7つの習慣

はじめに

私はこれまでに多くの教訓を学んできたが,その中でも特に興味深いのは,

「自分の最高の望みを達成し,最大の困難を克服したいならば,自分が求める結果を支配している原則や自然の法則を知り,それを適用する」

という教訓である.どのように原則を適用するかは,個々人の強みや才能,独創性などによって大きく変わってくるだろう.

しかし突き詰めれば,いかなる成功も,その成功に結びついている原則に従って行動することによって手にできるのである.

理解されたいという渇望

あなたが相手に影響を与えられるのは,相手があなたに影響を与えていると感じたときからである.

自分が理解されていると感じたとき,あなたが本心から真剣に話を聴いてくれたと感じたとき,あなたが心を開いてくれたと相手が感じたときに初めて,その人に影響を与えられるようになるのである.

ところがほとんどの人は,感情的な未熟さゆえ他者の話を真剣に聴くことができず,自分の考えを伝えることばかり考え,相手を理解することに神経を集中しようとしない.


第一部|パラダイムと原則

インサイド・アウト

  • 信頼という土台がなければ,成功は長続きしない.基礎となる人格の良さがあって初めて,テクニックも生きてくる.

第二の偉大さ(才能に対する社会的評価)に恵まれていても,第一の偉大さ(優れた人格を持つこと)を欠いている人は多いものである.

人格こそが第一の偉大さであり,社会的偉大さはその次にくる第二の偉大さである.

突き詰めれば,あるがままの自分,人格が,どんな言動よりもはるかに雄弁なのである.誰にでも,人格をよく知っているからという理由で100%信頼している人がいるだろう.

  • パラダイム
    • 平たく言えば物事の「見方」であり,物事をどう認識し,理解し,解釈しているか.
    • 何らかの現実を表す理論,説明,あるいはモデルのこと.

家庭,学校,教会,職場,友人関係,職業団体,そして個性主義などの社会通念等々,私たちの生活には多くの影響力が作用している.

そのすべてが無意識のうちに私たちに影響を与え,私たちの頭の中の地図,ものの見方,すなわちパラダイムを形成しているのである.

  • 大きな変化,劇的な変化を望むのなら,土台となるパラダイムを変えなくてはならない.

原則は手法ではない.手法とは具体的な活動,行動である.ある状況で使えた手法が,別の状況にも通用するとは限らない.

手法は個々の状況に応じて使い分けるものだが,原則は,あらゆる状況に普遍的に応用できる深い基本の真理である.

たとえば企業がこれらの真理を組織内に習慣として根づかせれば,社員は状況に応じて対処する多種多様な手法を自分で考え出すことができる.

  • どんな分野にせよ,現在の能力レベルが10段階の2であるなら,5に到達するためにはまず3になる努力をしなければならない.
    • 学習の第一歩は,自分の無知を認めることである.

7つの習慣」とは,この新しいレベルの思考である.

原則を中心に据え,人格を土台とし,インサイド・アウト(内から外へ)のアプローチによって,個人の成長,効果的な人間関係を実現しようという思考である.

インサイド・アウトとは,一言で言えば,自分自身の内面から始めるという意味である.内面のもっとも奥深くにあるパラダイム,人格,動機を見つめることから始めるのである.

自分の内面にある原則に気づき,引き出し,生かせば,どんなに困難な問題でも解決できる.そのためには新しい,より深いレベルの考え方「インサイド・アウト」へとパラダイムシフトすることが必要である.

7つの習慣とは

人格は繰り返し行うことの集大成である.それ故,秀でるためには,一度の行動ではなく習慣が必要である.

──アリストテレス

  • 本書における「習慣」の定義:
    • 知識,スキル,意欲の三つが交わる部分.

まず知識は,何をするのか,なぜそれをするのかという問いに答える理論的なパラダイムである.

スキルはどうやってするのかを示し,意欲は動機であり,それをしたいという気持ちを示す.

