武器としての決断思考
- 作者:瀧本 哲史
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 新書
はじめに|「武器としての教養」を身につけろ
- リベラルアーツとは,意訳すると「人間を自由にするための学問」.
- 変化が激しい今の時代,これまでの価値観や方法,人生のレールというものは,意味をなさなくなってきている.
- 自分にとって必要な学問は何かと考え,探し,選び取る──そういった行為が,ベーシックなものとならなければならない.
- 若い世代は今後ありとあらゆるジャンルにおいて,自分で考え,自分で決めていかなければならない場面が増えていく.
- 将来がどうなるか,いまや誰も明確には予測できない.
- 自分の人生や家族の将来を見据えながら,ひとつひとつ現時点で最善と思える「意思決定」を行っていかなければならない.
- ディベートとは,客観的に決断するための思考法だと言える.
ガイダンス|なぜ「学ぶ」必要があるのか?
- 本書で重視しているのはただ一点.知識ではなく考え方を学ぶ,ということ.
実学の世界では,知識を持っていても,それがなんらかの判断につながらないのであれば,その知識にあまり価値はありません.
そして,判断につながったとしても,最終的な行動に落とし込めないのであれば,やはりその判断にも価値はないのです.
知識・判断・行動の3つがセットになって,はじめて価値が出てきます.
日頃から,知識を判断,判断を行動につなげる意識を強く持ってください.
- 「こうしたほうがいい」「こうすべきだ」といった提言・提案からもう一歩進んで,具体的な行動に移すところまでいかなければならない.
- 産業構造の変化があまりにも激しいため,せっかく積み重ねてきた知識やスキルがあっという間に過去のものとなり,必要性がなくなってしまう.
- 最先端の技術を持っていたところで,その技術はどんどん更新されていくため,その変化に対応するだけでいっぱいいっぱいになってしまう.
- プロフェッショナルとは,次の2つの条件を持ち合わせた人材:
- 専門的な知識・経験に加えて,横断的な知識・経験を持っている
- それらをもとに,相手のニーズに合ったものを提供できる
- プロフェッショナルは相手側を理解して,相手側の条件に合わせて,トータルなサービスを提供することができる.
- 要は,相手の立場に立って,相手の代わりに考えてあげることができる.
- 歯医者の例で言えば,ただ虫歯を治すのがエキスパート.虫歯にならないように,予防から治療,もっといえば生活習慣の改善まで提案できるのがプロフェッショナル.
結局,世の中には,それぞれの問題に対するエキスパートはたくさんいても,全体を見て判断できるプロフェッショナルはあまりいないのです.
- 「知識ではなく考え方を学ぶ」というのは,言い換えると,「答えではなく,答えを出す方法を学ぶ」とも言える.
- これからの時代,意思決定の方法を学ぶことは最大のリスクヘッジになる.
- いきなりレールがなくなったり,いままでのやり方が通用しなくなったりしても,うまく意思決定ができれば,個人の力で対応することができる.
- これからの時代における最大のリスクは,「変化に対応できないこと」.
1時間目|「議論」はなんのためにあるのか?
- 基本的に正しいことはなんだかよくわからないから,議論を通して「いまの最善解」を考えていこうよ,ということ.
- 議論によって意識的に違う視点,複数の視点を持ち込み,ぶつけ合うことで,「いまの最善解」を出すことができるようになる.
- ゆがみやすい個人の考えをぶつけ合うことで,修正し,より優れたものに昇華させていく.それが重要.
- 自分に都合の悪い意見や,自分の価値観からは出てこない意見もすべて視野に入れたうえで,頭の中で賛否両論をぶつけ合って,最善解を決める(決断する)ことができる.
- 結論が出ないものは,雑談であって議論ではない.
- 結論を出そうと集中することで,なぜ結論が出ないかがわかる.
- 良い議論をしようと思ったら,基本的にはちゃんと準備をする必要がある.
- 8割の努力を準備につぎこむくらいの意気込みでのぞむ.
