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理科系の作文技術

 

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 

1 序章

1.2 この書物の目標

  • 読者に伝えるべき内容が,事実(状況を含む)と意見(判断や予測を含む)に限られていて,心情的要素を含まない.
  • 理科系の仕事の文書を書くときの心得は,
    (a) 主題について述べるべき事実と意見を十分に精選し,
    (b) それらを,事実と意見とを峻別しながら,順序よく,明快・簡潔に記述する
    ことであると要約できる.
  • 必要なことは漏れなく記述し,必要でないことは一つも書かない.
  • 事実と意見(判断)との区別を明確にすることがとくに重要.
  • 相手(読者)はまっさきに何を知りたがるか,情報をどういう順序に並べれば読者の期待に沿えるか,ということに対する配慮.
  • 明快に書くための心得3つ.
    (a) その表現が一義的に読めるかどうか─ほかの意味にとられる心配はないか─を吟味すること.
    (b) はっきり言えることはズバリと言い切り,ぼかした表現(...といったふうな,月曜日ぐらいに,...ではないかと思われる,等々)を避けること.
    (c) できるだけ普通の用語を使い,またなるべく短い文で文章を構成すること.
  • 不要なことばは一語でも削ろうと努力するうちに,言いたいことが明確に浮き彫りになってくる.

 

2 準備作業(立案)

2.1 準備作業の必要

  • 理科系の仕事の文書では,主張が先にあってそれを裏付けるために材料を探すなどということはありえない.
  • 書く作業は,主要構成材料が手許にそろってから始まるのである.

 

2.2 文書の役割の確認

  • 筆をとる前に,また書き上げたものを読み返す前に,いったい読者はこの文書に何を期待しているはずかと,一瞬,反省してみることを勧める.
  • 研究費申請書は,
    (a) その研究のねらいは何かを具体的に,明確に示し,
    (b) 自分がこれまでやってきたことと,これからの研究方針とを,専門家が読めばその研究がうまくいく確率を評価できるようにきちんと述べた.
    ものでなければならない.
  • その研究の価値と成功の可能性(feasibility)とに対する判断の資料を提供するのが申請書の役割である.
  • 必要上やむを得ず書くものは,相手は何を書かせたいのか,知りたいのかをとことんまで調べ上げ,考え抜くのが先決問題である.

 

2.3 主題の選定

2.3.2 一文書一主題
  • 一つの文書は一つの主題に集中すべきものである.
  • 別の主題が混入すると,読者に与える印象が散漫になり,文書の説得力が低下する.
2.3.4 読者
  • 主題の選定,あるいはその主題に関して取り上げるべき材料の取捨にあたっては,読者が誰であり,その読者はどれだけの予備知識をもっているか,またその文書に何を期待し,要求するだろうかを,十分に考慮しなければならない.

 

2.4 目標規定文

  • 主題をはっきり決めたら,次に,自分は何を目標としてその文書を書くのか,そこで何を主張しようとするのかを熟考して,それを一つの文にまとめて書いてみることを勧める.
    → 「この論文では,〇〇であることを示す.」
    → そういう文を目標規定文ということにする. 
  • 原著論文に必ず見られる<論議>または<考察>─discussion─という節の存在理由の一つは,都合の悪い材料もここであらためて取り上げ,自分の所説を再検討することにある.

 

2.5 材料あつめ

2.5.1 思いつくままのメモ
  • 終始そのことを考えているわけではないが心のどこかにそのことが潜んでいる,折に触れてそれが浮かび上がってきてしばらくのあいだ集中して考える──という状態をつづけるわけである.
2.5.2 ジャーナリストの定石その他
  • ある問題を論じるときにはまず
    (a) なにが問題なのかを明確にせよ.
    (b) それについて確実にわかっているのはどんな点かを明らかにせよ.
    (c) よくわかっていなくて,調べる必要があるのはどんな点かを明らかにせよ.
2.5.3 図・表
  • 理科系の仕事の文章では,しばしば図や表がいちばん大切な役割を演じる.
  • 図や表を準備することで,なにを書かなければならないかがはっきりする場合が多い.

