コンサル一年目が学ぶこと
はじめに
本書のテーマを「コンサル一年目が学ぶこと」としたのは,外資系のコンサルティング会社の出身者が,業界や職種を問わず,さまざまな場所で活躍しているからです.
ということは,彼ら,彼女らが,コンサルタント時代に学んだことのなかに,業界,職種を問わず,広く活躍できる,普遍的な仕事力というのが含まれているという仮説が成り立ちます.
- 本書を読むことで,社会人一年目で学んだときの基礎的なレベルから,職種を問わず,業界を問わず,15年後にも役立つ普遍的なスキルを理解できるようになる.
第1章|コンサル流話す術
01|結論から話す
これがコンサルタントとして学んだことのなかでもっとも役に立ち,いまも意識しているコミュニケーションの鉄則.
コンサルティングの報告書はもちろん,日常のメール,メモ書き,上司とのやりとり,すべて,結論から言うことが徹底されました.
こうすることのメリットは,やはり,物事がシンプルに明確になるということです.それにより,短い時間で相手に必要なことを伝えることができます.
02|Talk Straight 端的に話す
- 変な駆け引きをせず,言い訳をせず,言われたことにきちんとストレートに答えること.
- まず,質問に,イエスなりノーなりで端的に答える.
- 次に,追加の説明をしたり,相手の質問に答えていく.
- 相手の信頼を得るために非常に大事なこと.
- マネジャーが知りたいのは,単に,できたか,できていないかという事実.
- そして,もしできていないなら,どうしてできないのかという原因.
03|数字というファクトで語る
- 仮に,世界共通言語があるとしたら,それは英語ではなく数字.
- それも,難しい数字ではなく,売上,出荷の個数,コスト,利益率などの単純な数字.
- 感覚的に把握している問題を,実際に「数字」に落とし込み,「証拠」にすることで,人を納得させる.
- 新人であればあるほど.事実を拾ってこないといけない.
04|数字とロジックで語る
- 英語を流暢に喋ること自体が価値なのではない.論理と数字があれば伝わる.
- 違うところ,理解できないところは,合わせるのではなく,そのままにしておく.それが多様性というもの.
- ダイバーシティとは,バックグラウンドの違う人たちのさまざまな違いを認め合うこと.
日本の社会では,過去の価値観に全員が合わせるようなことが行われたり,もしくは,新しい価値観のほうに合わせたり,とかくひとつのものに統一しようと考えます.統一できると思われています.
しかし,これだけ多様化が進んだいま,たとえ日本人同士でも働き方や価値観を合わせることはもはや無理だ,という前提に立ったほうが,お互いにいいのではないでしょうか?
- 社員全員が同じバックグラウンドをもっているという前提は,一般のドメスティックな職場でも,もはや通用しない.
- 全員が納得のいくローコンテクストなルールや基準だけを掲げて,論理と数字でコミュニケーションをする.
05|感情より論理を優先させる
- 人を動かすことのできる本当に説得力のある話は,論理面と感情面,どちらも高いレベルで完成されている.
- 論理さえ通っていれば,上の立場の人も耳を貸すが,曖昧なことを感情で説得しようとする若造は信頼しない.
- 大企業はもちろん,どんなに小さな企業でも,経営者に近い立場の人ほど,より数字で物事をとらえ,合理的に判断している.
- 責任ある立場の人ほど,数字と感情の区別がつく.
06|相手に理解してもらえるように話す
- まず,論理の組み立てを,「相手は何も知らない」という前提で考える.
- 相手の理解度を推し量りながら,話す.
- 「無言は理解」ではなく,「無言は無理解」のサイン.
- 相手の理解度を測るには,相手の仕草をひたすら観察すること.
07|相手のフォーマットに合わせる
- 究極の伝え方は,徹底的に相手の土俵に合わせて伝えること.
- 相手の言葉,考え方,伝え方のクセを研究し,それに合わせて伝える.
