問題解決力を高める「推論」の技術
- 作者:羽田康祐k_bird
- 発売日: 2020/01/08
- メディア: Kindle版
まえがき|「正解」から「可能性」へ
VUCAの時代に必要な「推論力」
- 現在は,「企業の行く末」はもちろん「組織の在り方」「あなた自身のキャリア」...,一寸先の未来すら読みにくい時代.
- こうした時代には「今,目の前に見えるもの」から物事を考えるのではなく,「その背景には何があって」「どのような法則が働いて」「どのような未来になりうるのか?」を見抜く必要が生じてくる.
- 今あなたに必要なのは,不確実性の高い環境変化を読み説いた上で確実性の高い結論を生み出す「推論力」.
- これからの時代に必要な能力は左脳と右脳を自由自在に駆使しながら,未来の可能性を見いだす「推論力」.
「正解」から「推論」へ
- 人は,主体性を失うと自信と誇りを失っていく.
- なぜなら主体性がないということは,自分の人生を他人任せにすることであり,自分の人生を放棄することと等しいから.
- 未来とは,万人にとって「未知のもの」である以上,「正解」や「不正解」という概念自体が存在せず,自らの推論力と実行力で切り拓いていけるもの.
「根性論」から「方法論」へ
- 推論力は「頭の良し悪し」という能力の問題ではなく,「頭の使い方の上手い下手」という「方法論」の問題.
- 「頭の使い方」や「その手順」を理解し,地道に習慣化すれば「誰でも」「頭の良し悪しとは関係なく」身につけることが可能.
第一章|可能性を広げる推論力
01|推論力とは何か?
推論力=未知の事柄に対して筋道を立てて推測し,論理的に妥当な結論を導き出す力
- さまざまな問題の原因を見抜くためには「なぜ問題が生じたのか?」という「見えない原因」に対する推論力が求められる.
- また,仮説を考える際にも「見えない未来」に対する適切な推論が必要不可欠.
- 推論のプロセス:
- 事実を認識する
- 問題意識を持つ
- 推論する
- 仮説を導きだす
- 仮説を検証する
- 結論を出す
02|なぜビジネスに推論力が必要なのか?
- 多くのビジネス活動は,まずは動かせない周辺環境を「前提」に置き,その前提を元に「推論」を働かせ,その推論を元に「結論」を生み出すというプロセスで成り立っている.
- 分析とは,「事実」と「事実同士の関係性」を推論で解明していくプロセスであり,そのために必要不可欠な能力が「推論力」.
- 「伝えたいことが伝わらない」という状態は,次の2つのどちらかに原因がある:
- 自分が伝えたい論点と,相手が聞きたい論点にズレがある.
- 結論に至る話の筋道が,論理的に一貫していない.
- 情報は多ければ多いほど良いのではなく,仮説に関係するものであればあるほど良い.
- そして優れた仮説を導き出すには,高い推論力が求められる.
- 「パレートの法則」:
- フォーカスすべき重要な要素2割が,全体の8割の成果を生み出しているとする法則.
初めに「何が重要な20%なのか?」を見極め,精度の高い推論を立てる必要がある.
もしあなたが「重要な20%」について適切な推論を立てることができれば,その20%が80%の成果を生むのだから,生産性は4倍になる.
しかし,完璧思考のまま残りの80%も絨毯爆弾的に取り組んでしまえば,その80%がもたらす成果は20%しかないのだから,生産性は1/4に落ちてしまうので注意が必要だ.
- ビジネスの実務では「提案」ほど重要なスキルはない.
- なぜなら「提案」とは,相手に対して「期待」と「納得」をつくる業務であり,あらゆるビジネスが動き出す起点となるから.
- 提案力がある人は自分の提案をスムーズに通しやすく,思い描いた通りに物事を進めやすい.
- 「優れた提案」とは,過去の常識を覆すことで「期待」をつくり,かつ「これならうまくいきそうだ」という「納得」をつくる仕事であり,その両方に高いレベルの推論力が必要である.
