確率的レンダリングに基づく大規模ポイントクラウドの高精細半透明可視化(最先端研究)
論文
1. はじめに
- 大規模ポイントクラウドの特徴は,データの巨大さだけでなく,データが記述する複雑さ.
- 複雑な形状を人間が解析し利用するためには,透視すなわち半透明可視化が極めて有効である.
- レーザ計測で得られたポイントクラウドは計測対象の表面を記述するものであるから,平面または曲面(の集合)を記述するものである.したがって,ポイントクラウド内の各点を頂点とするポリゴンメッシュを作成し,各ポリゴンを半透明化して描くことで,半透明可視化を行うことが多い.
- デプス・ソートの計算量が多いため,大規模ポイントクラウドでは,従来手法では,対話的な速度での半透明可視化は現実的ではない.
- 最近の研究で,ポイントクラウドを構成する各点をそのまま基本形状として用いて確率的ポイントレンダリングを適用することにより,高速・高精細な半透明可視化が可能になることを示した.(デプス・ソート不要)
2. 確率的ポイントレンダリングの概要
2.1 アルゴリズム
- 確率的ポイントレンダリングは,問題のデプス・ソートを,等価な確率的期待値計算に置き換えることで不要にする.
- 確率的ポイントレンダリングは4つのステップからなる.
- ステップ1<粒子生成>:形状が平面または曲面の場合には,その上に一様な粒子密度分布で粒子群を生成する.
- ステップ2<粒子群分割>:ステップ1で用意した粒子群を複数の部分粒子群にランダム分割する.以降,変数$L_R$で表す.各部分粒子群は,統計的に独立かつ同一な粒子密度分布であると仮定する.
- ステップ3<粒子投影>:ステップ2で生成した各部分粒子群に対して,それぞれ独立に,構成粒子を画像平面に投影し,$L_R$枚の中間画像を生成することである.
- ステップ4<画像平均>:ステップ3で得られた$L_R$枚の中間画像を,対応するピクセル毎に平均して,平均画像を生成することである.この平均画像における各ピクセルの色は,視点から様々な距離(デプス)にある粒子の色と背景色の期待値となる.つまり,半透明可視化.
- 確率的ポイントレンダリングでは,平面,曲面,ボリュームなどを可視化する場合に,それぞれを一旦粒子データに変換する.粒子データは粒子間の接続情報を持たいないため簡単に統合でき,統合された粒子データを可視化するだけで融合可視化を実現できる.
2.2 不透明度制御
- 確率的ポイントレンダリングでは,不透明度を粒子数(粒子密度)で制御する.
- 曲面上に一様な粒子群を生成した上で,曲面上に,画像平面に平行な任意の局所領域を定義する.
- 局所領域の面積を$S$,粒子の断面積を$s$,ステップ1で局所領域に生成される粒子数を$n$とすれば,局所領域内に以下の数の粒子を生成すれば良いことを、二項分布に基づく確率論を用いて証明できる.\begin{align}n = \frac{log{(1-α)}}{log{(1-\frac{s}{S})}}L_R\end{align}
粒子密度は曲面全域で同じであるから,局所領域で望む不透明度を実現できれば,曲面全体でも同じ不透明度が実現される.
3. ポイントクラウドデータの半透明可視化
- 与えられたポイントクラウドでは,粒子数が固定となるので,式$(1)$にしたがって,望む不透明度に対応する粒子数となるように,粒子の増殖または削減を行う必要がある.(ステップ1)
- 増殖・削減を行って得られた新たな粒子群を,$L_R$個の統計的に独立なグループにランダム分割する.(ステップ2)
- 望む不透明度となるように粒子数$n$を調整した後に,$L_R$個の粒子グループにランダム分割する.
5. おわりに
- ポイントレンダリングは,従来手法のように描画の基本形状を視線方向にデプス・ソートする必要がないため,正確で高速な可視化が可能である.
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