人生において効果的な習慣を身につけるには,これら三つすべてが機能しなけれならないのである.

  • 肉体的に他者と力を合わせることができる人は,自分の力で結果を出せるのは言うまでもないが,他者と協力すれば,自分一人で出す最高の結果をはるかに上回る結果を出せることを知っている.
  • 相互依存の段階に達した人は,他者と深く有意義な関係を築き,他の人々が持つ莫大な能力と可能性を生かすことができる.


第二部|私的成功

第1の習慣|主体的である

  • 私たちは自分の身に起こったことで傷つくのではない.その出来事に対する自分の反応によって傷つくのである.
    • 人生で体験することにどう反応するかが最も大切なのである.

多くの人は自分からは動かずに誰かが手を差し伸べてくれるのを待っている.

しかし良い仕事に就けるのは,自分から主体的に動く人だ.

その人自身が問題の解決策となる.正しい原則に従って,望む仕事を得るために必要なものは端から実行する人だ.

  • 率先力を発揮する人としない人の違いは,天と地ほどの開きがある.
    • 自ら責任を引き受けて行動を起こすのか,それとも周りから動かされるのか,どちらの道を選ぶかによって,成長や成功の機会も大きく変わる.
  • 主体的な人は,賢く,価値観に従って行動し,現実を直視し,何が必要かを理解する.

主体的な人の変化のパラダイムは,「インサイド・アウト(内から外へ)」である.

自分自身が変わる,自分の内面にあるものを変えることで,外にあるものを良くしていくという考え方だ.

主体的な人は,もっと才能豊かになれる,もっと勤勉になれる,もっとクリエイティブになれる,もっと人に対して協力的になれる,というように考える.

本当に状況を良くしたいのならば,自分が直接コントロールできること──自分自身──に働きかけるしかない.

自分にはコントロールできないことは受け入れ,直接的か間接的にコントロールできることに努力を傾けるのだ.

  • 過ちを犯したときにどう反応するかが,次の機会に影響する.
    • 過ちをすぐに認めて正すことはとても大切なことであり,悪影響を残さず,より一層の力を得ることができる.

 ここで,あなたが今すぐにでも自分の人生の主導権を握るための方法を二つ提案しよう.一つは何かを約束して,それを守ること.もう一つは,目標を立て,それを達成するために努力することだ.どんなに小さな約束や目標であっても,それを実行することで,自分の内面に誠実さが芽生え,育ち,自制心を自覚できるようになる.そして自分自身の人生に対する責任を引き受ける勇気と強さを得られる.自分に,あるいは他者に約束をし,それを守ることによって,少しずつ,その場の気分よりも自尊心のほうが重みを増していく.

 自分自身に約束し,それを守る能力は,人の効果性を高める基本の習慣を身につけるために不可欠である.知識・スキル・意欲は,私たち自身が直接コントロールできるものである.バランスをとるために,三つのうちどこからでも取り組むことができる.そしてこの三つが重なる部分が大きくなっていけば,習慣の土台となっている原則を自分の内面に深く根づかせ,バランスのとれた効果的な生き方ができるような強い人格を築くことができる.

  • 突き詰めて言えば,自分がどういう状況に置かれるかは,自分自身の責任なのである.

第2の習慣|終わりを思い描くことから始める

終わりを思い描くことから始めるというのは,目的地をはっきりさせてから一歩を踏み出すことである.

目的地がわかれば,現在いる場所のこともわかるから,正しい方向へ進んでいくことができる.

自分にとって本当に大切なものを知り,それを頭の中に植えつけ,そのイメージどおりになるように日々生活していれば,私たちの人生はまるで違ったものになるはずだ.

  • すべてのものは二度つくられるという原則:
    • すべてのものは,まず頭の中で創造され,次に実際にかたちあるものとして創造される.
    • 第一の創造は知的創造,そして第二の創造は物的創造である.

