本質思考
はじめに|スジの良い答えは本質から考えないと生まれない
就職して5年,10年すると,だんだん仕事にも慣れてくる.なんとなく日々の業務もそつなくこなせるようになり,多少なりとも自分の成長を実感するようになるのもその頃だ.
また,いろんなビジネス書を読んだり,思考法を学んだり,成果を出すための努力が一段落するのもその頃だろう.
しかし多くの人が,そんなタイミングで壁に突き当たる.決して頭の良し悪しにさほど大きな違いはないはずなのに,成果を出せる人と,出せない人がだんだんはっきりしてくる.成果を出せる人は,考えていることがなんとなく深くて,正しい判断や意思決定ができているように思える.
このような差はどこから来るのだろうか.私はその差が,「本質から考えているか否か」にあるのではないかと感じている.本質から考えずに,目に見える表層的な部分だけを見て考えても,スジの悪い答えしか出てこない.だから,結果につながらない.
- 今の時代,結果につながる思考と,それに基づく意思決定のためには,目先の情報や表層の囚われることなく,本質から考えようとすることがとても大切.
- こうした思考のアプローチを,本書では「本質思考」と呼ぶことにする.
CHAPTER1|人は意外に深く考えていない
- 本来,仮説は新しい情報や発見に応じて進化していくべきものである.
- しかし,初期仮説に固執してしまうと,一旦思いついた仮説からなかなか抜け出せなくなり,進化の道を閉ざしてしまうことになる.
- 初期仮説に拘らなければ,新たな考えや発見を取り込むこともできる.そして,スジの良い答えに辿り着く可能性が広がるのである.
- 具体的に行動を変えることは,クセを克服するうえで非常に有効な手段である.
- 意識を変えることによって行動を変えるより,行動を変えることによって意識を変えるほうが簡単かもしれない.
CHAPTER2|本質思考とは何か?
- ものごとの本質を,現象の裏側にひそむ「構造(モデル)」と「因果(ダイナミズム)」として捉える.
- 「本質」=「構造(モデル)」×「因果(ダイナミズム)」
- 本質から考えるということは,現象の裏にひそむモデルとダイナミズムに想いを巡らせて考える,ということに他ならない.
- 何か問題があるとき,その問題を解決するためには,問題を引き起こしているモデルとダイナミズムにまで,深く入り込もうとするスタンスが必要.
- 結局,問題解決のためには,モデルを変え,ダイナミズムを変えるしかない.
CHAPTER3|本質思考のステップ①|モデルを描く
- いま直面している問題の裏にひそむモデルを絵で表現し,モデルの要素や因果のイメージを「見える化」する.
- 大事なことは,実際に手を動かしてヴィジュアル的に表現することで,考えを深化させること.頭で考えているだけでは,なかなか思考は深まらない.
- モデルを書く際,考えるべき5つの要素:
- インプット先
- アウトプット先
- 競争関係
- 協調関係
- 影響者
- 因果関係:
- 2つの事柄の間に,本当に原因と結果の理屈が存在しているもの.
- 相関関係:
- 2つの事柄の間に関係があるように見えても,原因と結果の因果がないもの.