その仕事、全部やめてみよう

第1章|「谷」を埋めるな、「山」を作れ!──市場で勝つ

「谷」を埋めるな、「山」を作れ!

  • 考えるべきは「山」──自社製品の長所であり,ユニークな価値のほう.
    • どれだけ「谷」を埋めても,「山」がなければ,その製品の特徴は見えない.
    • 最初にやらなければならないのは「山」を明確にすること.
  • 「山」をつくる3つのコツ:
    1. まだ誰もやっていない
    2. 他業種や他国の成功例のエッセンスを取り入れる
    3. ギャップに目をつける
      • IT活用が遅れている領域で先んじてITを取り入れれば,それは「山」となる可能性が高い.

王者マイクロソフトへの挑戦──「1%の本質」をつかむ

  • もし仮に「谷」を埋めることができても,新しい体験や価値を世の中に提供できるわけではない.
    • なぜならば,「谷」とは,「すでに他社製品が世に示した体験や価値」だから.
    • 大切なのは,どんな状況下でも「谷」に惑わされず,自分たちの「山」が何なのかを見極めること.
      • この「1%の本質」に焦点を当てることが,世の中に新しい喜びや驚きを届ける唯一の道.

過剰品質の美学──日本とアメリカの違い

  • 過剰なくらい品質に磨きをかける日本的アプローチには,品質の高さや安定感といった長所があるが,短所もある.
    • 製品も組織も細かく作り込みすぎると,スピーディーな対応ができなくなる.「変わるべきときに変われない」.
  • トライアンドエラーを繰り返し,一定の答えが見えたところで,もう一度過剰品質の美学をとり入れていけばいい.


第2章|「ハンマーと釘」の世界の落とし穴──正しく実行する

「ハンマーと釘」の世界の落とし穴

  • 多くのITやサービスは,「こんなことができたら面白いんじゃないか」という子どものような遊び心から誕生している.
    • ITの製造物は原材料を必要としない.製造ラインなどの大規模施設が必要ないので,アイデアを素早く実現しやすい.
    • だからプログラマーはまるで魔法使いのように,アイデアさえあれば何もないところから新しい製品やサービスを作れる.
  • 「新技術が出たからといってむやみに使わない」を徹底する.

あるものは使う。ないものは作る

  • 「あるものは使う。ないものは作る」は,プログラマーの基本原則.
  • 大切なのは,「問題があるなら自分で解決すればいい」と普段から考えること.
    • そして,自分だけでなく,あの人たちも嬉しくてビックリするかも知れないとワクワクしながら,まずやってみること.

デジタル技術の「正しい」使い方

  • DXの明確な失敗パターンは,「使う人の驚きと喜びを考えないで作る」ということ.
    • CX(顧客体験)とEX(従業員体験)を徹底的に考えなければ,DXは成功しない.
    • つまり「使う人がどんなふうにワクワクするのかを全力で考えているか」が肝
  • 「これから来そうだという技術は習得しておき,使うべきときが来るまでは無理して使わないように」
  • DXで一番重要なことは,デジタル技術そのものに着目するのではなく,それらの技術によって実現できる,いままでにはなかった驚きと喜びに着目すること.


第3章|「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ──自分を磨く

「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ

  • 「ラストマン戦略」とは,グループ内で自分が一番になれそうな領域を決め,「あの人がわからないなら,誰に聞いてもわからないよね」という,いわば最後の砦とも言うべきスペシャリストを目指す成長戦略.
    • 「グループ内」は課や部といった小さい単位でいい.

エンジニア風林火山

  • エンジニア風林火山
    • 風のエンジニア:
      • 迅速な設計/実装によってチームを加速させる.
      • 風のエンジニアがいない開発チームでは,他に先駆けて新製品やサービスをリリースすることが困難になる.
    • 林のエンジニア:
      • 突発的なトラブルが発生しても冷静に対処し,チームに「乱れぬペース」を提供する.
      • 林のエンジニがいない開発チームでは,トラブル発生時に的確な判断を行えず,混乱に陥りやすい.
    • 火のエンジニア:
      • 新しい技術/方法/ツールの積極的な導入によって,チームやその成果物の競争力を高める.
      • 火のエンジニアがいない開発チームでは,イノベーションが起こりにくい.
    • 山のエンジニア:
      • 厳密なエラーチェックと堅牢なプログラミングによって成果物の安定性を高める.
      • 山のエンジニアがいない開発チームでは,常に品質の低さに起因する不安にさいなまれる.
  • スキル・能力の持ち方や磨き方には,人それぞれ自分にあった形がある.
    • 自分の強みを客観視し,他人の優れた能力からとり入れるべきものはとり入れる.

戦略的に「見せ場」を作る

意図的に,そして戦略的に仕事の中で「見せ場」を作ろう.