03|推論力は,今後希少性が高まるスキル
- 見えないものを推測し,適切な結論を導き出す力「推論力」は,次の通り,ビジネスで必須とされる主要なスキルを支える中核能力である:
- ビジネス思考力:何をどう考えるべきか.
- 分析力:物事や関係性をどう捉えるべきか.
- コミュニケーション力:何をどう伝えるべきか.
- 生産性:何をどう進めるべきか.
- 提案力:どう期待と納得をつくり出すべきか.
- 情報洪水時時代の3つの副作用:
- 今や多くのモノや情報が「誰でも」「いつでも」手に入る状態となっている以上,それ自体で価値を生み出すことが難しくなっている.
- 「情報に追いすがる」だぇで精一杯となり「情報を解釈し,推論を働かせる」ことに手が回らなくなる.
- 労働生産性を高めなければならないという至上命題の下,同じリソースでこれまで以上の成果を生み出すような働き方を実現していかなければならない.
そんな時代だからこそ,あふれる情報の中から重要な情報を見抜き,早い段階で精度の高い「解釈」を加え,あなた独自の「推論」に変える「推論力」は,あなた自身の希少価値となりえる.
「推論力」は情報や知識と異なり,目に見えない.そして「目に見えない」ということは傍から見て「真似しにくい」稀有な能力であることを意味する.
つまり,あなたオリジナルの価値を生み出せる能力として,情報洪水時代には希少価値となる.
- 戦略論の世界には,VRIOという,企業の競争力を整理するフレームワークが存在する:
- Value(価値):推論力は「情報」や「知識」と異なり,あなた独自の価値を生み出せる能力である.
- Rarity(希少性):推論力は「情報」や「知識」と異なり流通しにくいため,情報洪水時代に希少価値となる能力である.
- Imitability(模倣困難性):推論力は目に見えず,長期的に身につける必要があることから,いったん確立すれば真似されにくい能力である.
- Organization(運用力):推論力は「ビジネス思考力」「分析力」「コミュニケーション力」「生産性」「提案力」の向上に影響を与える中核能力である.
第二章|「優れた洞察」を生み出す推論法|帰納法
04|帰納法とは何か?
帰納法=複数の事実から共通点を発見して結論を導き出す推論法
- 帰納法の本来の真価とは,数多くの「法則」を発見できること.
05|帰納法を扱う際の留意点
- 帰納法を扱う際の3つの留意点:
- 事実に偏りがある場合
- 帰納法は限られた事実を全体に当てはめて推測する推論法である以上「事実の選び方」に偏りがあれば,そもそもの推論の前提が偏ってしまうため,得られる結論も偏ったものになる.
- 共通点の発見に飛躍がある場合
- 結論部分に飛躍がある場合
- 事実に偏りがある場合
- 帰納法は,「限られたサンプルを全体に当てはめる」以上,推論は「部分から全体へ」「特殊から普遍へ」「具体から概念へ」と向かう性質を持つことになる.
- いわば「一握りの出来事」を,そこから離れた「全体に当てはめる」という性質を持つのだから,推論が飛躍する可能性をゼロにすることはできない.
- 帰納法を「論理的な正解を導き出す推論法」として厳密に捉えるのではなく,複数の事実を元に共通点を「洞察」し,推論プロセスを相手と共有する「コミュニケーションツール」として捉えたほうが,現実的で実用的.
06|ビジネスで帰納法を活用する2つの局面
- ビジネスにおける帰納法の活用局面は,大きく分けて2つある:
- 環境の変化を捉えて,方針や戦略を策定する局面.
- 世の中の事象から「法則」を発見し,学びに変える局面.
- 真に意味がある成長とは,すぐに陳腐化してしまう「知識」を得ることではなく,時代を超えて使える再現性の高い「法則」をストックしていくこと.
- 独自性&再現性が高い「法則」を手に入れることは,あなたの成長にとって決定的に重要となる.