 

3 文章の組み立て

3.1 記述の順序

3.1.1 起承転結
  • 序論で問題を示して,その背景とどうしてその問題を取り上げたのかを説き,つづいて実験の方法とその結果を記述する.
  • 次にいったん立場を変えて自分の研究に残っている問題点を吟味し,また自分の結果を他の研究者の結果と照合・検討した上で,結論をまとめる.
3.1.2 重点先行主義
  • 読者がその論文を読むべきか否かを敏速に判断する便を考えて,結論あるいはまとめの内容が<著者抄録>として論文の冒頭,表題や著者名などのすぐ次に印刷されることになってきたのである.
  • 表題は,的確に内容を示す具体的なものでなければならない.
  • 自分の論文を読んでもらえるかどうかは多分に表題と著者抄録とにかかっているのだから,著者がこの二つのなかにエッセンスをつめこもうと努力するのは当然である.
  • 表題か,あるいは書き出しの文を読めばその文書に述べてある最も重要なポイントがわかるように配慮すべきである.

 

3.2 序論

  • 必要なのは,
    (a) 読者が本論を読むべきか否かを敏速・的確に判断するための材料を示し,
    (b) また本論にかかる前に必要な予備知識を読者に提供する
    ことである.
  • (b)の内容としてふつうに要求されるのは,
    (ⅰ) 本論の主題となる問題は何か,
    (ⅱ) その問題をなぜ──どんな動機によって──取り上げたか,
    (ⅲ) その問題がなぜ重要か,
    (ⅳ) 問題の背景はどんなものか,
    (ⅴ) どういう手段によってその問題を攻めようとするのか,
    という解説だろう.

 

3.3 結び

  • 「なくてもすむことばは一つ残らず削れ」という,情報過多時代の要請.
  • 「あることが重要かどうかは読者が判断すべきもので,理科系の仕事の文書には<重要な>,<興味ある>,...という類の形容詞を混入させるべきでない」とする客観主義.
  • 一度書いたことは再び繰り返さず,どうしても必要なことだけを書き終わった途端に文章が終るのが通例になってきた.

 

3.4 本論の叙述の順序

3.4.1 概観から細部へ
  • そこで書こうとすることについてまず大づかみな説明を与えて読者に概観を示してから,細部の記述にはいる.
  • 文章の冒頭のみじかく要を得た記述によって概観がつかめれば,読者にとっては細部の記述を理解・吸収することが格段に容易になる.
3.4.2 細部の記述の順序
  • 記述・説明文の記述の順序をきめるにあたって肝心なのは
    (a) どういう順序で書くかを思い定めてから書き始め,途中でその原則をおかさないこと.
    (b) どうしても原則を守れなくなったら,潔く方針を立て直して最初から書き直すこと.
3.4.3 論理展開の順序
  • 論文は読者に読んでもらうものだから,自分がたどった紆余曲折した道ではなく,こうして見つけた最も簡明な道に沿って書かなければならない.
  • 説得を目的とする議論の文章の場合,
    (a) 従来の説,あるいは自分と反対の立場に立つ人の説の欠点を指摘してから自説を主張するか(これが普通のやり方).あるいは,その逆にまず自分の説を述べ,それにもとづいて他の説を論破するか.
    (b) いくつかの事例をあげて,それによって自分の主張したい結論をみちびくか.その逆に,まず主張を述べてからその例証をあげるか.
    (c) あまり重要でない,そのかわり誰にでも受け入れられる論点からはじめてだんだんに議論を盛り上げ,クライマックスで自分の最も言いたいこと──多少とも読者の抵抗の予期される主張──を鳴り響かせるか,その逆に,最初に自分の主張を強く打ち出して読者に衝撃を与えるか.

 

3.5 文章の構成案のつくり方

  • 文章の死命を制するのは,文章の構成──何がどんな順序で書いてあるか,その並べ方が論理の流れに乗っているか,各部分がきちんと連結されているか──なのである.
  • スッキリと筋の通ったものを書けるかどうかは,自分の書いたものを厳しく見直す能力と,何度でも書き直す根気とにかかっている.

