英語科学論文の書き方と国際会議でのプレゼン

英語科学論文の書き方と国際会議でのプレゼン (ネイティブ音読CD付き)

英語科学論文の書き方と国際会議でのプレゼン (ネイティブ音読CD付き)


はじめに

会話英語・プレゼン英語・論文英語は同じか?

  • 会話英語
    • 相手が一人か少人数で,会話中・実時間にお互いに質問できる状況で使われる言葉.ハートがあれば通じる最も容易な英語コミュニケーション.
  • 論文英語
    • 相手は不特定多数.実時間で書き手と読み手が相互に質問・回答することは不可能.文法的に精度の高い表現を求められる.
  • プレゼン英語
    • 相手は不特定多数.限られた時間内にある情報の本質を確実に聞き手に理解させなければならない.最も高度な英語コミュニケーション.
  • 本書の第一の目的は,まず文法精度の高い論文英語の書き方を解説し,どのようなプレゼン英語に変換すれば,わかりやすい論文発表ができるかを解説すること.

科学英語プレゼンテーションの心構え

  • これまでの経験から筆者は,科学英語教育に関して「結局,語学は覚えてナンボ」をスローガンのひとつにしている.
  • 自分の語彙にない外国語は聞き取れない.知っている単語でも,自分が正しい発音ができないとそれを聞き取ることができない.

Chapter1 科学論文の種類

  • 投稿論文は,査読者がわかってナンボ.
  • Abstract:
    • 論文の"顔"に相当するため,的確な英語表現を要求される.
  • Introduction:
    • 当該研究分野の歴史的背景と経過を概観しつつ研究の動機と目的を述べる.従来の研究に対して新しい研究がいかに価値あるものかを予感させるような"比較広告"を行う.
  • Experimental・Theory:
    • 論文執筆初心者はここから書き始めるのがよい.
  • Results and discussion:
    • 論文中最も大切な部分で,研究の結果とその考察を述べる.
  • Conclusion:
    • 研究の目的を簡単に述べてから結果を総括する.

1-3 査読基準

新規性
  • 「結論」で過去の研究を引用し比較議論し,新規性を明らかにする.
  • 同じ結果を得るのに新しい測定方法や理論を用いたのであれば,それも新規性と認められる.
投稿する雑誌との相性
  • ジャーナルに,実験結果が中心であるような論文を投稿するのはナンセンス.
英語表現の的確さ
  • 英語を母国語としない日本人にとって,この基準をクリアするのは至難の業.
  • 英語を母国語とする外国人も,英語に苦しんでいる.
図表の精度・クオリティー
  • グラフの縦横軸が説明されていなかったり,単位が明確でなかったりすると修正するようにコメントされる.

Chapter2 科学英語の基礎知識

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Chapter3 プレゼン英語から論文英語への書き換え


Chapter4 英語科学論文の書き方とプレゼン準備

4-1 論文:「抄録(アブストラクト)」の書き方

  • アブストラクトは,論文内容のエッセンスを要領よく記述して,読者に重要な新情報(データ)のみを提供する.
  • アブストラクトで研究の動機や経緯の詳細は述べる必要はない
  • 求める結果が得られたか否かがアブストラクトの内容として最も重要である.
  • 600語程度のアブストラクト,4パラグラフの場合:
    • 第1パラグラフ(起):当該研究の発端・歴史
    • 第2パラグラフ(承):最近の関連研究の問題点
    • 第3パラグラフ(転):本研究の目的・方法
    • 第4パラグラフ(結):主な結果
  • 英語科学論文で接続詞を多用することはタブー.接続詞は,それがなければ読者が混乱を起こすかもしれない場合にのみ入れ,その使用頻度目安としては,「1パラグラフに1回以下」.
  • 前後関係から明らかに内容が反転するか,結論付けられるかがわかる場合は,あえて接続詞を入れる必要はない.
  • 言い方を換えると,接続詞を必要としないような流れが論旨の展開に求められる.
  • 一旦,論文を書き終わってからすべての接続詞を順々に点検してそれらの必要性をチェックして頻度調整をすると良い.