07|帰納法の頭の使い方4ステップ
- 帰納法の頭の使い方の手順は,大きく分けると次の4ステップ:
- STEP1:さまざまな事実に気づく.
- STEP2:複数の事実の共通点を発見する.
- STEP3:結論や法則を見いだす.
- STEP4:アナロジーを使って「法則」を応用する.
STEP1:さまざまな事実に気づく
- 人は「自分が気づいた物事」だけが「自分の世界のすべて」となる.そして人は,自分が気づいた物事の範囲内でしか,考え,判断し,行動することができない.
- 「観察力」は,あなたと世界をつなぐ極めて重要な接点.
- 「観察力で得られた気づきが多いか,少ないか」で,あなたの成長はおろか,あなたに見えている「世界の広さ」すら大きく変えてしまう.
- 観察力を身につけるために実践すべき3つのこと:
- フォーカスを絞る.
- 人は,自分が関わっている物事や知りたいテーマが念頭にあると,関連する情報に対する感度が高くなる.(カクテルパーティー効果)
- 視点を持つ.
- さまざまな「視点」を通して物事を眺めれば,新たな事実に気づくきっかけを与えてくれる.
- 当たり前を疑う.
- 人は物事が「当たり前になる」と注意力が落ち,価値ある事実に気づきにくくなる.
- フォーカスを絞る.
STEP2:複数の事実の共通点を発見する
- 複数の事実から共通点を発見するには,大きく分けて2つの方法がある:
- 「観察的帰納法」:観察を通して直接的に共通点を発見する推論法
- 「洞察的推論法」:洞察を通して共通点を発見する推論法
- 共通点を発見する際に知恵を絞る必要がある.
- 洞察力とは,目に見える事実を手掛かりにしながらも,その奥底にある「目に見えないもの」を見抜く力を指す.
- 「目に見えないもの」とは「概念」や「関係」あるいは「原理」「本質」など.
- もしあなたが「目に見えないもの」の共通点を発見できれば,他の人の一歩先を行く競争力になりやすい.
- 「目に見えない共通点」を発見するための「頭の使い方」:
- そのカギは「抽象化」と「多面的な視点」の合わせ技にある.
- 「抽象化」とは,「形のある実体」を手掛かりにしながらも,それに囚われることなく「形のない概念」に抜き出していくことを指す.
- たとえば「水→飲めるもの」が抽象化.
- 「多面的な視点」とは,抽象化で得た「概念」をさまざまな視点で捉え直すことを指す.
- たとえば「水=飲めるもの・洗えるもの・火を消すもの」などが挙げられる.
- 「抽象化」とは,「形のある実体」を手掛かりにしながらも,それに囚われることなく「形のない概念」に抜き出していくことを指す.
- そのカギは「抽象化」と「多面的な視点」の合わせ技にある.
STEP4:アナロジーを使って「法則」を応用する
- アナロジーとは,知っている「法則」を,別の分野に当てはめて応用することを指す.
- 洞察的帰納法を使いこなすには,次の着眼点を持つことが有効:
- 事実から「見えないコンテクスト」を見抜く
- 事実から「見えないレベル感」を見抜く
- 事実から「見えない関係性」を見抜く
- 事実から「見えない価値観」を見抜く
- 事実から「見えない感情」を見抜く
- 「何をやらせても優秀な人」の共通点は,どんな些細な事実からも「見えないもの」を見抜き,それらを洞察的帰納法で「法則化」し,さまざまな分野に応用する習慣を持っている.
- 経営者が好んで「戦国武将の本」や「スポーツ監督の本」を読むのも,異なる分野から得た「法則」を自社のビジネスに応用して活かしたいと考えているから.
08|ビジネスに帰納法を活かす方法
- 問題を生じさせている原因を突き止めるには,複数の断片的な手掛かり(目に見える現象)から,その背景(目に見えない原因)を見抜く必要がある.
