入門『地頭力を鍛える』 32のキーワードで学ぶ思考法
- 作者:功, 細谷
- 発売日: 2019/07/26
- メディア: 単行本
はじめに
- 思考力とはすなわち「自分の頭で考える」こと.
- 本書で習得していただきたいのは,「思考」に関する32のキーワードの【WHAT】【WHY】【HOW】:
- 【WHAT】そのキーワードの基本的な定義と意味
- 【WHY】そのキーワードが重要な理由
- 【HOW】そのキーワードの具体的な活用方法
Chapter1|基本の思考法を押さえる
キーワード01|戦略的思考
WHAT|戦略と戦術はどう違うのか
- 戦術は(例えば3つのうちの1つの戦いといった形で)個別の小目標を達成するのに対して,戦略はそれらを統合した「組織全体の勝利」といった大目標の達成を目的にしている.
- 「あえて一部は捨てる」というのが戦略的な発想.
WHY|「そもそも戦う必要があるのか?」
- 戦術は「闘いありき」であとはいかにうまく戦うかのための作戦だが,戦略的思考とは,まずはいかに自分の得意な土俵に持ち込むかということ.
相手が戦意を喪失する,または相手はそもそも何らかの事情で戦うことができない領域に勝負を持ち込むのが戦略的思考ということになります.
HOW|「並ばない方法」を考えるのが戦略的思考
- 戦略的とは「いかに並ばないか」を考えること.
戦略的思考とは「そもそも」で考えて
「コンペに勝つ」ではなく,「そもそもコンペにしない」
「社内の出世競争に勝つ」のではなく,「そもそも良いポジションにつける会社を選ぶ」ということです.
キーワード02|ロジカルシンキング
WHAT|多数の人を説得するための筋道
- ロジカルシンキング(論理的思考)とは,筋道が通っている考え方ということ.
- 「話の根拠がある」「一貫性がある」「客観的な見解である」「事実に基づいている」「感情に左右されない」「最終的な結論が明確である」
- このような姿勢で物事を考えることが,ロジカルシンキングの基本.
WHY|「論理的でない」のが許容されるのは例外的
- 「論理的である」とは対象的な方法で導かれる結論が,直感による結論や感情による結論.
- ビジネスは科学の世界と違って,森羅万象すべてが従う絶対的な法則があるわけではない.
キーワード03|仮説思考
WHAT|結論から考える
- 仮説思考とは,限られた時間しかなく,情報がない中でも,目標達成や問題解決に向けた仮の答え(仮説)をまずは決め打ちした上で,先に進んでいく発想法.
地頭力の基本は,「結論から,全体から,単純に考える」ことです.
仮説思考(力)とは,「結論から考える」ことであり,地頭力を構成する基本の要素の一つでもあります.
「ベクトルを逆転する」あるいは「逆算して考える」のが仮説思考です.
「はじめ」からではなく「おわり」から考える.「できること」ではなく「やるべきこと」から考える.
「自分」からではなく「相手」から考えることを意味しています.
WHY|不確実性が高い状況にこそ相応しい
- 仮説思考は,スピード重視の拙速主義とも言える.
- 仮説思考を用いるのに相応しいのは,「不確実性が高い」状況下.
- 新規事業など新しいことをやるときや,従来のやり方を変えるときなど.
製品開発では,新しいコンセプトのものを開発する場合に「プロトタイプ」(試作品)を何度も作り直しながら進めていくアプローチを取ることがあります.
仮説というのはいわば「思考のプロトタイプ」と言えます.
したがって,良い仮説というのは良いプロトタイプと同様で,完成度が高いというよりは,
むしろ低くても全体のイメージがわかることや全体を作り上げることで「何がわからなかったか」がわかるようにすることが重要です.
一度で完成させるのではなく,なるべく早めにラフな全体像を作り上げてしまうことが仮説思考でも求められるのです.
