右脳を目一杯働かすことで(相手の気持ちを)明らかにしていくしかない.
2.7 なかなか実行されない場合はどうする?
- 相手にいま,やる気スイッチが入っているのかどうかを見極め,もし入っていないのであれば,どのようにしたらやる気スイッチを入れられるかを考えてみるくらいの冷静さが,人を動かすためには必要である.
2.8 右脳と左脳のサンドイッチ構造
- 人間がビジネスで使うものの考え方は,右脳と左脳がキャッチボールをしている状態,すなわち思考が右脳と左脳の間を行き来しながら仕事が進むというもの.
- 優秀なコンサルタントは「左脳」から始めずに「右脳」から始める.(いきなりフレームワークを持ち出さない)
第3章 右脳で考え,左脳でロジカルチェック
3.1 まずは好き嫌い・直感を大切にするのが第一歩
- 右脳で考えたことを左脳で確認したり,逆に左脳で考えたことを右脳の力を利用して前に進めたりといった作業が重要となる.
- 人間誰でも,自分が好きなことや自分が思いついたことは一所懸命やるが,人から言われたことやどうしてもやらなくてはいけないことには力が入らない.
実行に当たって,自分がやりたくない案件を遂行しても,うまくいくケースは少ない.
というのも,なにか新しいことをやろうとすれば,必ず想定外のことが起きる.
その場合に,自分がどうしてもやりたいことであれば,我慢したり,新しいやり方を工夫したりすることは,そんなに難しいことではない.
したがって,仕事上新しいことにチャレンジする,あるいは,改革を成し遂げようと考えているときには,自分自身に納得感があることが大切である.
いくらロジックが整っていても,何かしっくりこないというような場合は,徹底的に「しっくりこない」理由を探るべきである.
- 右脳で感じた「何か変だ」という信号を,左脳で解きほぐし,理論付ける必要がある.
3.2 思いつきを戦略に落とし込む
- 最初は思いつきから始まった矛盾だらけのアイデアが,検討しているうちに理論武装され,完成されたモデルとなる.
- 簡単に言えば,アイデアを事業化するとは,右脳で考えた思いつきを,左脳を使って理論武装するプロセスと言っても差し支えない.
- どんなに優れたアイデアやイメージでも,理論的に検証できなければ通用しない,あるいは,成功しない.
3.3 右脳を左脳でサポートするための方法論
- 思いつきを思いつきのまま発案したり,どうせ無理だと諦めたりするのではなく,少し論理的思考を加えるだけで,仕事の質は格段と上がる.
第4章 左脳で考えたロジックフローを右脳で肉づけ
4.1 心の底から納得する「腹落ち」の重要性
- 収集した情報を論理的に分析し,整合性のとれたロジックフローをつくっただけでは相手の気持ちは動かせない.
- 人は心の底から納得しないと,思い切った意思決定はできない.
- 企画を通したいと思ったら,論理的に素晴らしいプランだけではダメだということである.当事者の想い・責任感と,意思決定者を動かす「何か」の両方が必要である.
4.2 ロジックフローに魂を入れる
- 左脳(ロジック)で考えたことに右脳で肉づけすることによって,相手の気持ちに入り込む,あるいは寄り添うことがカギとなる.
要するに人間というのは,ロジックフローがどんなに正しくても,自分に痛みを伴う提案はなかなか受け入れられない.
相手の気持ちを動かし,そうした痛みを伴う提案を受け入れてもらうためにはストーリー(物語)が必要となる.
- ここで言うストーリーとは,やってみたいとか,ワクワクする,あるいはやっていることが目に浮かぶなどの感覚をもたらすものである.
4.4 右脳と左脳がキャッチボールする
- どうしたら相手にわかってもらえるのか,相手の心理の壁はどこにあるのか,あるいはそれがわかったとしてどうしたら説得できるのかなどを考える.
第5章 右脳「力」を鍛える
5.1 ビジネスで使う「勘」を鍛える
- 大事なことは精緻華麗な理屈をつくり上げることではなく,人を動かすストーリーをつくることである.
- 人は感情で動くのであるから,ロジックにストーリーをつけて,相手の腹に落ちるようにすることが大事になる.
5.2 プライベートのやり方を仕事に活かす
- 日常生活では何か行動を起こすときに,ほとんど右脳発想から考え始めて,後からロジカルな整合性をとる.
5.4 感度を高めればいつもと違う情報が入ってくる
- 人は経験を積めば見方が変わる.あるいは,素人と玄人では同じ現象を見ても,違う解釈をする.
- 人によって見方・感じ方が違う.これを理解しておくことは自分自身にとっても重要であるし,他人を理解する上でも重要である.
5.5 アウトプットの最終目標「腹落ち」
- 相手に納得してもらうためには,相手がなぜ納得していないのか,あるいはどこに引っかかっているのかを理解することがカギである.
5.6 経験を積むことで,勘が磨かれる
- 正しいことや,やるべきことから考えると,大変だし,疲れる.それより自分がやりたいことをどうやったら実現できるか考えたほうが楽しいし,仕事もそうあるべきである.
大事なことは常に問題意識をもって挑むこと,そしてその問題意識に沿って経験を積んでいく,すなわち参照できるデータベースを充実させていくということに他ならない.
右脳思考とは,自分の中に蓄積された経験という,あなたオリジナルのデータベースに自在にアクセスし,それを使って自由に考えることである.
第6章 ロジカルシンキングより直感を信じてみよう
6.1 まず左脳を忘れて,右脳で仕事しよう
- 右脳で,こうではないとか,それは違うなとか,なんか変だなと思ったときに,それらの感覚を理屈に合わないからと言って切り捨てない.
6.2 あなたは左脳型か右脳型か
- 左脳だけで組織や人を説得したり,動かしたりすることは難しい.
- ロジカルに詰めて正しい結論を導くというより,思いついたことに後から理屈をつける.
- 正しいことや,やるべきことではなく,やってみたいことや面白いと思うことをやるようにする.ワクワク・どきどきすることを重視するようにする.
6.5 不等号を逆にすれば進歩や学習が生まれる
人間は失敗しないかぎり学習しない.なぜなら,成功すれば同じことを繰り返すからだ.
そこには進歩とか学習という言葉はない.