 

4 パラグラフ

4.1 パラグラフ序説

  • ベタに文字が連続していると見ただけで気が重くなる.また,こういう書き方をされると,「要するに何が書いてあるのか」がつかみにくい.
  • 文章はどこで切ってパラグラフとすべきか.パラグラフの構成はどんな条件をみたすべきか.それがこの章の主題である.

 

4.2 パラグラフのみたすべき条件

  • パラグラフは,内容的に連結されたいくつかの文の集まりで,全体として,ある一つのトピック(小主題)についてある一つのこと(考え)を言う(記述する,明言する,主張する)ものである.
  • パラグラフには,そこで何について何を言おうとするのかを一口に,概論的に述べた文が含まれるのが通例である.これをトピック・センテンスという.
  • トピック・センテンスはパラグラフを支配し,他の文はトピック・センテンスを支援しなければならない.

 

4.3 トピック・センテンス

  • トピック・センテンスは,パラグラフの最初に書くのがたてまえである.
  • トピック・センテンスは各パラグラフのエッセンスを述べたものだから,それを並べれば文章全体の要約にならなければならない.
  • トピック・センテンスを第1文とするパラグラフばかりが続くと,文章が単調になるきらいがあるため,無理して先頭に置く必要はない.
  • 文章を書きながら絶えず読み返して,各パラグラフにトピック・センテンスがあるか,展開部の文はトピック・センテンスとちゃんと結びついているか,と点検す習慣をつける.

 

4.4  展開部

  • 主張のパラグラフは,展開部に十分の材料を準備してからかからないと力強くかけない.

 

4.5 文章の構成要素としてのパラグラフ

4.5.2 パラグラフの長さ
  • 「標準的な長さは?」と無理に聞かれれば,「200字ないし300字」と答える.ほんの目安である.
  • 長すぎるパラグラフは,読者に読む気を失わせる.短すぎるパラグラフが続くと散漫な印象を与える.
4.5.3 パラグラフの連結
  • パラグラフが変われば,読者はトピックが変わることを期待する.新しいパラグラフでは話題はどちらに向かうのか?そのパラグラフは文章全体の中でどういう役割を負うのか?それを明示するのは執筆者のつとめである.

 

5 文の構造と文章の流れ

5.2 文の構造──逆茂木型の文

  • 読者に逆茂木の抵抗を感じさせないためには,次のような心得が必要.
    (a) 一つの文の中には二つ以上の長前置修飾は書き込まない.
    (b) 修飾節の中のことばには修飾節をつけない.
    (c) 文または節は,なるだけ前とのつながりを浮き立たせるようなことばで書き始める.
  • 長すぎる文を分割する,また前置修飾節が修飾していることばを前に出す,等の手法が役に立つ.
  • 私たちがとかく逆茂木型の文章を書きやすい根本原因は,修飾句・修飾節前置型の日本語の文の構造にある.

 

5.3 文章の流れ──逆茂木型の文章

  • 論文は読者に向けて書くべきもので,著者の思いをみたすために書くものではない.序論は,読者を最短経路で本論に導き入れるようにスーッと書かなければならないのである.
  • 他人の文章を読んでいるときでも,少しでも論理の流れに不自然なところがあったら「おかしいな,なぜか?」と考える習慣をつけるのがいい.

 

6 はっきり言い切る姿勢

6.1 レゲットのいうこと(続)

  • 英語の文章は,明確に書くこと,曖昧な点を残さずに書くことが何より大切.
  • 文を書くたびに「この文は正確にいうと何を意味するのか」と自問することを勧める.もし,この問に答えられなければ,その文は省いてしまうほうがいい.
  • 日本人は,はっきりしすぎた言い方,断定的な言い方を避けようとする傾向が非常に強い.
  • ぼかしたかたちで自分の見解を述べたとすると,それを読んだ欧米の読者は,著者の考えは不明確で支離滅裂だと思うだけだろう.だから,いくらか不自然に思えても,できるかぎり明確な,断定的な言い方をしたほうがいい.