HOW|実践の第一歩は「完璧主義」を捨てること
キーワード04|フレームワーク
WHAT|思考の偏りを矯正してくれる「型」
- フレームワークとは,客観的な思考のいわば「型」のようなもので,自分だけで作り上げた偏った思考,「思考の癖」を矯正してくれるイメージ.
- 良くも悪くも,「型」のようなものであるということが,フレームワークの長所であり,短所にもなる.
WHY|基本の確認やアイデア抽出の助けになる
HOW|使いどころを間違えてはいけない
キーワード05|具体と抽象
WHAT|「犬」という言葉(概念)でまとめるのが抽象化
- 思考とは,「具体的事象を抽象化して概念化する」ことと,「抽象化された概念を具体化する」ことに分解することができる.
- 具体とは形があって「目に見える」ものであるのに対して,抽象とは形がなくて「目に見えない」もの.
- 抽象化:「複数のものをまとめて,一つのものとして扱う」
- 「犬が2頭」と数えることができるのも抽象化のおかげ
WHY|具体と抽象の往復で知は進化する
- 人間が頭を使って考えるという行為は,ほとんどが何らかの形で「具体と抽象」の往復をしていることになる.
- 複数の具体的な事象が一般化・抽象化されることで理論化・法則化して,だれにとっても役立つ汎用的なものになる.
キーワード06|「なぜ?」
WHAT|「それはなぜか?」を突き詰めて考える
- 思考と切っても切れない疑問詞,それが「なぜ?」.
- 「Why型思考」の対極が,上司や顧客に言われたことを何も考えずに「そのまま」実行する,すなわち思考停止につながる「What型思考」.
WHY|Whyだけが「線」で「つなげる」
- 「4W」は「点」であるのに対して,Whyだけが「線」:
- 「線」はつながりがあるが,「点」はつながりがなく,展開がない.
HOW|「4W」は知識を問い,「Why」は本質を探る
- 「なぜ?」を考えるのは単なる知識だけでなく,その背景や理由,目的という「直接見えない」ことから多くのことを洞察することにつながっていく.
- 「4Wを質問する」という知識不足を露呈することとはまったく逆に,「なぜ?」を問うことこそ物事の本質を探るための思考の原点であると言える.
キーワード07|アナロジー思考
WHAT|「アナロジー」と「パクリ」との違い
- 創造性の根本は「借りてきて組み合わせる」こと:
- アナロジー思考:
- 他の業界やビジネス以外の世界で行われていることを参考にして,自分の業界や製品・サービスに適用できないかと考えること.
- アナロジーは,「遠くから」アイデアを借りてくる.
- 「遠くから」とは,「一見しただけではわからないような抽象度の高い共通点」を持ったものから借りてくることを意味する.
WHY|その可否が機会発見の分かれ目になる
- デジタル化が進んだ世界では,これまで以上に業界や商品・サービスを超えたアナロジーの応用が進む.
- 一つの事例を見て,それを抽象化してアナロジーで他の応用を考えられるかどうかは,ビジネスにおける機会発見の重要な分かれ目になる.
HOW|ロジカルシンキングは「守り」でアナロジーは「攻め」
- 「守り」は,データやファクトをベースに論理的に考えること,つまりロジカルシンキング.
- 「攻め」は,創造的に斬新なアイデアを考える.
- 単なる数値計算だけであればコンピュータの方が優れている.人間に求められるのは,仮説を立てる力.
Chapter2|二項対立で考える
キーワード08|二項対立
WHAT|「白か黒か」だけではない
- 本書では,「対立概念を表現する」ことを「狭義での」二項対立と定義し,「概念を二分する」ことを「二者択一」あるいは「二分法」として区別する.
- 「二者択一」あるいは「二分法」:
- 「賛成か反対か」「AをとるかBをとるか」「白か黒か」と物事を真っ二つに分けて考える発想
- 二項対立は,途中に明確に線が引かれていない連続変化で,二項対立は抽象レベルでの話.
