見抜く力
はじめに
- 問題が解決したらそれで終わり,というケースが多い.
- なぜこの問題が起きたのか,他にも類似の問題は起きていないのか,再発防止策は十分か,などと「なぜ」「なぜ」「なぜ」と繰り返し思考することで,初めて問題の本質が見えてくるのに,そこまで突き詰める習慣がない.
- 見抜く力(洞察力,見識)=深い知識(知恵)+正しい経験の積み重ね
- 一流の人は,例外なく読書家であり,美術,音楽,工芸など幅広い教養の持ち主である.
- 本質的なことは,シンプルで,美しい
- 見抜く力とは,言い換えれば,シンプルで美しい本質に,素早くたどり着く力,ということである.
第1章 利益が出ない原因を見抜く
- 業績のよくないダメな会社や組織には,
①トップ(リーダー層)がたるんでいる
②受動的・指示待ちの人が多い
③売上の20~30%のムダがある
という3つの共通する特徴がある. - 業績がよくないということは,要するに人が利益の出るような働き方をしていない,ということである.
- 上が現場主義に徹し,下をちゃんと見る,目を光らせる,というのは,組織に緊張感をもたらし,だらけさせない最良の方法である.
- 会社に利益をもたらすのは,言われなくても自分で考えて会社のために積極的に動ける能動的な人であって,言われたことしかできない指示待ちの受動的な人ではない.
- 何かをなすために社員に努力を強いるなら,何のためにそれをやるのか,それを達成したらどうなるのか,納得するだけの理由や,達成後の会社の姿を示す必要がある.
- 何かを変えようと思ったら,まずは一番やりやすく,成果の出やすいところから手をつけるのがセオリー.
第2章 人間の本質を見抜く
- すべての仕事の基本は,「相手の立場に立って考える」こと.
- 相手が何を望んでいるか,困っていることはなにか,不安に思っていることはなにか,あったらいいなと思ってることはなにか,といったことについて深く思いを巡らせ,その上で,だったらそのために自分は何ができるのか,何をすべきなのかと考えるのが基本である.
- 相手の立場で考えられる,というのは,仕事をする上で何より大事な資質である.
- 素直に謙虚に「教えて!」「助けて!」と言える人は,過信や傲慢,独善とは無縁であり,人の話はよく聞くし,すべてに学べる柔軟さもある.だからわからないことがあれば,すぐにわかる人に教えを請うことができる.結果,達成すべき目標に効率よくたどり着くし,何よりミスが少ない.仕事をする上でとても大事な資質を備えていると言ってよい.
- 何を課題とし,そのために何を行い,結果はどうだったのか,今後の課題はなにか.
- 部下には言いたいことを言わせたほうがいいし,やりたいことはやらせたほうがいい.なぜかというと,抑えつけると必ず不満を持つようになるから.
- 「やらせてくれ」という人間は能動的だから,成長も早い.
- 「迷ったら必ず上司に相談する」,これを習慣にしておけば,まず間違うことはない.
- 上司に途中経過を全く報告しないで2週間で成果を出した部下と,こまめに報告しながら1ヶ月で成果を出した部下なら,私は断然,後者の部下を評価する.
- メーカーには,「不良の7割は設計工程に起因し,残りの3割は生産工程に起因する」という経験則がある.つまり,不良の原因の多くは開発部門にある.
- 「社会的手抜き」という現象.
→ 集団で共同作業をすると,人数の増加に伴い,一人ひとりが徐々に手抜きをする.(例:綱引き)
→ 生産性が落ちているときは,人数を減らしたほうが,かえって生産性が上がることがよくある. - 設計開発の部署などは,あまり人と人との距離が近いレイアウトだと,いい仕事ができなかったりする.1人静かに集中して考えたり,作業をしたりする時間が必須だから.
- リーダーは,人間の特性について学び続けないといけない.心理学とか.