- 文書は,相手の用いるフォーマットに合わせて,作成する.
08|相手の期待値を把握する
- 相手の期待を超え続けることがビジネスの基本.
- そのためにはまず,相手の期待の中身を把握する必要がある.
- 求められていないことに時間を使っても,クライアントからも上司からも評価はされない.
- まずは,相手が何を期待しているのかを正確に把握する.
- 相手が期待する中身がわかったら,それを絶対に外さない.
- そして,相手の期待値以上の成果を出し続ける.
09|上司の期待値を超える
- 報連相の基本は,その前提として,上司からの仕事の指示の内容を明確に把握すること.
- 報連相の本当の目的は,上司と部下が仕事の目的と内容について,「共通の理解を得る」こと.
- 部下が上司から仕事を受ける時に確認すべきポイントは,次の4つ:
- その仕事の背景や目的
- 具体的な仕事の成果イメージ
- クオリティ
- 優先順位・緊急度
- 指示を出す側,受ける側双方が,共通認識をもち,期待値を明確にする.
- すべての仕事には,なんらかの相手が存在する.その相手の期待値を把握して,それに常に応えて,ときに上回るようにしていくこと.
第2章|コンサル流思考術
10|「考え方を考える」という考え方
- いきなり作業に入るのではなく,どのように進めたら求めている答えに行き着くことができるのかという「アプローチ」「考え方」「段取り」の部分を最初に考える.
- 最終の成果物を見せて相手に納得してもらう前に,手順の段階でも合意をもらう.
- このようなやり方をとるメリットは次の3点:
- 作業の全体像が見えるので,完成までの道筋がわかり,安心感が生まれる.
- 関係者同士で手順やアプローチ方法を合意しておくことで,後出しの要求やどんでん返しがなくなる.
- 事前に,作業の難易度や作業量の見積もりができる.
11|ロジックツリーを使いこなす
- 重要度が判断できるようになってくると,いらない部分を捨てて,自信をもって重要な部分にだけフォーカスして時間を使うことができる.
- 重要な部分だけをやって,あとは捨てる.
- 捨てることができると,非常に効率的に,速いスピードで仕事が進められる.
- 多くの人が捨てることができないのは,捨てる勇気がないのではなく,単に何を捨てていいのかの重要度がわからないから.
- どれも大事な気がして,捨てる判断がつかない.だから捨てられない.
- 重要な部分だけをやって,あとは捨てる.
- 大きくて複雑な問題でも,ロジックツリーを使って小さな問題に分解することで,それぞれの論点について議論ができる.
- それぞれの論点を分析することで,全体の答えを出すことができる.
どの課題でも手順は同じで,まずロジックツリーなどで論点を整理・分解し,それぞれの論点について数値分析を行い,最後に項目ごとの重みづけをして,大事なものをアクションに落とす.
コンサルティングの過程では,これらを精緻に行っています.
12|雲雨傘 提案の基本
- 事実,解釈,アクションを区別する:
- 事実:「空を見てみると,雲が出ている」
- 解釈:「曇っているから,雨が振りそうだ」
- アクション:「雨が降りそうだから,傘をもっていく」
- 事実(=雲)だけでは報告とはいえない.「だから何なのか」という解釈もセットでもっていく.
- その提案の,事実(雲)・解釈(雨)・アクション(傘)は明確か?
13|仮説思考
- あらかじめ仮説を立てておくことで,調べるべきポイントを絞り込めていれば,効率的なリサーチをすることができる.
- リサーチは,仮説に対しての検証を提示するもの.
- 目的も仮説もなく単にリサーチだけを行っても,なんの意味もない.
- 仮説→検証→フィードバックというサイクルを高速で回すことで,問題の本質に効率よく迫ることができる.
- 仮説をもつということは,現時点での結論をあらかじめ用意しておくということ.
14|常に自分の意見をもって情報にあたる
- ビジネス能力を向上させるのは,情報量ではなく,考えること.考えるとは,自分の意見をもつこと.
