苦しかったときの話をしようか

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苦しかったときの話をしようか

はじめに|残酷な世界の“希望”とは何か?

  • 答えは一人一人が自分で出さねばならないが,自分の将来や仕事のことを考える際の「考え方(フレームワーク)」は知っておいたほうが良いのは間違いない.
  • 現実を見極め,正しい選択をすることで,人は目的に近づくことができる.
    • そのために重要なのは,さまざまな現実を生み出している“構造”を明らかにすること.
    • 社会で成功をつかむためには,覚悟をもって“構造”を直視し,その本質を大きくしっかりと把握せねばならない.

本書で説いているのは,「神様のサイコロで決まった“もって生まれたもの”を,どうやってよりよく知り,どうやって最大限に活かし,どうやってそれぞれの目的を達成するのか?」ということに他ならない.

そのために己の“特徴”を知ること,特徴を強みとして発揮できる“文脈”を見つけること,そして“強み”を徹底的に伸ばすこと,それらがなぜ重要なのかを私の子供たちに理解させるために,具体的に解説している.


第1章|やりたいことがわからなくて悩む君へ

悩みに向き合う君が,自分の進む太くて真っすぐな道が見えてくるように,悩みの解き方と答えの探し方の助言をしたいだけだ.

君のサイコロを振れるのは君しかいない.君が振ったサイコロの目が,“君自身にとって納得できる選択”になること,ただそれのみを願って私は書く.

やりたいことがわからないのはなぜか?

  • 君の悩みの本質はオプションがわからないことではない.
    • 問題の本質は,君が世界のことをまだよく知らないことではなく,君が自分自身のことをよく知らないことである.
    • 自分の中に基準となる「軸」がなければ,やりたいことが生まれるはずも,選べるはずもない.

本質的に君が悩むべきなのは,具体的な就職先ではない.

君が真っ先に悩んで,そして最後まで集中して考え抜くべきなのは,君のキャリアにとって重視すべき「軸」なのだ.

それが明確であればあるほど,どの職能を磨きたいのか,どの業界や企業を回るか,それらも能動的に定まってくるだろう.

最終的な選択は,内定をもらったオプションの中から最も軸に沿うものを見極めることに集中すれば良い.

君の宝物は何だろう?

  • キャリア戦略とは,その人の目的達成のために,その人が持っている“特徴”を認識して,その特徴が強みに変わる文脈を探して泳いでいく,その勝ち筋を考えるということ.

会社と結婚するな,職能と結婚せよ!

  • 会社に依存するのではなく,自分自身のスキル(職能)に依存するキャリアの作り方を,強く勧めたい.
    • 個人にとって,会社は職能を身につけるための手段.
    • スキル(職能)こそが,相対的に最も維持可能な個人財産.
  • プロとして十分なスキルを獲得すれば主導権は君に移る.
    • 己のスキルを伸ばす舞台として君の方が会社を選べるようになっていく.
  • 会社と結婚しても結果的に何らかのスキルは身につくだろうが,スキル獲得を目的にしている場合と比べて,獲得するスピードと,獲得できるレベルがまったく違ってくる.
  • ますます二極化していく社会において,キャリアの明暗を分けるものはなんだろうか?それは今まで以上に“スキル”である.

大丈夫,不正解以外はすべて正解!

要するに,たった1つの大正解,大吉をひこうとするな!という話.

大凶や凶を引かなければそれでいいのだ.自分の強みとして活きる文脈がそれなりにあるのであれば十分,つまりたくさんある小吉や吉を1つ引っ張ってくるだけで十分なのだよ.

会社に入るのはほんのスタートに過ぎない.そしてどんな会社に入っても,自分の弱みは多少は露見するし,失敗もするし,ライバルもいれば嫌な人間も必ずいるものだ.

そんな中で,君は負けても転んでも起き上がって,へこたれずにひたすら自分の宝物を磨き続けられるか?

その覚悟こそが問われている.大吉かどうかを決めるのは会社ではない,入社後の君自身なのだ.