4-2 プレゼン:カバーページ・講演概要ページとプレゼン準備

  • カバーページに書くべきこと:
    • ①論文タイトル
    • ②会議名
    • ③会議開催地(講演場所)
    • ④会議日程
    • ⑤著者名
    • ⑥著者の研究機関
  • share with you some of the highlighting data
    • 「重要なデータをご紹介します」
    • introduce は,人を紹介するときに使う.
    • 物(データ)を人(聞き手)に紹介するときは,share with you(=共有する) が最も適切な表現.
    • some of ... が入ることで,限定性を弱める意味がある.

4-3 論文:「緒論」の書き方とプレゼン準備

4-3-1 論文「緒論」の書き方
  • 「緒論」が論文の格付け,筆者の経験評価につながる.
  • 科学論文の「緒論」は,当該研究分野の発端・歴史を述べ,最近の関連研究の傾向・問題点に触れ,そして報告しようとする研究内容の位置付けと重要性を強調するためのセクションで,単なる「まえがき」とは次元を異にするもの.
4-3-2 「緒論」のプレゼン原稿
  • OK, now let me first talk about ...
    • 「それでは,まず...についてお話いたします」という講義・プレゼンの初めに使う表現
  • What you see here is ...
    • 「ここにご覧になっているのは[お見せするのは]...です」
  • As you can see
    • 「ご覧のように」
  • pretty much
    • 「おおよそ[だいたい]」
    • 2語で approximately, roughly に相当する副詞句.
  • what have you
    • 「その他,諸々」
    • etc. に相当する表現.
  • right?
    • 「いいですね?」という意味で,講義・プレゼンに非常によく出てくる.
    • right her と right now を2つ連続で使うと「たった今ここで」という強い表現になる.
  • no matter what you do
    • 「何をやっても,どんなに頑張っても」という口語表現.
  • just about ...
    • 「だいたい[ほぼ]...」という表現で,essentially や pretty much とよく似ている.
  • what's in common with all these concepts is that ...
    • 「これらの概念に共通なことは...である」という表現.
    • that節を続けてかなり複雑な内容も述べることができるため便利.
  • Shown here on your right [on your left] is ...
    • 「向かって右(左)にお見せするのは...です」という意味.
  • just to see if ...
    • 「...をちょっと調べるために」という表現.
  • like shown in this movie
    • 「この動画でご覧いただけますように」という表現.
  • Data indicate (that) ...
    • 「データによると...です」という決まり文句で,プレゼンに限らず論文中でも使える.

4-4 論文:「研究の方法」の書き方とプレゼン準備

4-4-1 論文「研究の方法」の書き方
  • in our previous work, in the present work
    • 「前回の研究,今回の研究」という決まり文句的表現.
    • これらの副詞句が用いられる文の時制は,前者が必ず過去形で,後者は現在形または現在完了形になる.
  • unlike any other ...
    • 「他の...と異なり(他に例がない)」という副詞句で,非常に便利な表現.
  • at most
    • 「最大でも[高々]」という意味.
    • 反対の表現「少なくとも」は,at least.
4-4-2 「研究の方法」のプレゼン原稿
  • to talk about (more) details ...
    • 「(より)詳細を言えば...」という便利な表現.
  • To mention some of the experimental details
    • 「実験の詳細をお話しますと...」という不定詞を用いた表現.
  • ... is believed to be 〜
    • 「...は,〜であると思われる」というやや弱い確信を表すときに用いる表現.
    • 実際に測定して確かめたことではないけれど...というニュアンスが入る.

4-5 論文:「結果と考察」の書き方とプレゼン準備

4-5-1 論文「結果と考察」の書き方
  • 「結果と考察」の書き方とコツ
    1. 実験や計算から得られた結果を十分に検討し,最も一般的で読者が理解しやすい形式で発表する.
    2. 最終的なデータに至るプロセスも「結果と考察」のセクションで記述する.
    3. 得られた結果が予想通り・理論通りの場合は,その妥当性を説明するまでもないかもしれないが,念のため,関連研究を引用してダメ押しをする.
  • Notice that [Recognize that]
    • 特筆すべきデータに関して「ご注目ください」という決まり文句的表現.
  • These observations imply that ...
    • 「これらの観測結果は,...を意味する」という意味.
  • These data lead us to the conclusion that ...
    • 「これらのデータから...という結論に我々を導く」という表現.
    • 論文英語では,we conclude ... ではなくて data が主語になることに注意.
4-5-2 「結果と考察」のプレゼン原稿
  • There are two possibilities: one is that ... and the other isn that 〜
    • 「二つの可能性があります.ひとつは,...で,もう一つは〜です」という表現.
  • Sure enough
    • 「案の定...であった」という副詞句で,just as expected と言い換えられる.
  • we claim that ...
    • 「...と主張する[...と言える]」という表現で,プレゼン英語のみに使われる.
  • turning out to be ...
    • 「...ということがわかった」という,分詞構文を用いた表現.
  • We can't tell right now
    • 日本語の「今は,何とも言えません」に相当する「白旗を振る」表現.