- 本や,テレビ,新聞,インターネット,なんでもいいですから,情報に接するときには,必ず自分の意見をもって接すること.
考えは,間違っていてもいいのです.
そもそも,間違っていることに気づいたり,他人と考えが違ったりすることを認識するために,考えをもつのですから.
15|本質を追求する思考
- クライアントが,コンサルティング会社に最終的に求めているものは何か?
- それは,単なる「情報」ではなく「本質」.
- 情報を集めるだけでは考えたことにはならない.
- その先にある「本質」を提示することができてはじめて,価値は生まれる.
第3章|コンサル流デスクワーク術
16|文書作成の基本、議事録書きをマスターする
- 議事録には,文書作成における基本的なルールや作法がぎっしり詰まっている.
- これができるようになれば,他の文書もうまくつくれるようになる.
- 議事録とは:
- 決定事項,確認事項を書き,関係者に確認し,決定するためのもの.
- 決定事項を書いて,後日のための証拠に残すためのもの.
- 決まったこと,確認したいことを,簡潔に書いて,関係者に流し,間違いがないか確認してもらって,決定とする.これが議事録の役割.
- 決まったことのほかに,決まらなかったこと,確認が必要なこと,次回までにやるべきことを,簡潔かつ明確にまとめる.
- 完璧に自分の文書作成のスタイルになるまで,徹底して続ける.
17|最強パワポ資料作成術
- パワポは,ワンスライド・ワンメッセージ.
- 聞き手が知りたいのは,そのグラフを,どう読みとるかというあなたの解釈.
- 「要するに,何が言いたいの?言えるの?」ということ.
- グラフを出したら,あなたの解釈はひとつだけ.ひとつのメッセージだけを伝える.
- 基本は,根拠となるグラフや表を一つ.
- そして,そのグラフから読みとれる解釈・主張を一つだけ提示する.
18|エクセル、パワーポイントは、作成スピードが勝負
- コンサルの仕事では,殆どの時間を,エクセルかパワーポイントを使って作業することに費やしている.
- この2つのツールの操作スピードを上げることが即,生産性の向上に直結する.
19|最終成果物から逆算して、作業プランをつくる
- 仕事を始める時点で,すでに最終成果物,最終アウトプットの骨組みをつくってしまう.
- 最終アウトプットをまずイメージして,設計して,そこから必要な作業を逆算して作業に落とす.
- どんなことでも,最終アウトプットから逆算して考えるクセをつけておく.
20|コンサル流検索式読書術
- コンサル流読書術:
- 読書の目的を絞る,明確にする
- ウェブを検索するように目次ベースで該当箇所を拾っていき,重要な部分だけ読む
- なるべく多くの文献を広く浅く当たる
多くの人は,何が知りたいのかということを明確にしないまま,なんとなしに本を選んで,頭からお尻まで順番に読んでいると思います.
つまり,「はじめに本ありき」になってしまっていて,自分が何を知りたいのか,どうしたいのか,何のために本を読むのかという「目的」を忘れてしまっているのです.
同じ本を読んでも,目的や目的意識が違えば,注目すべき場所も違うし,読み取る箇所も違ってきます.ですから,最初に,「この本では何を知りたいのか?」という目的を明確にすることがとても重要です.
目的達成のために本を読むのですから,本のすべて一字一句に目を通す必要はなく,目的に沿って役に立ちそうな部分だけに目を通せば十分ということになります.
- 検索が上手な人というのは,的確なキーワードを入力できる人のことで,つまり,検索の目的が明確な人.
21|仕事の速さを2倍速3倍速にする重点思考
- 重点思考(20対80の法則):
- スピードの秘訣は,「余計なことをやらない」ことに尽きる.
- 80%という大多数を決める20%の要素にだけ注目して仕事をする.
- 20%だけ検討すればよいなら,スピードは5倍になる.
- 大事なことにフォーカスして,ディープに掘り下げる.それ以外のことは切り捨てる.