 第一の創造によって自分の人生を自分の手で描く.それができれば,第二の創造で主体的なあなたができる.しかし第一の創造を他者に委ねてしまったら,あなたは他者によってつくられることになる.

 人間だけに授けられている自覚,想像,良心という能力を働かせれば,第一の層を創造を自分で行い,自分の人生の脚本を自分で書くことができる.言い換えれば,第1の習慣が言っているのは「あなたは創造主である」であり,第2の習慣は「第一の創造をする」習慣なのである.

 第2の習慣は,自分の人生に自らがリーダーシップを発揮すること,つまりパーソナル・リーダーシップの原則に基づいている.リーダーシップは第一の創造である.リーダーシップとマネジメントは違う.マネジメントは第二の創造であり,まずは,リーダーシップがなくてはならない.

 マネジメントはボトムライン(最終的な結果)にフォーカスし,目標を達成するための手段を考える.それに対してリーダーシップはトップライン(目標)にフォーカスし,何を達成したいのかを考える.

  • 私たちに必要なのは,はっきりとしたビジョン,明確な目的地である.
    • そしてその目的地に到達するためには,ロードマップよりもコンパス(方向を示す原則)が要る.
  • 個人の生活ではよりリーダーシップが不足している.
    • 自分自身の価値観を明確にする前に,能率よく自己管理や目標達成に取り組んでしまう.

自覚を育てていくと,多くの人は自分が手にしている脚本の欠点に気づく.

まったく無意味な習慣,人生における真の価値とは相容れない習慣が深く根づいていたことを思い知らされる.

第2の習慣が教えるのは,そのような脚本を持ち続ける必要はないということだ.

効果的な脚本とは,正しい原則から生まれる自分自身の価値観と一致する脚本である.

  • 個人の責任あるいは主体性は,第一の創造の基礎となる.

第1の習慣は「あなたがプログラマーであり,自分には責任があるのだということを受け入れない限り,プログラムを書く努力はできないだろう」と言っているのであり,第2の習慣は「あなたがプログラムを書きなさい」と言っているのだ.

  • 私たちは,主体性を持つことによって初めて,どんな人間になりたいのか,人生で何をしたいのかを表現できるようになる.

 目標があればこそ,自分のやることに意味と目的ができる.そしてやがて目標に従って日々の生活を送れるようになったら,あなたは主体的な人間であり,自分の人生の責任を引き受け,人生のミッション・ステートメントどおりの生き方が日々できるようになるはずだ.

 あなたがまだミッション・ステートメントを持っていないなら,これを機会に今から取り組んでみよう.あなたの人生で果たすべき役割を明確にし,それぞれの役割で達成したいと思う結果をいくつか書いておくだけでも,人生全体を俯瞰でき,人生の方向性が見えてくるはずだ.

第3の習慣|最優先事項を優先する

  • 第3の習慣は,第1の習慣と第2の習慣で身につけたことを実践し,個人的な結果を得る習慣である.

 第3の習慣は,第二の創造,すなわち知的創造で思い描いたビジョンをかたちあるものにする物的創造の習慣である.第1の習慣と第2の習慣を日々の生活で実践する習慣であり,この最初の二つの習慣から自然と導き出される結果である.原則中心の生き方をするために意思を発揮し,一日の始まりから終りまで,その瞬間瞬間たゆまず実行していく習慣である.

 マネジメントとリーダーシップはまるで違うものであることを思い出してほしい.リーダーシップは基本的には右脳の精力的な活動である.技術というより芸術であり,哲学を土台としたものである.マネジメントとは,左脳にある効果的な自己管理の側面を使い,作業を細かい部分に分け,分析し,順序だて,具体的に応用し,時系列で物事を取り扱っていく.私自身の効果性を最大化するために右脳でリーダーシップ,左脳でマネジメントと考えている.