第2章|学校では教えてくれない世界の秘密

そもそも人間は平等ではない

  • 「人間は,みんな違って,極めて不平等」
    • 生涯年収などの経済的成功の度合に最も相関するのが知力の格差.
    • 経済格差は,原因ではなく,知力の格差がもたらした結果に過ぎない.
    • 自分のユニークな特徴さえ認識できれば,一人一人が特別な価値を生む可能性がある.

自分が変えられるのは,自立するまでは与えられた環境でどれだけもって生まれたものを活かせるかということであり,自立してからはもって生まれたものを活かせる環境(文脈)にどれだけ能動的に泳ぎ着けるかということぐらいだ.

君がコントロールできる変数は,①己の特徴の理解と,②それを磨く努力と,③環境の選択,最初からこの3つしかないのである.

この事実を直視することは,君にとってのキャリアの勝ち筋を見つけるための大切なスタートラインになるだろう.

君がこれから積み重ねる努力のフォーカスは,この3つしかない.

君のやるべきことは,ざっくり言うと,君の持って生まれたものを最大限に活かすことだけであるとわかるだろう.

資本主義の本質とは何か?

  • どんな物事にも必ず本質がある.その本質によって構造が決まり,その構造に従って複雑にさまざまな現象が生まれてくる.
    • 「本質→構造→現象」の順に上位が下位を拘束している.
    • 分析力を武器にしたいのであれば,現象に囚われず構造を診る力,それらの構造から本質を見抜く力を養わねばならない.
  • 資本主義の本質は,人間の「欲」:
    • 資本主義は,人間の「欲」をエネルギー源にして,人々を競争させることで社会を発展させる構造を持つ.
    • 欲を人質にして人々を競争させることで,人々に怠惰や停滞を許さず,生き残るために常に進歩と努力を強いていく構造になっている.
    • 資本主義は「欲」を本質とし,「競争」が主な構造:
      • 競争のチャンスだけを公平に近づけておけば,競争の結果に対しては勝利者に報いて,敗者が最低ラインまで落ちることを,「良し」とするのが資本主義社会.
      • 能力の差によって経済格差が生まれることを認め,平等の不平等ではなく頑張った人が報われることを「公平」としている.
    • 資本主義社会とは,サラリーマン(自分の24時間を使って稼ぐ人)を働かせて,資本家(他人の24時間を使って稼ぐ人)が儲ける構造のこと.

人間は,自分が知っている世界の外を認識することができない.

親がまじめなサラリーマンの子供は,その人生において,まじめなサラリーマンで一生過ごすことがパースペクティブになっている.

だから,サラリーマンが働いて生み出した多額の価値を,その外で資本家たちが山分けしていることを意識できない.

自分も向こう側の世界に行こうと思えば行けるのに,パースペクティブに無ければそのオプションを意識すらできないのだ.

覚えておいた方が良い.資本主義とは,無知であることと,愚かであることに,罰金を科す社会のことである.

  • 肝心なのは,資本家の世界を射程圏に見据えるパースペクティブを君が持っているかどうか.

君の年収を決める法則

  • どの職能を念頭にどの業界のどの会社に就職するかを選んだ時点で,将来における君の年収はほぼ自動的に決まっている.
  • 需要が高い職能を持つ“代替がききにくい人”の給料は高く,その逆は低くなる.
  • 儲かっている業界や企業の方が年収は高くなり,そうでない場合は逆になる.
    • 市場構造が変わらない限り年収は大きくは変わらない.
  • 同じ職能でも,同じ業界でも,成功の程度によって年収は変わる.
    • サラリーマンならば,年収200万円の人と2000万円の人の違いは,その人がどれだけ重要で代替不可能な能力を有しているかによって決まっている.
  • プロ野球選手の平均年収の方がプロサッカー選手の平均年収よりも高いのも,プロ野球の方が1年により多くの試合をこなせるという構造を持っているから.
  • 就活も転職も,最大限に追求すべきは,自分自身の成功確率を最大化すること.