4-6 論文:「まとめ・結論」の書き方とプレゼン準備

4-6-1 論文「まとめ・結論」の書き方
  • 「まとめ」とするか「結論」とするかでかなりニュアンスが異なってくる.
  • 「まとめ(Summary)」とした場合:
    • まず研究動機と方法をごく簡単に書く必要がある.
    • 結果の記述に関しては,原則として箇条書き.
  • 「結論(Conclusion)」とした場合:
    • 結論(Conclusion)は,一般に単数形.
    • この場合も,まず研究の動機と方法を簡単に書いて,読者に「緒論」で述べた研究の位置付けを思い出させる.
    • 「結果と考察」の内容を単に繰り返すのではなく,より一般化(深化)させて関連分野における将来の研究への方向付けを述べることで改めて研究の意義を強調する.
    • 「緒論」では,過去の研究との関連を論じたが,「結論」では,未来の研究への影響を記述することになる.したがって,当該分野の研究に十分な経験と実績がなければならない.
  • 論文で「結論」として締めくくっても,プレゼンでは「まとめと将来設計(Summary and future plans)」とすることがすすめられる.
    • 理由としては,学会での聴き手の理解を助けるために,箇条書き的に結果を整理するほうが良いこと.
    • 一般に「結論」は,研究の完結・完成を意味するので,さらなる継続研究の余地を残すためにも「まとめ」とするほうが良い.
  • address issues
    • 「問題を提起する」という非常に重要な表現
  • It is predictable from these results that ...
    • 「これらの結果から...ということが予想される」
    • that 以下に宿命的な未来事象が記述される.
  • There is no doubt that ...
    • 「...には疑う余地がない」
4-6-2 「まとめ・結論」のプレゼン原稿
  • now let me summarize my talk
    • 「さぁ,まとめに入ります」という決まり文句.
  • Results are as follows
    • 「結果は,以下の通りです」という最後のビューグラフで言う決まり文句.
    • Results may be summarized as follows でも同じ意味.
  • Most importantly
    • 「最も重要なことは...」という意味で,最も重要な結果を述べるときに言う.
  • As the next step
    • 「次の段階として...」
  • Thank you very much for your attention
    • 「ご清聴ありがとうございました」

4-7 プレゼン:質疑応答の英語

  • 講演者として質問に答えるときは,以下の点に気を付ける:
    1. 質問を確実に理解する
    2. 質問者に敬意を表する
    3. 質問を咀嚼し議論を聴衆と共有する
    4. 論理的に質問者を答えに誘導する
    5. 質問に答えられないときは,後述のようにしかるべく対応する
4-7-1 質問の仕方
  • 定かでない自分の記憶を述べるときは,I believe ... とする.
  • Am I wrong[correct]?
    • 「間違っていませんか?」という確認の言葉.
  • I wonder if you could elaborate on + 尋ねたい物・事柄
    • 「尋ねたい物・事柄 について,少し詳しくお話しいただけますか?」
    • Would you tell us about ... ? としても構わない.
4-7-2 質問の答え方
  • Your question is how did I measure ...?
    • 「どのように計測したかをお尋ねですね?」
  • I assume that ...
    • 「...ということを仮定しています」
  • Have I answered your question?
    • 「ご質問にお答えできましたでしょうか?」
  • That is completely beyond my expertise.
    • 「それは,全く私の専門外です」
    • I am not qualified to answer that question. (謙遜した答え)
    • どちらの表現も質問に答えられないとき,「白旗を振る」表現.
  • Unfortunately, we haven't been able to ~
    • 「残念ながら,~には至っていません」

Chapter5 論文発表以外に必要な英会話・電子メールコミュニケーション


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