  • 意思とは,決断し選択する能力であり,決めたことに従って行動する能力である.
    • 他者や周りの状況の影響に動かされるのではなく,自分の考えで行動し,自覚,想像,良心を使って書いたプログラムを実行する能力である.

 効果的なマネジメントとは,最優先事項を優先することである.リーダーシップの仕事は,「優先すべきこと」は何かを決めることであり,マネジメントは,その大切にすべきことを日々の生活の中で優先して行えるようにすることだ.自分を律して実行することがマネジメントである.

 規律とは,自分を律することだ.自分を律するというのは,哲学に従い,正しい原則,自分の価値観,もっとも重要な目的,より上位の目標に従って,あるいはその目標を象徴する人物を手本にして行動することだ.

 要するに,自分を効果的にマネジメントできている人は,自分の内面にある規律に従い,意思を働かせて行動している.内面の奥深くにある価値観とその源に従い,自分を律している.感情や衝動,気分に流されず,自分の価値観を優先できる意思と誠実さを持っているのである.

  • 成功者に共通する要素:
    • 努力や幸運,人間関係のテクニックは重要ではあるが決定的な成功要因ではない.
    • これらの要因を超越する一つの要因がある.それがまさに第3の習慣「最優先事項を優先する」のエッセンスである.

「成功者たちの共通点は,成功していない人たちの嫌がることを実行に移す習慣を身につけているということである.彼らにしてみても,必ずしも好きでそれを行っているわけではないが,自らの嫌だという感情をその目的意識の強さに服従させているのだ」

 感情を抑え,最優先事項を優先するには,目的意識と使命感が要る.第2の習慣で身につけた明確な方向感覚と価値観が要る.そして,優先する必要のない物事に「ノー」とはっきり言えるためには,あなたの中に燃えるような「イエス」がなければならない.何よりも大切にすべきことを自覚していなければならないのだ.さらに,やりたくないと思っても実行する意志の力,その時どきの衝動や欲望ではなく,自分の価値観に従って行動する力も必要だ.それは,あなたが主体的な人間として行う第一の創造を誠実に実行し,かたちにしていく力なのである.

  • 時間管理の本質を一言で言うなら「優先順位をつけ,それを実行する」に尽きる.

緊急ではないが重要なことをするには,率先力と主体性が要る.機会をとらえたり,物事を実現させたりするには,能動的に動くことが必要なのだ.第2の習慣が身についておらず,何が重要なのか,人生において追求する結果をはっきりと思い描けていない人は,緊急の用事ばかりに簡単に反応し,人生の目的からそれていってしまう.

  • あなたの時間の使い方は,あなたが自分の時間や優先すべきことをどうとらえているかで決まる.
  • 大切なことは,スケジュールに優先順位をつけることではなく,優先すべきことをスケジュールにすること.

第1の習慣が「あなたがプログラマーである」,第2の習慣が「あなたがプログラムを書く」ことだとすれば,第3の習慣は「あなたがプログラムを実行する」あるいは「プログラムどおりに生きる」ことである.

プログラムの通りに生きるには,意思,自制心,誠実さ,決意が要る.

  • デリゲーションできる能力の有無が,マネージャーとして働くか,もしくは一スタッフとして働くかを区別する決定的な違いなのである.
    • 効果的なマネジメントの鍵を握っているのは,デリゲーションなのである.

確かな技術や知識を持っている人に仕事を任せれば,その間にあなたは自分にとってもっと重要な活動にエネルギーを注ぐことができる.個人であれ組織であれ,デリゲーションこそが成長をもたらすと言っていい.

  • 信頼ほど人にやる気を起こさせるものはない.
    • 信頼されていると思えば,人は自分の最高の力を発揮する.だが,それには時間と忍耐が要る.
    • 信頼に応えられるレベルまで能力を引き上げる訓練も必要.


第三部|公的成功

相互依存のパラダイム

  • 根のない木に実はつかない.
    • これは原則であり,ものには順序がある.
    • 私的成功は,公的成功に先立つ.自分を律し,自制することが,他者との良好な関係を築く土台になる.