持てない人が,持てるようになるには?

  • 職能を磨き続け,プロとして顕著な結果を出し,実績で労働市場での評価を上げていくしかない.
    • つまり,どこで何をしていようとも,労働市場での自分の市場価値を常に意識していなければならない.
  • 大事なことは,自分に合った苦労を選びやすくするために,できるだけパースペクティブ(本人が認識できる世界)を広く持つこと.
    • 自分にとってより適した生き方を選べるということが大切.君自身が一度きりの人生を好きなように生きるために.

会社の将来性を見極めるコツ

  • もし君が本当に安定したいのであれば,今の大企業に入るのではなく,将来の大企業に入らねばならない.

持続可能な「需要」の有無を診る

  • 真っ先に考えるべき1つ目の軸は「需要」の変化である.
    • 需要のシフトは業界や企業にとって大激震となる.
    • その会社の主な売上を支えている市場の需要が,どれだけ将来にわたって安定してあり続けるのか?という観点.
    • その会社が今稼いでいる基幹技術に対する代替技術の出現可能性を視野に入れることも大切.
    • 市場の需要は,大きな目でみると必ず消費者のプレファレンス(相対的な好意度)に従う.
    • さまざまな情報の手掛かりを集めて,自分なりに需要の有無を見極めていく.
      • 企業の主な売上の未来の需要,そしてその企業が開拓しようとしている新規ビジネスの未来の需要,それらを推理していく.

持続可能な「構造」の有無を診る

  • 2つ目の観点は,その需要から持続的にシェアを取り続けるための「構造」の有無を診ること.
    • その会社の現在の業績を支えている競争力の源泉(コア・コンピテンシー:つまり強み)を見極め,その競争力が持続可能かどうかを判断する.
  • 人生とは,まだ知らない面白いことを求めて,自分の世界を拡げていく旅のようなもの.


第3章|自分の強みをどう知るか

  • キャリア戦略とは,精緻で複雑で大仰なものにはならない.むしろシンプルでクリアでなければ使えない.

まずは目的を立てよう

目的は「仮設」でもいい

  • 自分がこれから踏み出す道の一歩が,それなりに自分が考えた結果の一歩であると思えた方が自信を持って踏み出せる.
  • おぼろげながらでも早めに目的を設定し,その方向へキャリアの専門性を集積する”貯金”を開始した方が得なことは多い.

君の強みをどうやって見つけるのか?

  • 戦略を立てる際に最も重要なのは,己の「資源」(ビジネスでは,ヒト,モノ,カネ,情報,時間,知的財産の主に6つ)をどう認識するか.
    • 戦略とは資源配分の選択のことだから,どのような資源を持っているかによって取りうる戦略はものすごく可変する.
    • 自分の強みをどれだけ早く見つけて,武器として認識して,それを磨いて伸ばしていくことに集中できるかが,キャリアの明暗を分けることになる.

“強み”は必ず好きなことの中にある

  • 20年も生きてきたのなら,君の強みは必ず好きなことの中にある.
    • ここまでの成功は,君の強みによってもたらされてきたのだ.さらにそれはこれからの長い人生でも続く.
    • 会社が給料を払っている対象は,君が人知れず弱点克服のために費やしている努力ではない.君の生み出す業績であり,その業績は君の強みから生まれるのだから,会社が買っているのは君の“強み”なのだ.


第4章|自分をマーケティングせよ!

面接で緊張しなくなる魔法

  • 「伝え方(HOW)」よりも「中身(WHAT:何を伝えるか)」こそが,遥かに重要な意味を持つ.
    • 「伝え方が9割」ではなく,「内容が10割」.伝え方は,中身があって初めて価値を持つ.
    • 君という人間の価値をより良く理解してもらうための中身の準備こそがフォーカスなのは言うまでもない
  • 結局は,誰に伝えるのか(WHO)→何を伝えるのか(WHAT)→どう伝えるのか(HOW)の順番で考えるのが正しい.

私はプレゼンテーションでも面接でも緊張はしない.なぜか?