09|帰納法をトレーニングする方法
第三章|「予測と検証」を可能にする推論法|演繹法
11|演繹法とは何か?
演繹法=前提となるルールに物事を当てはめて結論を出す推論法
- 演繹法は,「前提を疑う」「前提を概念で捉える」「前提を捉なおす」ことで,これまでの当たり前や常識を覆し,新たな側面の発見や価値の創造につなげることができる.
- 演繹法の「演」には「押し広める・説く」という意味があり,「繹」には「糸口を引き出す」という意味がある.
- すなわち「演繹」とは「広く説かれている原則(演)から,糸口を引き出す(繹)」という意味.
- 演繹法のロジック:
- 誰もが「確かにそうだ」と思える「前提となるルール」を持ち出す.
- 前提となるルールに,目の前の物事を当てはめる.
- 目の前の出来事が,前提となるルールに当てはまるかどうかで結論を出す.
12|演繹法を扱う際の留意点
- 演繹法を扱う際の2つの留意点:
13|ビジネスで演繹法を活用する3つの局面
- 適切に「提案」をするには,その前提として「目的」と「目標」が必要になる.
- 「目的」とは,提案を通して成し遂げたい「内容」のことであり,もし「目的」がなければ「何を成し遂げるべきかがわからない」という状態となる.
- 「目標」とは,「目的(=成し遂げたい内容)の達成水準」のことを指す.
- 「洞察的帰納法で法則をストックして」「演繹法に当てはめることでさまざまな価値を生み出す」ことを意識する.
- 前提となるルール①:企業の無形資産は使えば使うほど→価値が増える.(洞察的帰納法で得た法則)
- 当てはめる物事②:自分が持っている販売ノウハウは,企業の無形資産だ.
- 導かれる結論③:よって,組織でシェアして使えば使うほど→価値は増える.
14|演繹法の頭の使い方3ステップ
- 演繹法の頭の使い方の手順は,大きく分けると次の3ステップ:
- STEP1:「前提となるルール」を見極める.
- STEP2:「前提となるルール」に目の前の物事を当てはめる.
- STEP3:結論を出してチェックする.
STEP1:「前提となるルール」を見極める
- 「目的」と「目標」は演繹的に物事を考える上で,極めて重要な前提となる:
- 目的は「何に選択と集中を行うのか?」の前提となるため.
- 目標は「どのくらいのリソースが必要なのか?」の前提となるため.
- 心理学や社会学,経済学や統計学などから学べるさまざまな「法則」を理解し,演繹的に応用することができれば,物事を提案する際の精度や業務のクオリティを上げていくことができる:
15|ビジネスに演繹法を活かす方法
- プロダクトライフサイクル理論とは,商品やサービスが市場に導入されてから売上が伸びはじめ,やがて成長が止まり,衰退するまでの時系列プロセスを表した理論:
- 「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という4段階で捉えることが多い.
- 「時系列で捉える」という理論の性質上,早い段階で「市場力学の変化」を予見し,「先手を打って対策を練っておく」ことを可能にする理論でもある.
16|演繹法をトレーニングする方法
17|演繹法の応用テクニック
- ビジネスは時に「論理的に妥当か」ではなく,「これまでの前提を覆した発想」が求められることもある.
- むしろこれからの時代には,こちらのほうがマストな能力と言っても過言ではない.
- 「これまでの前提を覆す発想」ができる「演繹法の応用テクニック」:
- 「前提」を疑う思考法:クリティカルシンキング
- 「前提」を「概念」で捉える思考法:概念化思考
- 「前提」を捉え直す思考法:ラテラルシンキング
「前提」を疑う思考法|クリティカルシンキング
- 本来の「批判」の定義とは「良い部分・悪い部分を意識的に見分け,評価・判定すること」であり,むしろ「先入観に囚われず,中立的な姿勢を重視する」のがクリティカルシンキングのポイント.
- 「前提」が正しいかどうかを疑ってかかり,本当に解くべき問題を見極めるのがポイント.