- 何が大事なのか,何がインパクトがあることなのかを早めに見極めて,それだけに集中する.
22|プロジェクト管理ツール、課題管理表
- プロジェクト管理:
- 複数人で仕事をやるときに,進捗を管理したり,課題を管理したり,意思決定をしたりするというもの.
第4章|プロフェッショナル・ビジネスマインド
23|ヴァリューを出す
- 他人に対する貢献ができ,相手がそこに価値を感じてくれたとき,その仕事には,ヴァリューが生まれる.
- 自分がやりたいことではなく,相手が求めていることをする.
- 仕事の価値を決めるのは,自分ではなく,あくまでも相手.
社会人は「消費者」ではなく,「生産者」です.
会社に入った,一人のプロとしてあなたが行うべき役目は,会社に貢献することであり,そして,その先にある消費者や取引先を満足させることです.
クライアントが「価値がある」と思わなければ,あなたがどんなに時間を費やしても,それは単なる自己満足にすぎません.
26|スピードと質を両立する
- Quick and Dirty:
- 時間をかけて完璧なものを目指すよりも,多少汚くてもかまわないので,とにかく早くつくる.
- 時間をかけずに,まずは大枠の方向性を決める.大枠の方向性を決めるには60点で十分.
東に行くか西に行くか,そういうことで悩んでいるときに,何ヶ月もかけて85.3度の方角に行きなさいといった100点の精度の答えは不要です.
それより役に立つのは,「西はおそらくダメ」という結論を3時間で出すことです.そして東にちょっと進んでみて,さらに違う情報が手に入ったら,また方角を決めていく.
重要なのは,仮説検証のサイクルを高速で回すことです.そのためにも,とにかくラフでいいので,おおまかな答えを見つけることを最優先とします.
- 失敗を開示せずにかかえ込むと,チームに迷惑をかけるリスクが一気に高まる.
- 早め早めに上司に相談し,方向性が合っているかどうかを確かめる.
27|コミットメント力を学ぶ
- 仕事に対するコミットメントとは,「約束したことを必ずやり遂げてくること」.
- そして,約束した以上のものをもってくる.それが信用につながり,次のチャンスを広げる.
- コミットメント力が高い人に共通しているポイント:
- 仕事内容に納得していること
- コミットメントが高い組織にいること
28|師匠を見つける
- 若いうちは,どのような仕事をするかより,誰と仕事をするかのほうが大事.
- 人格的に,能力的に,この人だと思う人の影響を受けること.
- プロフェッショナルと呼ばれる人は,技術のほかに,独自の美学や哲学を持ち合わせている.
- そして,その美学や哲学は,師匠のそばにいて,師匠の息を感じながらそれを真似ることによってしか身につかない.
- 仕事にも応用できる「守破離」:
- 守=師匠の一挙一動を真似る
- 破=師匠と違ったやり方を覚え,幅を広げる
- 離=師匠のやり方を超え,独自の技を生み出す
29|フォロワーシップを発揮する
- リーダーの提案を汲んで,リーダーがほしいと思っていること,リーダーが必要としていることを考えて,自主的に動く.
- リーダー一人でムーブメントをつくることはできない.
- どんな大きなムーブメントも,最初のフォロワーが重要となる.
30|プロフェッショナルのチームワーク
- チームワーク=分業:
- 誰が欠けても成功しない.それぞれの担当分野で全員が価値を生み出すこと.
- チームワークとは,それぞれにしかできない役割をそれぞれが担って,チーム全体の勝利に向かって走ること.
間違っても,他人と同じ分野で,弱点を埋めようと思ってはいけません.
「あいつはPCが得意だから,自分も学ばなくては」とか,「あいつはトークがうまいから,自分も練習しなくては」とか.
それは,本人にとっても,チームにとっても不幸です.
他人と同じことではなく,違った角度で貢献できる分野を見つけて,そこで認められるようになってください.