- 二項対立が二者択一に見えてしまうのは,すべてを具体レベルでしかとらえないために起きる誤解.
- 「二者択一」あるいは「二分法」:
WHY|抽象化のための基本中の基本の頭の使い方
- 二項対立は,思考の基本中の基本である「抽象化」において必須の概念.
HOW|MECEや思考の軸とセットで考える
- AかBかという二項対立を考える上では,「対立軸」が必要になる.
キーワード09|因果と相関
WHAT|因果は「A→B」,相関は「A↔B」
- 因果:原因と結果,またその関係を表す
- 相関:2つの事象が密接に関わり合っていることを意味する
- 因果があれば必ず相関があるが,相関があるからといって因果があるわけではない.
- 相関は客観的な事実だが,因果は何らかの人間の解釈が入っていることが多い.
- 要は気をつけないと,因果は恣意的な解釈が可能だということ.
HOW|AIで相関関係を見つけ,人間が因果関係を見出す
- AIは,巨大なデータ量を基にして,さまざまな事象の間の相関関係を見つけることが人間に比べて圧倒的に得意.
- オンラインショッピングにおけるリコメンド機能
- 「Xを買った人の〇〇%がYも買っている」といった「事実」としての相関関係を見つけるのは,コンピュータが得意中の得意とすること.
- オンラインショッピングにおけるリコメンド機能
- AIが出してきた相関関係から何らかの仮説を立てて,そこに因果関係を見出していくことが求められる.
キーワード10|演繹と帰納
WHAT|論理を展開するための古典的な2つの方法
- 演繹とは,一般的な前提から,個別的な結論を出そうとする論理的推論の方法.
- 帰納とは,個別的なさまざまな事例から,一般的な法則を見出そうとする論理的推論の方法.
- 要するに,演繹法とは「そう決まっているから」という推論で,帰納法とは「多くがそうだから」という推論.
HOW|「演繹」や「帰納」で説得力を高める
- ICT化によるデータ活用によって重要性が高まっている統計も,基本的には帰納的推論の世界となる.
- 「データから傾向をつかむ」というのが,まさに帰納的推論.
- 少数であっても「外れ値」が存在することがそれを表している.
キーワード11|発散と収束
WHAT|発散で多くのアイデアを出し,収束でまとめる
- 情報やアイデアを出すのが発散,まとめるのが収束.
- 見落としがないように十分に発散させてから,各々の原因の仮説を一つひとつ評価する.
- そうすることで,最終的に最も可能性の高い原因を特定していくという過程を経ることが重要になる.
HOW|「いまはどちらのフェーズか」を常に意識する
- 発散フェーズと収束フェーズの目的や位置づけを明確に意識して,常に「いま自分はどちらか?」を意識しておくことが重要.
- 優先順位付けとその評価のためのクライテリア(評価基準)が重要.
- 評価には,リスクとリターンを縦軸と横軸にとったマトリックスがよく用いられる.
キーワード12|論理と直観
WHAT|論理は守りで直観は攻め
- 創造的に新たなものを生み出していくためのブレークスルーには,論理だけでなく,経験や知識に裏づけられた直観というべきものが重要.
- 直観力とはまさにアートであり,経験と訓練によって直観力が高まり,「勘」というべきものが身に付いてくる.
- 地頭力の構成要素である仮説思考力,フレームワーク思考力,抽象化思考力の3つの思考力には,いずれも論理思考と直観の両方が必要とされる.
- 仮説思考では,とにかく最初に仮説を立てる,という段階で,
- フレームワーク思考では,最初に「全体像をイメージする」という段階で,
- 抽象化思考では,最初の抽象化・モデル化の段階で,直観力が必要になってくる.
- ロジックが客観性を担保して万人にわかりやすくするものであるのに対して,直観は主観の塊.
- ロジカルに導き出した結論は良くも悪くも誰がやっても同じ結論が出るが,直観は逆に結論が同じでは意味がないということになる.