- 変化のスピードが早い現代では,「素早い判断,素早い行動,素早い反省」の3Sが大切.
- 真剣に仕事をしている中で出会い,一緒に仕事をしたり,お互いに困っているときに助け合ったりすることで,初めて人脈は育ってくる.
- 「人には親切にする」こと,「Give and Take」でまず,先に与えること.
- 面接では,どれだけ自分の哲学を持っているかに注目.
→ 失敗談や困難に直面したときの話などを交えながら,なぜ,自分はそうしたのか,そうしようと思ったのか,などをきちんと語れるなら,まずは○印を付けていいと思う. - 自慢話だけをするのは論外である.それはできる,あれもできると自信満々に言うタイプも要注意.「オレが,オレが」とでしゃばるのは経験的に一番ダメである.
- ほんとうに仕事ができる人は,素直で謙虚であり,どこへ異動になろうが,そこでいい仕事をするものだ.置かれた場所できれいな花を咲かすことができるのである.
- 謙虚に「自分なんでまだまだ」の意識で,常に人の優れた点に学ぼうとし続けてこそ,成長できる.努力のないところには,進歩も成功もないのだ.
第3章 自分と会社の強み,弱みを見抜く
- いろいろな分野で自分の弱みを補ってくれる優秀な人材を見つけ出し,良い関係を築いておくことは,よい仕事,より大きな仕事をするための最大の決め手と言ってよい.
- まわりをうまく使っていい仕事ができるというのは,会社組織においては我が身を守るための何よりの武器であり,担保となるのである.
- 尊敬する先輩たちは,「飲み食いする暇があったら,さっさと家に帰って勉強する」と言って,常に自分を鍛えることを忘れなかった.
- 大事なことは,自惚れないことである.たとえ業界トップと言われるようになっても,自分が一番だと思った瞬間に,謙虚に学ぶ心は失われる.そこから転落の道は始まる.
- 新しい開発テーマを見つけたら,粘り強く開発を続けることだ.途中でやめてしまえば,そのテーマは二度と日の目を見ることがないだろう.逆にやめると決めたら,スパッと諦める.未練がましく振り返らない.それが開発の基本だ.
- 新規の事業は,「コア技術と他の技術の組み合わせ」である.
第4章 時代の変化を見抜く
- どういう製品が登場したら,自社の開発した製品は売れなくなるかを考える.
- 先を読むには,現時点から未来を見るだけでなく,過去からも未来を考えること,これを習慣にすることである.
- デジタルの時代ではデザインが製品の価値を大きく左右する.
- 日本は美的センスが決定的に欠如している.
- 美的感覚の基本は「シンプル・イズ・ベスト」である.
- やるべきこと,伝えるべきことの本質をきちんと理解していれば,自ずとシンプルで美しい,自分の言葉で語ることができるはずだ.
- 休みの日や会社の帰りなどに美術館や画廊に行く,音楽ホールに足を運ぶ.それをぜひ習慣にしてほしい.そうやって本物の絵や音楽に触れる機会を増やしていけば,あなたの美的センスは,自分でも気づかないうちに,少しずつ磨かれていくはずだ.
- 自分を高めようと思ったら,本物に触れることである.
- 本の読み方として,
①読みながら大事な箇所に線を引く
②スマホで該当箇所を写真に撮る
③あとで手書きでノートにまとめる - 知識というものは,それを簡略化して,いつでも使えて,行動に移せる「知恵」にしてこそ意味がある.
- 常に未来をイメージし,あらゆることに興味や関心を持ち,自ら学ぶ姿勢が欠かせない.
- 書店は,時代の変化やトレンドを知る最も身近で有益な観測スポットである.
- 最終的な目的,ゴールさえ明確ならば,そこに至る道はいろいろと変更して構わない.大事なのは,壁にぶつかったときに,一歩引いて俯瞰することだ.そうすれば,急流に飛び込んで自滅しなくてすむ.