- 前提に対して,次の2つの視点を持ち合わせておく:
- True?(本当か?)
- Anything else?(他には?)
「前提」を捉え直す思考法|ラテラルシンキング
- ラテラルシンキングは「前提を捉え直す思考法」.別名「水平思考」あるいは「ラテラル思考」とも呼ばれる.
- ラテラルシンキングとは「前提(=A)の置き方」に着目し,前提そのものを捉え直す発想をすることで,これまでにない新しいアイデアを生み出そうとする思考法.
第四章|「仮説」を生み出す推論法|アブダクション
18|アブダクションとは何か?
アブダクション=「起こった現象」に対して「法則」を当てはめ,起こった現象をうまく説明できる仮説を導き出す推論法
- アブダクションは,行動や現象だけに着目するのではなく,背景や原因を探ることによって法則や仮説を発見し,ビジネスに応用していくための推論法.
- 訳語に「仮説形成法」「仮説的推論」,あるいは「発想法」などの言葉が使われるように,仮説を導き出す推論法.
- 仮説思考とは「今ある限られた情報だけで問題の本質や解決策をイメージし,現時点で最も妥当だと思える結論を導き出す思考習慣」のことを指す.
- 仮説思考も「アブダクション」をマスターすれば身につけることができる.
- 仮説思考を身につけることができれば「今ある仮説が正しいか?正しくないか」に絞った情報を,その判断に資するレベルまで集めればよいため,情報収集の焦点を絞り込むことができ,時間を大幅に短縮することが可能になる.
- 「アブダクション」の典型例;
- 起こった現象①:売上が落ちた.
- 法則の当てはめ②:買う人が減れば/商品単価が落ちれば→売上は落ちる.
- 導かれる仮説③:よって,売上が落ちたのは,買う人が減った/商品単価が落ちたからに違いない.
精度の高い仮説を立てられる人は,ほぼ例外なく日々の経験から洞察的帰納法を駆使して「ああなれば→こうなる」という「法則」を自分の頭の中にストックしている.
そのため一(起こった現象)を聞いた際には,頭の中にあるさまざまな法則を当てはめ,瞬時に十(仮説)を導き出すことができる.これが仮説思考の正体だ.
もしあなたがアブダクションを通して優れた仮説を立てたいなら,あらゆる経験を「消費して」終わらせるのではなく,洞察的帰納法で「法則を発見して」「ストックする」習慣を身につけよう.
19|アブダクションを扱う際の留意点
- 演繹法は「正しいとされる前提」に「目の前の物事」を当てはめることで今後を予測したり,あるいは検証するときに使うもの.
- 演繹法ができるのは「今後の推測と妥当性の担保」.
- アブダクションは「起こった現象に」「正しいとされる法則を当てはめて」「原因となる仮説を導き出す」ために使う.
- アブダクションができるのは「起こった現象に対する原因の把握」.
20|ビジネスでアブダクションを活用する3つの局面
- ビジネスにおけるアブダクションの活用局面は,大きく分けて3つある:
- 問題発見と問題解決の局面
- 物事の背景の価値を見抜く局面
- 起こった現象から「法則」を発見して応用する局面
どれだけあなたからは遠い問題に思えても,いったんは自分が責任を負い「自分が何をすれば問題の解決に近づくだろうか?」と考える当事者意識を持てれば,これまでは「どうせ無理」とあきらめがちだった問題に対して,自分が貢献できる部分が見えてくるはずだ.
- 「問題」には2つの側面が存在する:
- 「問題」という「表面に現れた現象」
- その背景に隠れた「原因」
- 「問題の原因」は「問題の背景に隠れている」ため目に見えづらく「推論」でしか捉えることができない.
- アブダクションは「問題」という「目の前に現れた現象」を手掛かりに「なぜその問題が起きたのか?」という「問題を引き起こした原因」を追求していくことができる.
- 「思い込み」や「決めつけ」は「疑問を持つ」ことを妨げて,「仮説」や「法則」を発見する力を阻害してしまう.
