達人のサイエンス

達人のサイエンス―真の自己成長のために

達人のサイエンス―真の自己成長のために

はじめに

  • マスタリーとは,「初めに困難であったことが,練習や実践を重ねるにしたがい,しだいに簡単で楽しいものに変わっていく不思議なプロセス」である.

第1部 達人の旅

第1章 「マスタリー」とは何か?

  • どれほど聡明であっても,達人への道を選ばないかぎり,その天賦の才は水泡に帰すか,またたく間に燃え尽きてしまう.
  • しかしこの旅路を選ぶなら,われわれは前途多難ではあっても生命力に満ちた道を進んで行ける.
  • マスタリーの旅をするには,自己の技能を磨き上げ,次の段階の能力を得ようと勤勉に練習しなければならない.
  • そしてかなりの時間をプラトーで過ごし,その間はたとえ先が見えなくても,練習を続けなくてはならない.

第2章 ダブラー,オブセッシブ,ハッカー

  • ダブラー(Dabbler):心があちこち移ろいやすいタイプ
  • オブセッシブ(Obsessive):考え方が偏狭でゆとりないタイプ
  • ハッカー(Hacker):意気地がなく熱心さにかけるタイプ

第3章 マスタリーへの道とアメリカとの戦い

  • マスタリーとは即座の結果を求めない,不断の努力に支えられた忍耐の道である.

第4章 プラトーを好きになるには

  • 人生の中身は,その成功・失敗にかかわらず,人生のプロセスそのもの,自分が今生きていることをどう感じているかで判断されるべきであり,必ずしも努力の成果だけで判断されるべきではない.
  • プラトーというなかなか成果が見えない努力の時期を価値あることとして認め,楽しく生活し,しかもそれが好きになれるような教育が,家庭や学校や職場など,どこで行われているだろうか?
  • たとえ世間に評価されなくとも自分の仕事を愛しながら満足して仕事を続けられれば,それが自分のいちばんの糧である.
  • プラトーを愛するとは,永遠の「今」を愛することであり,必ず訪れる上達のスパートを楽しみ,達成という果実を味わうことであり,さらにその後すぐに訪れる次のプラトーを澄んだ気持ちで受け入れること.

第2部 達人への五つのキーポイント

  • 「人間とは学習する動物である.」
  • 遺伝的にプログラムされてはいない技能をマスターすることが,人間のあらゆる活動において最大の特徴であるといえる.

第5章 キー1・指導

  • 一流の教師は,生徒の間違いを指摘したら,その分だけ生徒の正しさを指摘するように努めている.
  • 初心者を熱心にかつ上手に教え,普通より覚えが遅いし才能にも乏しい生徒をマスタリーに導くという能力こそが,教師という技能の本質である.
  • 不思議なことに,たぐいまれな才能を持つ生徒がマスタリーへの途上で苦労することは少なくない.
  • 辛抱してたゆまぬ練習を続けるうちに,真髄を学びとる.
  • 学習の本質的な部分は学習者と教える側との相互作用からなっており,その効果は相互作用の回数,質,種類,強さに関係している.

第6章 キー2・練習と実践

  • 達人と言われる人は,自己の技量を伸ばすことだけが目的で何かの技能に専念するのではない.ほんとうは,彼らはまず何よりも練習が好きなのであって,その結果,上達は後からついてくるのだ.そして上達すればするほど基本の動きを繰り返すのが楽しくなる,というサイクルができ上がる.
  • どんな競技の場合でも,達人はたいてい練習の達人である.
  • 定期的に練習するのは最初はけっこう面倒に感じる.だが,練習することが生活のメインになる日が必ずやってくる.時の経過や世界の騒がしい動きに関知せず,安楽椅子に腰を下ろすように,練習をやすらぎと思えるようになる.そして翌日も同じだ.その状態は決してあなたのもとを去ることはない.
  • マスタリーとは何か?核心を言えば,マスタリーとは練習や実践のことであり,達人の道にとどまることなのである.

第7章 キー3・自己を明け渡すということ

  • 「自己を明け渡す」とは,先生の指示に従い,自らが課した規律の求めるところに従うという意味である.
  • また,場合によってはさらに高い,あるいは異なった技能レベルに到達するために,自分が苦労して得た技能を捨てることでもある.
  • 初心者が自分のプライドを後生大事に守ろうとすると,学習はうまく進まない.

第8章 キー4・思いの力

  • イメージングには驚くべきパワーがある.
  • 「まずビジョンを作ること,それがすべてです.特に美しいビジョンを見ることができれば,そこから『願望というパワー』が生じます.」
  • 思いの力は達人の旅にとってエネルギー源となる.すべての達人は,ビジョンを思い浮かべる達人なのだ.

第3部 マスタリーへの旅じたく

第10章 決意がくじける理由

  • 問題なのは「ホメオスタシス」(恒常性)が,現状があまりよいものでなくても,それを維持しようと働き続けてしまうことである.
  • ホメオスタシスは,あなたにとってその変化がいいのか悪いのかを区別できない──これは忘れないでおこう.
  • 重要なのは,ホメオスタシスからの抵抗と揺り戻しをあらかじめ想定しておくこと.
  • なにか新しいことを始めて変化に直面する場合,その前になにか別のことで規則的な練習の習慣がすでに身についていれば特に幸運である.
  • 練習は習慣であり,何かを規則的に練習し続けていけば,変化という不安定な状態の中にあっても安定のベースとなるような,基礎的なホメオスタシスが得られる.
  • 学ぶとは,変わることである.
  • 最高の学習は,「学び方」すなわち自分が変わる方法を学ぶことにある.

第11章 マスタリーのエネルギーを得るために

  • 「強制や義務感によって洞察や探求の喜びを引き出せると思うのは,とんでもない誤りだ.」
  • 否定的な意味で厳しい批判をあびせるような教師や指導者は,できるだけ避けたい.

第12章 マスタリーの道での落し穴

  • 苦労して手に入れた自分の技能をさらに高いレベルにまで磨くチャンスとして,競争を利用しよう.
  • チャンピオンになったランナーのスピードが伸びなくなる最大の要因は,新記録を達成してしまうか重要なメダルをもらうことだという.
  • 達人とは,明けても暮れても道を歩み続ける人間なのだ.進んでトライし,失敗し,そしてまたトライし,生きている限りそれを続ける人間のことなのだ.