HOW|川上の直観,川下の論理
- 仕事の段階を表す表現で,何ごとも初めの段階が川上で,徐々に進捗していくとそれが川下に推移していく川の流れにたとえるもの.
- 仮説を立てるときには直観重視であるのに対して,それを検証する段階では論理やデータが重要になる.
キーワード13|論理と感情
WHAT|それぞれ効果的な「使いどころ」がある
- 論理とは「いつでも」「どこでも」「誰でも」一貫していることが求められる.
- 論理的に正しい(間違っている)ことは,日本でも海外でも,大人でも子供でも,すべて正しい(間違っている)という点で一切のブレがないのが論理の特徴.
- 対して感情の世界は,「状況により」「機嫌により」「相手により」大きく変わるのが特徴.
WHY|論理と感情,どんな場面で有効なのか?
- 「B2C」型のビジネスにおいては感情面を考えることは特に重要になる.
- この場合でも商品の製造や開発工程のような「モノ」が主役となるような場面では論理が重要になる.
- 「計画を立てる」場面では「論理」が重要,「施策の実行で『人を動かす』」場面では「感情」が重要など,うまく使い分けをすることが重要.
キーワード14|川上と川下
WHAT|考えるのが必要なところと必要でないところ
- 川上:
- 新たなプロジェクトを構想したり,商品・サービス,ビジネスモデルを考えたりするコンセプトづくりや企画の段階.
- 人間の考える力が必須であり,その重要性が高まっている.
- 川下:
- コンセプトやビジネスモデルが確立して,それを具体化,実行する段階.
- 定型化される度合いが大きくなるため,AIの発達によって,急速に機械化が進んでいく領域.
WHY|使いどころを間違えてはいけない
- 20世紀後半の「日本の繁栄の時代」の背景には,日本人の得意分野が見事に川下側にはまっていたことが挙げられる.
- 川下の「ある程度,原型が出来上がっているものの品質や完成度を上げて大量生産する」という日本が得意とするビジネスモデルと時代が合致していた.
- ところが,21世紀になってからは,この構図がものの見事に崩れ,時代のニーズは「川上側」にシフトしてきた.
HOW|「いまどちらの話をしているか?」を考える
- 川上の長期計画,川下の短期実行:
- 川上の長期的な戦略を考える上で必要なのは「考える力」
- 川下の実行の場面では,考えすぎずに,とにかくやってみること.
Chapter3|コンサルタントのツール箱
キーワード15|ファクトベース
WHAT|「主観的な解釈」は外して考える
- 「ファクト」とは,「主観による解釈の相違が起こらない客観的なデータ」を指す.
- 客観的であるということは,そこに人によって異なる「解釈」が入っていてはいけないということ.
- 認識=事実+解釈 → 事実=認識ー解釈
HOW|「ファクトベース」はロジカルシンキングの前提
- ロジカルシンキング=ファクト+ロジック
- ファクトとは,「いつ」「どこで」「誰が」をできるだけ具体的に,例えば固有名詞や数字で表現したもの.
- ファクトに基づくファクトベース思考によって,思い込みにとらわれることを避ける.
キーワード16|MECE
WHAT|「モレなく,ダブりなく」=全体を部分に分解する
- 「Mutuallly Exclusive and Collectively Exhaustive」
WHY|無駄な作業や後戻りが減る
- MECEは基本的に「全体を部分に分解する」ための方法論
- 問題の原因や具体的な解決策を「モレなく,ダブりなく」考えることで無駄な作業や後戻りが減って,効率的に仕事を進めることができる.
キーワード17|ロジックツリー
WHAT|ロジック(論理)をツリー構造で表す
- ロジックツリーとは,何らかの課題に対しての解決策の①全体像を網羅的に,②ツリー構造で,③要素間の関連性を表現した図解の方法.
WHY|「形から入る」ことで論理的に表現する
- ロジックツリーを作ることのメリット:
- 思考の癖に気づき,盲点を発見できる.