- 逆に言えば,「疑問を持つ」ことは物事を客観的に捉え,いろんな角度から物事を見ようとする推論のプロセスであり,あなたの視野を広げるきっかけとなる.
21|アブダクションの頭の使い方5ステップ
- アブダクションの頭の使い方の手順は,大きく分けると次の5ステップ:
- STEP1:「起こった現象」に自覚的になる.
- STEP2:「起こった現象」に対して疑問を抱く.
- STEP3:さまざまな「法則」を当てはめて仮説を導き出す.
- STEP4:仮説を構造化してさらなる仮説を導き出す.
- STEP5:「仮説」と「起こった現象」との間にある「因果関係」を検証する.
STEP1:「起こった現象」に自覚的になる
これだけ情報があふれている現在では,インターネットを駆使すれば,情報は誰でも等しく手に入れることができる.そして,1日は誰もが等しく24時間が与えられている.
にもかかわらず,人によって学びの量に何倍・何十倍もの差がつくのは,同じ情報や経験から何を気づけるか?という「気づく力」に負うところが大きい.
想像してみてほしい.何も気づかないまま「ぼーっと過ごす365日」と,「毎日のように何かを発見し,そこから「さまざまな物事を思考し続ける365日」では,どれだけ学びの量と質に差がつくだろうか?
起こった現象に「自覚的になる」ことができなければ「仮説を生み出すきっかけ」を掴むことができない.そして「仮説を生み出すきっかけ」が掴めなければ,あなたの思考はいつまでも起動することはなく,「推論力がない」「仮説が思い浮かばない」という状態が続くことになる.
STEP2:「起こった現象」に対して疑問を抱く
- なんらかの現象に気づいたら,「なぜ,その現象が起きているのか?」「その現象を起こしうる原因は何か?」という疑問へ変換する.
STEP3:さまざまな「法則」を当てはめて仮説を導き出す
- 精度の高い仮説を生み出すには「起こっている現象」からいきなり「仮説」を生み出す前に,世の中に存在するさまざまな法則を「起こっている現象」に当てはめて考えることが有効.
STEP4:仮説を構造化してさらなる仮説を導き出す
- 仮説の構造化とは「起こった現象」の原因となる複数の仮説を,モレなくダブりなくツリー状に整理することを指す.
- 仮説を構造化したロジックツリーは極めて有用性が高く,3つのメリットが存在する:
- 仮説を生み出す際のモレやダブリを回避できる.
- 仮説検証の優先順位がつけやすくなる.
- どのようなビジネス活動も投入できるリソース(資金・時間・人など)は有限なのだから,複数の仮説が存在する場合には,それらを比較検討し最も有効な仮説を選び取らなければならない.
- 情報共有やコミュニケーションがしやすくなる.
- 複数ある仮説の中で「どの部分の仮説について相手と議論しようとしているのか?」を揃えることが容易になる.
22|ビジネスにアブダクションを活かす方法
23|アブダクションをトレーニングする方法
第五章|成果を倍増させる「推論力の合わせ技」
24|「帰納法」と「演繹法」の合わせ技でビジネスの一貫性を保つ
- ビジネスは,有限なリソースの中での選択と集中の繰り返し.そして常に「何を選択し」「何に集中するのか」の決断を迫られる.
- 自社を取り巻く環境から方針を策定し,かつ,方針と施策を一貫させたいときに有効なのが「帰納法と演繹法の合わせ技」.
25|「帰納法」と「演繹法」の合わせ技で提案力を身につける
- 提案の最初のスタートラインは,相手が求めていることを正確に見抜くこと.
- なぜなら,「提案の相手が求めていること」を間違うと,その後の「提案の組み立て」はすべて間違ったものになるから.
26|「帰納法」「演繹法」「アブダクション」の合わせ技で自分の成長を加速させる
- 物事は大きく片方に作用すると,その危機感や反省,あるいは限界から反作用が生まれてくると考えることができる.