イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質
はじめに
- 本書のテーマは,「意味あるアウトプットを一定期間内に生み出す必要がある人にとって,本当に考えなければならないことは何か.」
- 「何に答えを出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギ.
- ビジネス・研究ですべきは「考える」ことであり,あくまで「答えが出る」という前提に立っていなければならない.
序章 この本の考え方
- 「問題を解く」より「問題を見極める」
- 「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
- 「知れば知るほど知恵が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」
- 「1つひとつを速くやる」より「やることを削る」
- 「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
- 生産性 = アウトプット/インプット = 成果/かけた労力・時間
- 「イシュー度」とは「自分の置かれた局面で,この問題に答えを出す必要性の高さ」
- 「解の質」とは「そのイシューに対して,どこまで明確に答えを出せているかの度合い」
- 「イシュー度」を上げてから,「解の質」を上げる.(逆はNG)
- 「自分が思いついた問題の中で,本当に今答えを出す価値のあるものは何でしょうか」と指導教官に聞く.
- 「あれもこれも」とがむしゃらにやっても成功はできない.「イシュー度」の高い問題に絞り込む.
- 脳は脳自身が,「意味がある」と思うことしか認知できない.そしてその「意味がある」と思うかどうかは,「そのようなことが意味をもつ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まる.
- 現在分かっていること,最近の発見とその意味合いなど,対峙する問題を深いコンテキストに沿って理解できるか,それが最初の勝負どころとなる.
第1章 イシュードリブン
「解く」前に「見極める」
- イシューの見極めからはじめる.
- 「そもそもこれは何に答えを出すプロジェクトだったのか」ということを整理する.
- イシューの見極めを1人でやることはお薦めできない.「それは本当に受け手にとってインパクトがあるのか」ということは,その領域についてよほど詳しくない限りわからないから.また,自分の言いたいことを証明するために,どのような分析や検証が必要になるかもわからない.
- 「知恵袋的な人」をもてるかどうかが,突出した人とそうでない人の顕著な差を生む.
- 「〇〇に対して,〇〇というアプローチをすれば,〇〇になるのではないか」というように,具体的な仮説を立てる.
- イシューを言葉に落とす.
- counterintuitiveを探す.「本当はそうなのか分かっていないのに,常識的にそうだろうと決めつけているもの」はないか?
- 一般的に信じられている信念や前提を突き崩せないかを常に考える.
- 手をつけないほうがよい問題(答えが出せないもの)も大量にある.そこに時間を割かない.
- 「現在ある手法・やり方の工夫で,その問いに求めるレベルの答えを出せるのか」
- 「今,本当に答えを出すべき問題であり,かつ答えを出せる問題=イシュー」は,僕らが問題だと思う対象全体の1%に過ぎない.
- 現場の人の経験から生まれた知恵を聞き出してくる.読み物をどれだけ読んでもわからない勘どころを聞き,さらにその人がどのような問題意識をもっているかを聞いておく.
- 目でかたちを見ることで,急に本質的なポイントが顕在化することがある.
第2章 仮説ドリブン①
イシューを分解し,ストーリーラインを組み立てる
- 本質的に意味のある固まりで,イシューを分解する.
- 例えば卵の場合であれば,無意味にスライスして分解するのではなく,黄身と白身に分解する.
- 「最後に何がほしいのか」から考え,そこから必要となる要素を何度も仮想的にシミュレートすることが,ダブリもモレもないイシューの分解の基本となる.
- イシューを分解することの2つの効用.
1. 課題の全体像が見えやすくなる
2. サブイシューのうち,取り組む優先順位の高いものが見えやすくなる - 人に何かを理解してもらおうとすれば,必ず「ストーリー」が必要になる.
- 漠然としたアイデアしか浮かばない人は,主語と動詞を明確にし,一体自分は何を言おうとしてるのかを箇条書きで明確にする「イシューと仮説出し」を日々行うべき.
- 「空・雨・傘」で議論する場合,多くは,「雨」の部分で見えてきた課題の深掘りがどこまでできるかが勝負どころ.
第3章 仮説ドリブン②
ストーリーを絵コンテにする
- 分析とは,フェアに対象同士を比較し,その違いを見ること.
- どのような分野であっても,多くのプロを目指す修行のかなりの部分はこれら既存の手法,技の修得に費やされる.(武器を揃え,ツールを習得する)
- 理解するとは情報をつなぐこと.つまり,既知の情報とつなぎようのない情報を提供しても,相手は理解のしようがない.
- 受け手の既知の情報と新しい情報をつなげる工夫こそが大切である.
第4章 アウトプットドリブン
実際の分析を進める
- 限られた時間で,いかに本当に価値のあるアウトプットを効率的に生み出すか.
- どれだけ価値のあるイシュー度の高い活動に絞り込み,そのアウトプットの質をどこまで高めることができるか.
- Think ahead of the problem.(できる限り前倒しで問題について考えておくこと)
- 固執しない.一つの方法がうまく行かなければ,さっと他の方法に切り替える.
- 「もっている手札の数」「自分の技となっている手法の豊かさ」がバリューを生み出す人としての資質に直接的に関わる.
- 仕事や研究を始めた最初の5年や10年はなるべく広い経験とスキルの育成に励むこと.
第5章 メッセージドリブン
「伝えるもの」をまとめる
- 論文やプレゼンは,第1に聞き手・読み手と自分の知識ギャップを埋めるためにある.
- 受け手に,
1. 意味のある課題を扱っていることを理解してもらう.
2. 最終的なメッセージを理解してもらう.
3. メッセージに納得して行動してもらう. - 「本当にこれはおもしろい」「本当にこれは大切だ」というイシューだけがあればよい.複雑さは一切いらない.意識が散るようなもの,曖昧なものはすべて排除する.無駄を削ぎ落とし,流れも構造も明確にする.
おわりに 「毎日の小さな成功」から始めよう
- 「与えられた問題にどう対処するのか」ではなく,「本当の問題の見極めから入らなければダメ」
- 毎日の研究・仕事の中で,「この作業って本当に意味があるのか?」と思ったら一旦立ち止まって,「それは本当にイシューなのか?」と問いかける.
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