- 知識や情報量が十分にない分野でも,効率的に全体像を作ることができる.
- 全体像を見ることで,個別の要素の優先順位付けが容易になる.
- 上記によって,他社との情報共有やそれを基にした議論がしやすくなる.
- ロジックツリーとは,さまざまな課題に対して「まず形から入る」ことで,無理矢理にでも誰にでも理解できる論理的な表現をしてしまおうということ.
HOW|目的によってさまざまなツリーを活用
- 原因を深掘りするためのWhyツリー:
- トラブルが起こったときにその原因を網羅的に追求するためのツリーで,製造や開発の現場などでよく用いられる.
- 一つの結果である事象に対して,複数の原因の可能性をMECEで網羅的に辿っていく方法.
- N段目とN+1段目の関係は「なぜ?」で接続される.
- 全体を部分的に展開するためのWhatツリー
- 全体を部分にMECE分解して各々の施策を抽出するといった場面で用いられる.
- 視点のモレをなくし,思い込みを排して客観的に全体を眺めて見る場合などに用いる.
- 目的に対する手段や施策を抽出するためのHowツリー
- 一つの目的に対しての打ち手を網羅的に抽出するような場面で適用することができる.
キーワード18|2✕2マトリックス
WHAT|頭の中を整理することで問題解決の糸口を探る
- 世のさまざまな事象やデータを4限にマッピングすることで,そこから問題解決の糸口になるようなメッセージを導き出す.
HOW|マーケティングや時間管理にも使える
- 時間管理のマトリックス:
- すべての活動を,緊急度と重要性という2つの軸によって4つの領域に分ける.
- 「緊急/緊急でない」「重要/重要でない」の組み合わせで活動を分類することで,自分が取り組むべきことの優先順位が見えてくる.
キーワード19|フェルミ推定
WHAT|シカゴにピアノ調律師は何人いるか?
- 一見荒唐無稽に見えるような,膨大な,つかみどころのない数量を限られた時間で推定する手法.
WHY|仮説検証に求められる「フェルミ推定的」な考え方
- まずは仮説を立てて,次のアクションを起こして実行につなげる.そこでまた仮説を検証するという一連のプロセスの中で,「フェルミ推定的」な考え方が強く求められる.
- デザイン思考:
- プロトタイプを多頻度で繰り返すことが特徴の一つ.
- フェルミ推定はいわば「思考のプロトタイプ」とも言える.
- 完成品と比較したプロトタイプに求められる要件:
- 完成度は低くても全体像を作ること(逆に「一部だけ完璧」でも意味がない)
- 次のアクションのためのさまざまな課題や問いを提示すること
HOW|重要なのは「正解」ではなく「思考プロセス」
- 重要なのは「答えに至るまでのプロセス」であり,「おおよその桁数」が算出できていれば答えそのものに重要性があるわけではない.
- フェルミ推定におけるチェックポイント:
- 「知らない」とあきらめずに,知っている情報だけでなんとか仮説を作り上げる
- 重要なのは,「いまある時間と情報でまずはなんとかしてみる」という発想.
- 完璧主義を捨て,とにかく全体像を作り上げる
- フェルミ推定の目的は「何がわからないのか?」あるいは「何を知れば実態に近づけられるのか?」を明確にして最終的な意思決定につなげること.
- 「知らない」とあきらめずに,知っている情報だけでなんとか仮説を作り上げる
Chapter4|AI(人工知能)vs. 地頭力
- 広義でとらえる問題解決は,次の2つのフェーズに分けられる:
- 川上側の「そもそもの問題を発見し,定義すること」
- 川下側の「定義された問題の解を導き出す」
- AIが圧倒的な優位性を示すのは後者の(狭義の)問題解決
キーワード20|地頭力
WHAT|3つの思考力と3つのベースの組み合わせ
キーワード21|問題発見と問題解決
WHAT|問題発見と問題解決では思考回路が異なる
- 今後のビジネスでは,問題解決よりも問題発見の重要性が高まっている.