人間関係を築くときにもっとも大切なのは,あなたが何を言うか,どう行動するかではない.あなたがどういう人間かということだ.言葉や行動が,あなたの内面の中心(人格主義)からではなく,表面だけの人間関係のテクニック(個性主義)から生まれていたら,相手はすぐにその二面性を感じとる.安易なテクニックでは,効果的な相互依存に必要な土台を築き維持することなど絶対にできないのである.

  • 人間関係に応急処置は効かない.
    • 関係を築くこと,修復することは,長い時間をかけて人間関係に投資することなのだ.
  • 信頼口座の残高を増やす六つの預け入れ:
    1. 相手を理解する
    2. 小さなことを気遣う
    3. 約束を守る
    4. 期待を明確にする
    5. 誠実さを示す
    6. 引き出してしまったときには心から謝る

第4の習慣|Win-Winを考える

  • Win-Winは,すべての人間関係において,必ずお互いの利益になる結果を見つけようとする考え方と姿勢である.
    • Win-Winの根本には,全員が満足できる方法は十分にあるという考え方がある.
    • 誰かが勝者になったからといって,そのために他者が犠牲になって敗者になる必要などない.全員が勝者になれると考えるのである.

 Win-Winの人間関係の本質は信頼である.信頼がなければ,できるのは妥協だ.心を開いてお互いに学ぶことも,気持ちを理解し合うことも,本当の創造力を発揮することもできない.

 しかし,信頼口座にたっぷり預け入れしてあれば,お互いに相手を信頼し,尊重しているから,相手がどんな人間か探る必要もないし,相手の性格や立場にとらわれず,すぐに目の前の問題そのものに意識を向けることができる.

  • あなたの誠意,主体性,Win-Winを目指す決意が強くなるほど,相手に与える影響力も大きくなる.
  • Win-Win実行協定では,次の五つの要素をはっきりと決めることが大切:
    1. 望む成果
      • いつまでに,何を達成するのか
    2. ガイドライン
      • 望む結果を達成するときに守るべき基準
    3. リソース
      • 望む結果を達成するために使える人員,資金,技術,組織のサポート
    4. アカウンタビリティ
      • 結果を評価する基準,評価する時期
    5. 評価の結果
      • 達成度合い,貢献度合い,評価の結果としてどうなるのか

第5の習慣|まず理解に徹し、そして理解される

 私がこれまでに人間関係について学んだもっとも重要な原則を一言で言うなら,「まず理解に徹し,そして理解される」ということだ.この原則が効果的な人間関係におけるコミュニケーションの鍵なのである.

 相手に自分をわかってもらえるかどうかは,あなたの日頃の行い次第である.あなた自身が模範になっているかどうかだ.常日頃の行いは,あなたが本当はどのような人間なのか,つまりあなたの人格から自然と流れ出てくるものである.実際にあなたと接して相手がどう感じるか,それがすべてである.

 相手が心を開き信頼してくれるような人格を土台にして,相手に共感して話を聴くスキルを積み上げていかなくてはならない.心と心の交流を始めるために,まずは信頼口座を開き,そこにたっぷりと預け入れをしなければならないのである.

  • 共感による傾聴とは,まず相手を理解しようと聴くことであり,相手の身になって聴くことである.
    • 相手を理解しよう,本当に理解したいという気持ちで聴くことである.
  • 正しい判断をするための鍵は,まず理解することである.
    • 最初に判断してしまうと,その人をきちんと理解することは決してできない.

 相手と同じ視点に立って,相手が見ているのと同じ世界を見られるようになるには,人格を磨き,本当に理解したいという純粋な気持ちになり,相手との高い信頼残高,共感による傾聴のスキルを育てることが必要である.

 洞察力があり,共感して話を聴ける人は,相手の心の奥底で何が起きているかをいち早く察し,相手を受け入れ,理解してあげることができる.