例えば,上司の指示で資料をまとめることになったとする.普通にやれば1ヶ月くらいかかる資料を,ここぞとばかり全力で集中して終わらせる.もし3日か4日で驚くようなクオリティで完成させることができたらどうだろう.上司はアッと驚き,あなたを見る目も変わるはずだ.

こうした「見せ場」を作ることは,自らを「ユニークな力を持つ人」に育てていくことそのものだと言える.「見せ場」を作るとは,言い換えれば「普通ではない成果を出すこと」だからだ.

ちょっとしたことでも全力でとり組んで,相手の期待を上まわる成果を出す.こうした努力の積み重ねの結果,いつの間にか人より抜きん出た能力が身についていく.

  • 「見せ場」を作ることが習慣化されていくと,些細なことでもひとつひとつに丁寧にとり組むようになる.
    • それ自体が,その人の信頼の積み上げや,弱点の克服につながっていく.
    • 惰性で仕事をするのではなく,「見せ場を作る」意識でやり続ければ,周囲の見る目も必ず変わる.


第4章|「To Stopリスト」をいますぐ作る──生産性を上げる

「To Stopリスト」をいますぐ作る

  • 日々のタスクを少しでも減らすことが,時間なりコストなり,何かを新しく始めるための余力を生み出す.

人は「見られる」と生産性が上がる

  • プログラマーは自分自身のコンディションによって生産性に何倍もの差が出ることを知っている.
    • だから難しい課題や,クリエイティビティが求められる仕事に取り組むときは,テンションがピークに達するまではあえて何もしないことが多い.

パフォーマンスを高めるために「力を抜く」

  • 人生もどこかで力を抜くようにしないと,速いスピードで走り続けることができない.
    • 常に全力疾走すれば,パフォーマンスは必ず落ちる.
    • 自分にあった形で力を抜くことで,長く,速く走り続けることができる.


第5章|職場は「猛獣園」である──チームで戦う

職場は「猛獣園」である

  • エンジニアに限らず,突出した能力を持つ人には癖がある.

人を傷つけずに、問題点を指摘する──「ひよコード」

  • プログラミングの世界では,「レビュー」が重要視されている.
    • 加えて,ソースコードの美しさや読みやすさに関するチェックも行う必要がある.
    • 美しく設計されたコードは再利用性が高く,そうではないコードは変化に弱く,応用が効かない.
  • レビューの難しさは,「言わなければいけないこと」と「傷つけないようにすること」の2つを両立させなければならない点にある.

人を動かすコツは、相手を全力で理解すること

  • 大事なのは,「相手が思っていることを受け止め,それを踏まえて自分たちの考えをきちんと伝える」こと.
    • 「対峙する」ではなく,「この人の言っていることを全力で理解しにいく」というスタンスで話を聞く.
    • 重要なのは説得テクニックではなく,相手を理解しようとする歩み寄りのスタンス.
  • 言われたことを「おっしゃる通り,その点はとても重要だと思います」というスタンスで相手の意見をまず尊重して聞く.
    • そのうえで,相手がおそらく知らないであろう情報を付加するとなおよい.
    • 相手の言っていることを深く理解している姿勢を示す.

「俺がやったほうが早い病」の治し方

  • 自分がやったほうが早い場合でも「いいね,すごくいい」と言いながら,メンバーのやる気を引き出すほうが効率的.
    • ほとんどの人は「ほめられると伸びるタイプ」なので,プラスの効果しかない.
  • 「俺がやったほうが早い」と思っている人は,まずは周囲のほめるべきところをほめ,人の成長を温かい目で見守ることから始める.
  • 仕事の能力のうち,移植できるものはどんどん他の人に手渡すべき.

調整型とリーダーシップ型、マネージャーに向いているのは?

  • ベンチャーであっても大企業であっても,調整型とリーダーシップ型,双方のマネージャーが必要.

ファインプレーを「称え合う」文化は強い

  • 一番大切なのはメンバーが「自分の価値は正しく理解されている」と感じながら仕事をすること.
    • 自分の行動を「価値あるもの」と認めてくれる人がいることは,涙が出るほど嬉しい.

上司が自分のよさや価値を本当によく理解してくれて,仕事や成長をとてもよくサポートしてくれている.

そう感じられたらそれだけで「仕事をもっとがんばろう」と思える人は少なからずいるはずだ.

ここぞとばかりに注力した仕事を高く評価してもらえれば,部下のモチベーションも大きく上がるだろう.


おわりに

  • 一番やめるべき仕事は,没頭できない仕事.没頭せずに何かに取り組むことは,普通以下の成果しか出せない非効率な仕事の仕方.
    • 仕事の中に面白さや楽しさ,やりがいを見出して夢中になって取り組むことこそが,仕事を力強く前に進めていく原動力となる.