- 問題発見:問題を発見して,それを定義すること.
- 問題解決:定義された問題を,適切な方法で解決すること.
WHY|「川上側」の問題発見の重要性が高まっている
- 川下側の「狭義の」問題解決の場面で重要なのは,「与えられた明確な問題を効率的に解決できる,豊富な知識を持った専門家」.
- 重要性が高まってきた問題発見の領域で力を発揮するのは,「そもそもの問題を疑ってかかり,自分の頭で考える」能動的なタイプの人.
HOW|問題発見と問題解決の「使い分け」
- 上司や顧客に「言われたこと」をやるのが問題解決,「言われていないが大事なこと」を能動的に抽出するのが問題発見.
キーワード22|AI(人工知能)
WHY|「AIが得意なこと」と「AIが不得意なこと」がある
- AIは与えられた問題を解くのは得意だが,自ら問題を発見することはできない.
- 最適化すべき指標や変数が決まっている問題は,AIが得意とするところ.
- 思考とは基本的に抽象概念を扱うことであり,ここに今後の人間の知的能力としての思考力の優位性が保たれる可能性がある.
キーワード23|ビジネスモデル
WHAT|モデル=抽象度の高いパターン
- モデル:個別の施策や戦術ではなく,どの業界にも汎用的に適用できるような収益の上げ方のパターン.
HOW|ビジネスモデルはアナロジーで活用できる
- 物事の構造を見抜き,一見異なる者同士である「遠くのものをつなげる」のがアナロジー思考力であり,ビジネスモデルを論じる上では必須のスキル.
キーワード24|多様性
WHAT|多様性とは「指標を増やして考える」こと
- 新しい指標というのは,自ら見つけるのは至難の業.
- 他者を見ての「気づき」による発見のほうが圧倒的に容易.
- 異なる他者を見ることで初めて,自らにない視点に気づくことができる.
HOW|相手の価値観を受け入れ「自分を変えてみる」
- 「多様性を受け入れる」とはどういうことか?:
- 自分が「当たり前だ」「常識だ」と思っていることを否定されて不快に思うような場面で,相手を変えようとするのではなく,その価値観を受け入れて「自分を変えてみよう」としてみること.
- 「新しい視点を探す」ことの近道は,「自分が理解できないもの」からスタートすること.
キーワード25|未来予測
WHAT|未来はすでに起こっている
- 5年後,10年後,せいぜい30年後といった未来に関しては,すでに一部で起こっていることが一般化しているというパターンがほとんど.
WHY|アマゾンは書店の代替ではない,と気づいたか
- 世の中の動きは一つの具体的な事例の特徴がビジネスモデルとして抽象化されて,やがて他のものにも展開されていく流れをたどっていく.
HOW|「具体→抽象→具体」で未来を予測する
- 具体例を抽象化することで,限りない応用の可能性が出てくることに気づけば,「未来を予測する」ことが可能になる.
Chapter5|「無知の知」からすべては始まる
- 思考回路を起動するのに必須の基本的姿勢は,「いかに自分が知らないか」を自覚すること.
- この場合の「知らない」は,身の回りのことに「気づいていない」ことを指す.
- 「無知の知」があるからこそ,何事も鵜呑みにはせずに疑ってかかり,常識にとらわれない発想をすることが可能になる.
キーワード26|無知の知
WHAT|ソクラテスだけが「無知」を自覚していた
- 「無知の知」:
- 自分は他の誰よりも何も知らないことを自覚している
WHY|「無知の知」vs.「無知の無知」
- 「無知の知」を強く自覚している人と自覚していない「無知の無知」の人では,日常の行動において,例えば以下のような違いが現れる:
HOW|「未知の未知」=「問題発見」の領域
- 人間が優先的に取り組むべき課題は,「未知の未知」の領域に目を向ける,つまり問題発見になってきている.