私は,緊張から解放されるための「ある準備」をしているからだ.「ある準備」とは何か?

それは自分自身のブランドである「My Brand」を予め設計しておくことだ.この準備のおかげで,私は上手に話そうとはまったく思わなくて良い状態になっている.

私という人間が,腹の底から信じているのと同じことを,ただ精一杯に同じように伝えるだけで良いのだ.これで気負う必要がほとんどなくなった.

  • マーケティングの手法を使って,自分がコミュニティーで“市民権”を得やすい構造をつくることを発想した.
    • 自分を1つのブランドとして設計してしまえば,毎回相手に伝えることのパレットは一定で済むし,その方が周囲からの自分への印象も安定するので,評価もイメージも定着しやすいはず.
    • 簡単に言えば,「あいつはああいう奴だけど,こういうところは価値があるから,まあ,しゃあないな」と思ってもらう.
    • 周囲に私ならではのユニークな価値を理解してもらい,私という人間に少々の棘があっても,周りの人の方に「そういう人」だと慣れてもらい,許してもらえるよになる作戦.
  • 「My Brand」の設計図は,キャリアを成功させる3つの効果をもたらす究極魔法の構成式のようなものだった.
    1. プレゼンや面接で緊張することから解放された人生を送れるようになる.
    2. 自分のキャリア戦略の最重要な指針として機能する.
      • どんなスキルを開発すべきなのか,どんな業界でどんな実績を積んだ方がブランド(自分)は強くなるのか,都度の判断が明瞭になる.
  • どの職能に進もうが君の成功のためには,マーケティングの基礎的な考え方を頭に入れ直しておくことを強く勧める.

君自身をブランドにする!

  • ブランドこそが,人の頭の中につくられる「売れる仕組み」の本質.
    • 一流のマーケターは,ブランドを意図的に設計したり改造したりするノウハウを持っている.
      • 購買者に選んでもらう確率を高めるために要素を選び出し,逆算してそのイメージを組み込んだブランドを購買者の頭の中にイメージとして構築していく.
    • 購買者の頭の中で自社ブランドが選ばれる確率が上がるようにブランドへのイメージを操作することを「ブランディング」という.
  • 「My Brand」を一度しっかりと設計して定義しておく.それをやっておけば,その後が非常に楽になる.
    • 面接だろうが,プレゼンだろうが,日頃の行いもすべて,このMy Brandのシンプルな設計図どおりに自分が認識されるよう,一貫した行動を心がけるだけでよい.
    • 自分の設計したMy Brandに沿った行動を心がけることで,自分自身がMy Brandの示す方向へどんどん成長してくるのも実感するようになる.
    • 脳が絶えず意識している方向へ,どうしても行動が伴ってくるという人間の習性を利用する.

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キャリアとは,自分をマーケティングする旅である

君をブランディングする方法

  • ブランドは社会の中で築き上げたい「自らの信用」だとも言える.
    • 「勤勉で正確な仕事ぶり」で信用されたい人は,遅刻や計算ミスには人一倍気をつけなければならない.
    • 「リーダーシップが強い」と信用されたい人は,組織が困難なときこそ全体のために「最初に弾に当たって,最後に食べる人」であるように行動しなくてはならない.
    • ブランディングにとって重要でもないことを,いちいちバトルとして拾っていては人生に無駄と寄り道が増えすぎる.そのような局面は上手くかわすのが一番良い.

君自身をブランディングするというのは,要するにシンプルなことだ.

君の本質を誠実に射抜いたベクトルを,理想の方向にスピンして引き伸ばしてブランドを設計したら,精一杯努力して理想に近づくように行動を積み重ねていくしかない.

エクイティーと一貫した行動と,そこから生まれる実績を着実に積み上げて大きくすればするほど,君は“エクイティー・ボーナス(ブランド・エクイティーのおかげで相手の印象が増幅すること)”を得られるようになるだろう.

たとえば,「戦略的思考力が強い」というブランド・エクイティーを周囲に築いていれば,その人の言うことは聴いてもらいやすくなるし,内容もきっと賛同を得やすくなるだろう.

