SIMPLE RULES 「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える

はじめに

「シンプルなルール」の4大特徴

  • ルールをシンプルにすると,覚えやすく,時間も節約でき,集中力も維持しやすい.

個人であれ,組織であれ,政府であれ,ルールはできるだけシンプルなほうがうまくいく.

  • 「シンプルなルール」にはつぎの四つの特徴がある:
    1. ルールの数が少ない
    2. 使う人に合わせてカスタマイズできる
    3. 具体的である
    4. 柔軟性がある

「複雑」か,「シンプル」か

本書では,「シンプルなルールづくり」とはどういうものか,ということと,

どうして物事はシンプルなほうがうまくいくのかを,

多岐にわたる業界の成功事例をあげながら説明したいと思う.

一瞬で”発想”を変える方法

  • 「シンプルなルール」というのは,iPodのスクロールホイールと同じ.
    • とても単純なアイデアなのに,それが存在することで複雑な物事が,たちまち簡単にコントロールしやすくなる.

仕事であれ,私生活であれ,なにか結果を出したいと思うとき,あるいは問題や悩みを解決したいとき,

ズバリ効果があるのは「シンプルなもの」だけだ.

本書では,その事実を証明していこう.


1|すべては「スピード」「実行力」「柔軟性」

「単純明快」というパワー

  • ”適用範囲が広すぎる”ルールは,往々にして「非現実的なもの」として軽くあつかわれてしまう.

こんな「ノイズ」に耳を傾けてはいけない

  • 「シンプルなルール」にしたがうほうが,心理的負荷をかけずに,よりすぐれた意思決定を生みだせることが多い.

「シンプルなルール」にもとづいて判断を行ったほうが,

「複雑なルール」にもとづくよりもよい結果を出すか,少なくとも互角の結果であった.

  • 「投資家たちの意思決定の正確さは,時間とともに,向上するということはない」ということがわかっている.
  • 心理学者の研究によると,どうやら人というものはあれこれ考えすぎると,根幹よりも枝葉末節が気になってしまう.

よりよい決断をしたいなら,細かい要素にはこだわらずに,もっとも重要な物事に焦点を絞らなければならない.

「シンプルなルール」なら,それができる.

しかも「シンプルなルール」は実行に移しやすく,無理なくつづけられる.


3|ルールを最少まで絞りこむ

「成約のない自由」などない──「ハウツー・ルール」

  • 優秀なスポーツキャスターの「ハウツー・ルール」:
    1. 全体の状況を説明できるようにする
    2. 選手の動きを的確な言葉で表現できるようにする
    3. スコアを定期的に,かつ簡潔に伝えるようにする
    4. 試合の重要な局面をいち早く察知できるようにする
    5. 試合の緊張感をそがない解説を心がける
    6. 選手の過去のプレー,クセ,人物像などを入念に調べ上げる

「ぼくは,制約を課されれるほうがむしろ多くの自由を感じる.

曲づくりにルールなどないなんて,うそぶく連中には虫酸が走るよ.

ルールなしで,いったいどうやって創造性の高い作品をつくるっていうんだ?

  • もっとも成功している企業は,「しくみをつくらないで自由にさせる」ことと「しくみをたくさんつくる」ことのあいだで,絶妙なバランスを保っている.
  • 「ハウツー・ルール」とは,「何をどうするか」という非常に根本的な部分を決めておくためのルール.
    • その際,あれこれ微に入り細をうがち,アクションを指示しておく必要はない.

チームの力を引きだす──「コーディネーション・ルール」

  • 「ボイド」に与えられたルールは三つだけ:
    1. 隣の鳥に近づきすぎない
    2. 隣の鳥から離れすぎない
    3. 隣の鳥と動きを合わせる
  • ナポレオンは,前線で戦う兵士たちにこう命令した:
    • 「砲撃の音が聞こえるほうへ進め」
    • 極めて単純明快な命令だが,効果は絶大だった.

足並みを乱すのも作戦のうち──「タイミング・ルール」

  • 業界でもっとも業績を上げている企業は,あえてライバル社と足並みをそろえない.
    • 最新技術を使った製品をリリースするときは,ライバルよりもはるかに先行して発表する.
    • 一方で,すでによく知られているような技術を使って製品をつくるときはスペックを完璧にし,ライバル企業が発売するタイミングより,もっとあとにリリースする.


7|激変の時代にこそ役立つ「弱点の強み化」

  • ルールをつくった当初は数が増えていきがちだが,どんどん削ぎ落とされてシンプルに,より普遍的なものに変化をしていく.
  • 状況が変わればルールは変化するものだが,ルールのかしこい運用者は,ルールの数を増やすのではなく,なるべく少なくしておく.


8|成功者は,つねに「ゼロベース」に立ちかえる

  • 人は経験から学ぶもの.とくに重要なのは,失敗から学ぶこと.
  • 大きな混乱を経験したときにまず必要なのは,「自分たちが,大きな変化に直面していること」を認識すること,そして表面的な理解を超えて,その奥で起こりつつあることをよく調べること.


おわりに

  • 「シンプルなルールは」は,一朝一夕にはできあがらない.時間と労力をかけてルールを練りあげ,完成させていく必要がある.
  • 「シンプルなものは,いまひとつ頼りない」と多くの人がカン違いをしている.
    • 企業の就業規則がその典型である.規則が往々にして複雑化するのは,社内の信頼関係が築けていないことに起因する現象.
      • 「97%の社員は,信頼に値する人物だ.残り3%の社員の問題に対処するために,膨大な時間をかけて就業規則を作成している企業は驚くほど多い」


監訳者のことば|「簡潔で美しいルール」の先に,すばらしい成果が待っている

The really great person will keep on going and find...the key, underlying principle of the problem.

And come up with a beautiful elegant solution that works.

  • ジョブズは,いわゆる「単純」な答えと,「簡潔明瞭」つまり「シンプル」な答えは違うといっている.

ようやく,ジョブズの意味する「美しくて簡潔明瞭で,みごとに機能する解決策」とは何なのかが,明らかになるときがきたのだ.

それが,本書の提唱する「シンプルなルール」である.

  • どんなことにおいても,ポイントを3〜6つ程度にまとめることを心がける.
    • できるだけ少ないポイントに削ぎ落とすことは,忙しいビジネスパーソンにとって頭の整理にもなるだけでなく,実行に移しやすい.
  • 世の中には,さまざまなスキルをもった優秀な人がいるが,すべての人と効果的かつ楽しく仕事ができるとはかぎらない.だからこそ,明確なルールが必要になる:
    1. 仕事を楽しめること──仕事にやりがいを見いだせるかどうか
    2. 粘り強くとりくめること──やりきる力,忍耐力とも表現できる
    3. 仲間と協調できること──仲間と楽しく働けるかどうか
    4. 主体的に行動できること──自分の頭で考えてとりくめるかどうか
    5. 誠実さを備えていること──信頼を得るための最低限の要素
  • さまざまなバックグラウンドをもったメンバーと仕事をする中で,「嘘をつかない」「誠実に行動する」「まじめに努力する」といったごく基本的な倫理観こそ,多国籍・多文化の環境ではもっとも大切になる.