キーワード27|知的好奇心
WHAT|好奇心とは「知らないもの」への探究心
- 知的好奇心は思考力を起動するための能動性を生み出し,現状に飽き足らない向上心へとつながっていく.
WHY|能動的に考えることの源が知的好奇心
- 「考える」とは純粋に能動的な行為であり,そこが受動的でもなんとかなる知識の習得とは決定的に違う.
- 知的好奇心の旺盛な人は現状を繰り返すことを潔しとせず,常に新しいものへと外向きに思考が向かっていく.
- (他人や前例と)「同じこと」ではなく「違うこと」に意識が向かい,常に現状を変革し,向上させていく.
キーワード28|能動性
WHY|思考型と知識型とは教育方法がまったく異なる
- 「言われたことを従順にこなす」オペレーション型の人材育成から「新たな発想で未来を切り開いていく」イノベーション型の人材育成に変えていく必要がある.
HOW|「知識型教育」の従来の常識を覆す
- 教育スタイルを従来の「知識や規則重視」から「思考力重視」にする必要がある.
- 全員一律でなくていい
- 必修ではなく選択式でいい
- 効果を定量的な指標で測る必要はない
- 勉強することに「好き嫌い」があってもいい
- 能動的な姿勢は常に自責とセットであり,「自分なら何ができるか?」という問いを発することになる.
- それが能動的な考える姿勢へとつながっていく.
キーワード29|常識の打破
WHY|常識に「とらわれていることに気づいていない」から
- 「常識にとらわれている」状態は,そこから抜け出してから初めてわかる状態であって,そこにどっぷり浸かっている人にはその状態が見えない.
HOW|「レストランの常識」を打破してみる
- 「そんなことあり得ないでしょ?」と反応したくなることこそが最も重要な「常識の打破」になる.
- 「常識を打破する」よりも「何が常識なのか」を改めて考えてみることのほうが難易度がはるかに高い.
キーワード30|「疑う」こと
WHAT|自分の頭で考えるとは「疑う」こと
- 無知の知を意識した後に意識すべきことは,周りのすべてを疑ってかかること.
- 「自分の頭で考える」とは,すべてを「疑う」ことでもある.
- 逆に言えば,ありとあらゆるものを「信じてはいけない」ということ.
- 「自分の頭で考える」とは,このような発想を捨てて「自分はどう考えるのか?」とまずは「すぐには信じない」という姿勢を貫くこと.
WHY|他人の言いなりでは思考が深まらない
- 考えるとは,何かの結論や主張に「自分なりの見解」を付け加えること.
- 深い思考をする上では簡単に物事を信じないという姿勢が重要.
HOW|ビジネスの現場で疑うべきこと
- 顧客の要望を疑ってかかる:
- 「もし顧客に何がほしいのか尋ねたら,『もっと速い馬がほしい』と答えただろう」
キーワード31|認知バイアス
WHAT|「思考の癖」の正体
- 人は皆物事を見るのに必ず何らかの偏った見方をしている.
- 無意識のうちに「眼鏡をかけている」ことに気づかず,しかもその眼鏡は曇っていたり,特定の色しか見えなかったり,歪んで見えたりしている.
WHY|自分に都合の良いものだけを見たい
- 世の中の発信者は基本的に「成功した人」であり,「インタビューされる人」はほとんど「報われた側」に偏っている.
- 人は成功したときには「それが必然である」と思いたがり,失敗したときには「運が悪かった」と思いたがる傾向がある.
キーワード32|メタ認知
WHAT|自分を客観視できるか?
- メタ認知とは,認知を認知する,つまり自分を客観視すること.自分の思考や行動そのものを客観的に把握し,認識すること.自分自身の思考や行動を上から見るイメージ.
WHY|「自分は〇〇ができていない」という自覚こそが大事
- 「仕事ができる人」は「自分は何ができていないのか?」を客観視しているために,次々に自らがやるべきことを見つけて成長していく.