究極の正解みたいなものを出そうとすると,いつまで経っても結論なんて出ないから,とりあえずいろいろ考えて,いまの最善解を出してみる.
そして,実際に行動してみて,うまくいけばそれでいいし,うまくいかなかったらやり直す.もっと良い最善解を考えてみる──.
2時間目|漠然とした問題を「具体的に」考える
- 論題は,「具体的な行動を取るべきか,否か」にする.
- 具体的な行動で迷うとき,ディベート思考は本当に役に立つ.
- 行動はやるかやらないかの二択なので,思考が拡散せず,つきつめていけば必ず結論にたどりつけるから.
- 具体的な行動で迷うとき,ディベート思考は本当に役に立つ.
- ひとつの大きな問題は,最低でも2つか3つの具体的な論題(〇〇すべきか,否か)に落とし込むことができる.
- 例:「サッカーの日本代表がワールドカップで活躍するには何をすべきか?」
- 監督強化
- 選手育成
- 協会運営
- 例:「サッカーの日本代表がワールドカップで活躍するには何をすべきか?」
3時間目|どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
- すべてはメリットとデメリットを比較して決める.
- 相手を説得するときは,相手が何を重視しているかを理解して,それに合った重要性を提示することが必要となってくる.
- デメリットを考えるときには,論題の行動を実行したらどんな悪いことが起こりそうか,資料や想像力を駆使して,いろいろと考えてみなければならない.
4時間目|反論は,「深く考える」ために必要なもの
- 反論は,メリットとデメリットが本当に正しいかどうかを検証するために必要になってくる手順.
- あくまで否定しているのは「相手の意見や主張」であり,「相手の人格」ではない.
- 反論というのは,それが正しいかどうかをチェックすることに他ならない.
- いかに,モレもダブりもないような,より正しい意見を構築するか?そのためのツッコミ.
5時間目|議論における「正しさ」とは何か
- 「正しい主張」の3条件:
- 主張に根拠がある
- 根拠が反論にさらされている
- 根拠が反論に耐えた
- 反論について考えるときに重要なのが,「裏をとる」のではなく「逆をとる」ということ.
- 賛成の意見と反対の意見を適当にばらまいて,議論の収拾をつかなくし,現状を存続させる方向にもっていくのは,情報コントロールの基本中の基本.
- 相手の主張の推論の部分は,相手も無意識に言っていることが多いので,そこに対して重点的にツッコミを入れると効果は絶大.
6時間目|武器としての「情報収集術」
- 証拠資料とは,ディベートにおいて自分の主張を証明,補強するために使われる資料・情報のことを指す.
- 専門家の意見やマスメディアの報道,統計データ,海外事例,インタビュー内容などがそれに該当する.
- 原典にあたることを習慣にすると,他の人より一段上の意見を言えるようになる.
- どんな人だろうと,その人の立場から発言しているため,実際の本音とは違っている場合が多い.
- 自分が信じたいこと,他人に信じさせたいことばかりを言うことになる.
- 知らないフリをして,話全体を自分の知りたい方向性に持っていくのが,優秀なディベーターの条件.
- 大学受験までの勉強というのは,先生が言っていることや教科書に書かれていることを疑わず,そのまま暗記して,テストで再現できれば勝ちというものだった.
- 大学以降の人生では,情報に接したら,それが本当かどうかをまず疑うべき.
- 判断を左右し,行動を変える情報や知識こそ,最重要.
7時間目|「決断する」ということ
- いかに議論を補強・改善していくか,より良いものにしていくかがポイントになってくる.
- 議論の精度を上げていく.もうこれ以上,強くはならないというくらいにまで理論を進化させていく.
- 議論の精度を上げていくために,なるべく時間と手間を使って,漏れがない思考を心がける.
- 最終的な決断は,「質×量×確率」で考える.
- ディベート思考とは,客観を経て,主観で決断する方法.
- 最終的にどのメリット,デメリットを優先するか,重要視するかという「決断」には,正解がない.
- 私たちはよく考えるように努力しなければならない.そこに,道徳の本質がある.