  • まず理解に徹する.
    • 問題が起こる前に,評価したり処方したりする前に,自分の考えを主張する前に,まず理解するよう努力する.
    • それは,人と人とが力を合わせる相互依存に必要不可欠な習慣である.

第6の習慣|シナジーを創り出す

  • シナジーの本質は,お互いの違いを認め,尊重し,自分の強みを伸ばし,弱いところを補うことである.

 自分の本当の姿を見せ,自信を失った経験も含めて自分のことを率直に話すほど,それを聴いている人たちは,自分の経験を正直に話しても大丈夫なのだという気持ちになる.するとあなたの正直さが相手の精神を養い,そこに真の創造的な共感が生まれ,新たな洞察や学びがもたらされる.こうして次第に気持ちが高揚していき,冒険心が刺激されて,コミュニケーションのプロセスはシナジーへと向かっていく.

 高い信頼口座の残高,Win-Winを考える姿勢,まず相手を理解しようとする努力,これらの要素があいまって,シナジーを創り出す理想的な環境ができあがる.

  • 個々人の違いを尊重できるのは,自分とは違うものを持つ他者と接することで,自分の知識が深まり,現実をもっと正確に理解できるようになるとわかっているから.
    • 自分の経験したことしか手元になければ,データ不足であることは明らかである.

お互いのものの見方の違いを尊重しなければ,また,お互いを尊重し合い,どちらの見方も正しいのかもしれないと思わなければ,自分の条件づけの中にずっととどまることになる.人生は「あれかこれか」の二者択一で決められるわけではない,答えは白か黒のどちらかだけではない,必ず第3の案があるはずだと思えない限り,自分だけの解釈の限界を超えることはできないのである.


第四部|再新再生

第7の習慣|刃を研ぐ

「刃を研ぐ」ことは,自分の人生に対してできる最大の投資である.自分自身に投資することだ.人生に立ち向かうとき,あるいは何かに貢献しようとするときに使える道具は,自分自身しかない.自分という道具に投資することが「刃を研ぐ」習慣なのである.自分自身を道具にして成果を出し,効果的な人生を生きるためには,定期的に四つの側面(経済性,処遇,育成や登用,組織の貢献・奉仕)すべての刃を研ぐ時間をつくらなければならない.

  • 「自分が人のためになっていると思える限り,仕事はうまくいく.自分のことしか考えずにやっていると,うまくいかなくなる.これは万有引力と同じくらいに確かな法則なのだ」
  • 自分の力を生かせると思う分野で他者の幸福のために貢献する.

あなたが主体的に行動するほど(第1の習慣),自分の人生を自分で導くパーソナル・リーダーシップ(第2の習慣)と自分を律するパーソナル・マネジメント(第3の習慣)の能力が向上する.パーソナル・マネジメントの能力が高まれば,第Ⅱ領域に属する再新再生の活動(第7の習慣)を実行できるようになる.そして,まず相手を理解する努力をするほど(第5の習慣),お互いの間にシナジーが創り出され,Win-Winの結果を効果的に見出だせるようになる(第4,第6の習慣).自立に至る習慣(第1,第2,第3の習慣)のどれか一つでもしっかり身につけば,相互依存の関係を育む習慣(第4,第5,第6の習慣)を効果的に実践できるようになる.そして再新再生(第7の習慣)は,他の六つの習慣すべてを再新再生させるプロセスなのである.

再び、インサイド・アウト

「刺激と反応の間にはスペースがあり,そのスペースをどう使うかが人間の成長と幸福の鍵を握っている」

私はこの考え方を繰り返し反芻した.そして,私自身の人生のパラダイムが大きく変わり始めた.刺激と反応の間にあるスペースに立ちどまり,自分を取り巻くさまざまな刺激を見つめ始めた.そうするうちに,自分の反応は自分で選べるという自由の感覚が私の内面を満たした.