粒子ベースレンダリングによる祗園祭・船鉾の半透明可視化
論文
1.はじめに
- 本研究は,レーザ計測で得られた3次元点群データに対して,「粒子ベースレンダリング」を適用することで,高品質かつ分かりやすく半透明可視化することを目指している.
- 従来の半透明可視化は,(1)点を間引いてポリゴン化,(2)ポリゴンを視線方向にソートし,奥から順に半透明に描く,という手順を踏む.しかし,(1)では点群データの一部を捨てることになり,(2)では生成ポリゴンに交差や接触がある場合に不正確な可視化が頻出する.一方,提案手法の粒子ベースレンダリングでは,点群データを全てそのまま可視化に利用可能であり,また,ポリゴンや点群のソート処理は不要である.
3.可視化手法
3.1 ポリゴン化
- Rapidform XOSを用いて,計測点群をもとに自動的にポリゴン面を生成.
- ポリゴン化が成功しないモデルがあった.
- 原因は,黒色の部分がレーザ光を吸収したと考えられる.
- 計測点群データをポリゴン化して形状モデリングを行う手法は,複雑な形状の場合には困難であることがわかった.
3.2 ポイントベーストモデリング
- 可視化するのに十分な点群が配置されていれば,ポリゴン化は不要.
- 点群数が多いほど立体性が欠け,また複雑な構造も点が重複することによって見えなくなっている.
- 通常の計測点群データでは,法線データが取得できないため,陰影付けも行えない.
4.粒子ベースレンダリング
- 粒子ベースレンダリングにおける可視化手順は以下の3ステップ.
- 可視化する形状平面で一様分布する粒子群を発生または取得する.
- 粒子群を,複数のグループにランダム分割し,個々のグループの粒子を,ピクセル単位の陰点処理を行いつつスクリーンに投影し,画像を生成する.
- 全てのグループの画像をアンサンブル平均し,最終的なピクセル輝度を決定する.
- この粒子ベースレンダリングを用いることで,グループによってデプスの浅い粒子も深い粒子(点群)も取り込まれ,結果として半透明効果が得られる.
- グループの数をリピートレベルと呼ぶ.リピートレベルが大きくなるほど半透明効果が高まり,これによって点の重複のため見えなかった複雑な構造が見えるようになる.
- アンサンブル平均...ある時点の値に対しての平均.時間平均と区別.
- Zバッファ法...画面上の全ピクセルにz座標を持たせ,描画する際に1点1点奥行きをチェックする.
6.点群データの着色
7.結果
- 立体的に,かつ半透明効果によって内部構造を明確に可視化することができた.
- ポリゴン化とは違い,取得点群を破棄していないため,計測データに忠実な可視化結果が得られた.
- リピートレベルを上げることで,半透明効果が高まり,これによってエッジが強調され,構造がより見やすくなる.