  • もちろん認知は大事だが,自分を売ろうと必要以上に躍起になる必要はない.
    • 最重要なのは,“問答無用な実績”.目を見張る実績を生み出す才能は,嫌でも世の中に出ていくことになる.
    • 認知形成においても,まず躍起になるべきは,ブランドを構築する一貫した行動と,結果を出すことにこだわること,その2つだけ.

“転職”は武器になる!

  • 大前提は,転職はキャリアの目的を達成するための手段に過ぎないということ.
    • 転職すること自体が良い訳でも悪い訳でもない.まずは目的をよく見極めて,何のための転職なのかを明確にしなければならない.
  • 昔も今も転職した人の一番多い本音は「職場での人間関係によるストレスから逃れるため」.
    • 多くの人は『積極的な転職』という手段を取ることができない.

これは戦略の真理だが,普通の人と同じようなことをしていたら,普通にしかなれない.

人と違う結果を出したいなら,人と違うことをやるか,人と同じことを違うようにやるか,そのどちらかしかないのだ.

職能を増やすコツとは?

  • 職能はただ増やすのではない,職能を増やすコツは,“シナジー”を狙うこと.
    • 己のブランド・エクイティーを強化する戦略上にある職能を増やしていく.
    • 1つ目の職能で培ってきたエクイティーと相乗効果がありそうな2つ目のスキルの中から,自分の特徴に合ったもの(興味があって好きなもの)を選ぶのが最も戦略的だと言える.


第5章|苦しかったときの話をしようか

人が最も苦しいのは,自己評価が極端に低くなっているとき.

自分自身で自分の存在価値を疑う状況に追い込まれたときだ.

劣等感に襲われるとき

肩の力が抜けた私は,自分がどのような働き方をすれば最も中長期的に成果を出しやすいかを考えた.そして自分のスタイルを大転換したのだ.

畑の隅々まで勤勉に緻密に丁寧に耕すことを止めた.自分の特徴はそうではなかったからだ.

どこに焦点を絞って働けば最小の努力で最大の成果が上がるか?これを考えるのが好きで得意だった私は,依頼された仕事の中から,本当にビジネスに影響を与えるより重要な課題の3割を選んでそれに集中し,残りの7割は捨てる,そういう働き方に変えたのだ.

  • 社会人デビュー直後は,自分が相対的に「一番できない人間」になることは誰にとっても避けられない.
    • 潰れないためには,最初から肩の力を抜いて,最後尾からスタートする自分を予めイメージして受け入れておくべき.
    • みんな,最初は新人だった.大丈夫,貪欲に学ぶ姿勢と,数年に満たない時間がきっと解決する.

自分が信じられないものを,人に信じさせるとき

無力なサラリーマンである以上は「後ろ向きな仕事」は避けられない.実際に多くのサラリーマンたちが死んだ目をしながら,人生の一番良い時期を「後ろ向きな仕事」に費やしている.

生活のために組織に命じられた仕事を素直にやるしかないと彼らは思っている.何年もそんなことをやっているうちに,仕事の意義や自分の存在価値を疑問にすら感じなくなるのだ.

そんな一人になるのは絶対に嫌だった.ならばどうするか?なんとかして無力なサラリーマンを抜け出すしかない.

有力なサラリーマンとは?それは会社にとって数多くいる消耗品のような「人材」ではなく,辞められたら本当に困る「人財」として組織に認識されること.

  • 大きな会社では,誰も信じていないのに絶望的な結果を見るまで誰も止めることができないプロジェクトが,実はいくつもある.
    • 組織では,意思決定者へ正しい情報を供給する神経回路が破断しているせいで,驚くような平易な間違いがしばしば起こる.

私は,ナイスな人であろうとすることをやめた.

森岡さんってどんな人?と聞かれた部下や周辺の人が,もうどれだけ罵詈雑言を述べたってかまわない.ただ一言,「結果は出す人よ」と言われるようになりたい.

人格の素晴らしさで人を惹きつける人徳者である必要もない.ただ「ついて行くと良いことがありそう」と思ってもらえる存在であれば良い.

結果さえ出れば,彼らの評価を上げることができるし,彼らの昇進のチャンスも獲得できるし,給与もボーナスも上げることができるのだから.大切な人たちを守ることができるのだ!

無価値だと追い詰められるとき

  • 大切なことは自分の強みで戦うしかないことと,自分の強みを知っておくこと.
    • 自身の強みへの集中:「自分の特徴を強みに変える文脈」を選んで,そこへ向かって泳ぐということ.
  • 大きな環境変化に対して,人間は半年もあれば新しい環境に順応していく力があるという.
    • 新入社員や,転勤の異動や留学生だけでなく,刑務所に放り込まれた人にもこれは当てはまる.

環境を大きく変えて自分を追い込む挑戦は,苦労が多いだけ自身を飛躍的に成長させる.パースペクティブを劇的に拡げることができるからだ.

パースペクティブが拡がると,今の自分となりたい自分のギャップを明瞭に意識できるようになり,それがさまざまな能力の覚醒のスタートとなる.

さまざまなことができるようになり,さまざまなことに動じなくなっていく.


第6章|自分の“弱さ"とどう向き合うのか?

「不安」と向き合うには?

  • 不安は未来を予測する知性が高いほどより大きくなる.
    • 挑戦する君の“勇敢さ”と“知性”が強ければ強いほど,よりくっきりと映し出される「影」こそが,実は“不安”の正体だと理解する.
    • もちろん不安やストレスそのものは痛いけれども,そういう挑戦をしている自分の行動の“意味”や“価値”が,しっかりと自分の軸を支えてくれるようになる.
  • 大きな失敗をしたおかげで得られた学びや人脈のおかげで,それ以前には想像もできなかった新しい世界が見えるようになることは非常に多い.
  • 不安を抱いて初めて人は成長する,大人になっていく,パースペクティブは拡がっていく.

「弱点」と向き合うには?

  • やってみて試行錯誤したとしても,やはりできない苦手な領域が増えるという結果も十分あり得る.
    • そのときに,“できない”理由が,努力が足りない/やり方が悪いせいなのか,それとも自分の特徴として明らかに向いていないのか,冷静に見極めないといけない.
    • 人が弱点を克服できるのも,すべきなのも,その人の強みとなる特徴の周辺領域だけ.それ以外に費やす努力は,リターンをほとんど生まない.
    • 自分が強めたい能力をもっと強くするために弱点を克服していく,それ以外はキッパリと諦める.
  • 人の力を活用することで問題を解決する術を身につけなくてはならない.
    • プロの世界においては,目的達成に必要な主な能力のすべてを自分一人で賄うのはそもそも無理である.
    • したがって,自分の苦手領域をカバーできる他者の力を借りることは,極めて重要な戦略的手段となる.
  • 人間は深いところで自分の値打ちをわかってくれる人のために本気で力を発揮するもの.

行動を変えたいときのコツ

  • 変わりたいときに,うまく変われるコツとは何か?
    • それは,最初からすぐに変われないことを覚悟して,時間がかかることを織り込んで,変わる努力を継続すること.
    • 自分の目的に好ましい行動を取れる確率を少しずつ上げていく.

未来の君へ

他にもいろんなことがあっただろう?成功体験だけではないはずだ.数々の失敗も,辛いことも,思い出したくないことも,後悔も,いろいろあっただろう.

君だけではない,20年間も生きてきたら,人はさまざまなことを経験している.辛いことや,苦労や,挫折感や,そういうことを多く経験している方が,ストレスに対しての免疫ができている.

今までの1つ1つの苦労や失敗こそが貴重な財産なのだ.そして,これから君が経験する苦労や失敗も全く同じことだ.

むしろ苦労や失敗こそが,自分を磨くための最高の砥石になる.だから挑戦することを恐れるな!君はきっと大丈夫だ!