 

6.2 明言を避けたがる心理

  • 日本では,四面の海が異民族の侵入を防ぎ,いわば同族だけが狭い四つの島に閉じこもって暮らしてきた.そこでいちばん大切な生活の心得は,異を立て角付き合わぬこと,みんなに同調することであった.

 

6.3 明確な主張のすすめ

  • <はっきり言い切る>たてまえの文書では,あいまいな,責任回避的な表現は避けて,「自分は...と思う」,「...と考える」と書くべきである.
  • ぼかしことばを入れたくなるたびに,それが本当に必要なのかどうかを吟味する習慣を確立すると,文章はずっと明確になる.

 

7 事実と意見

7.1 事実と意見

  • 文書を読むたびに,「どこまでが事実か,どこからが意見か」を読み分ける努力をすべき.

 

7.2 事実とは何か 意見とは何か

  • 正当な手続きを踏み,先入観にとらわれずに吟味をおこなった結果がその仮説を支持すれば,仮説は理論になる.
  • 事実の記述は真か偽か(正しいか誤りか)のどちらか.これに反して意見の記述に対する評価は原則として複数の評価が並立する.

 

7.3 事実の記述 意見の記述

  • 事実の記述だけを取り出して考えれば,必要な注意は次の三つに尽きる.
    (a) その事実に関してその文書の中で書く必要があるのは何々かを十分に吟味せよ.
    (b) それを,ぼかした表現に逃げずに,できるだけ明確に書け.
    (c) 事実を記述する文は,できるだけ名詞と動詞で書き,主観に依存する修飾語を混入させるな.
  • 修飾語の絶対多数は,主観によって選ばれ,使われるもの──すなわち判断を表すもの──である.
  • 頭(私は)も足(と考える)も取り去って.しかもそれが自分の意見であることを示唆しようとするのが,「であろう・と思われる・と考えられる・と見てよい・と言ってよいのではないかと思われる」の類の表現である.
  • 理科系の仕事の文書では,これらの表現はできるだけ避け,意見の内容は断定形で書いて,頭(私は)と足(と考える)を明記すべき.

 

7.4 事実と意見の書き分け

  • 理科系の仕事の文書を書くときには,事実と意見の区別が格別に重要である.
  • 一つの意見(推論,判断,仮説)に対して意見を述べるときにはいつでも,意見を述べる対象が事実ではなくて推論,判断,仮説であることを明示しなければならない.
  • (a) 事実を書いているのか,意見を書いているのかをいつも意識して,両者を明らかに区別して書く.書いたあとで,逆にとられる心配はないかと入念に読み返す.
    (b) 事実の記述には,意見を混入させないようにする.

 

7.5 事実のもつ説得力

  • 主張のあるパラグラフ,主張のある文書の結論は<意見>である.
  • 筆者の気持ちとして,結論である意見を手っ取り早く書きたいのは当然だが,意見だけを書いたのでは読者は納得しない.事実の裏打ちがあってはじめて意見に説得力が生まれる.
  • 理科系の仕事の文書に書き込む意見は,事実の上に立って論理的に導き出した意見でなければならない.
  • その意見を<根拠のある意見>として読者に受け入れさせるためには,意見の基礎になるすべての事実を正確に記述し,それにもとづいてきちんと論理を展開することが必要である.
  • 「夜桜は格別に美しい」と言いたい場合には,「あでやか・はんなり・夢見るよう」などと主観的・一般的な修飾語をならべるよりも,眼前の夜桜の姿を客観的・具体的に描き出し,それだけで打ち切るほうがいいことが多い.

 

8 わかりやすく簡潔な表現

8.1 文は短く

  • 仕事の文章の文は,短く,短くと心がけて書くべきである.
  • (a) まず,書きたいことを一つ一つ短い文にまとめる.
    (b) それらを論理的にきちっとつないでいく
    (c) いつでも「その文の中では何が主語か」をはっきり意識して書く.

 

8.3 まぎれのない文を

  • 理解できるように書くだけでなく,誤解できないように書かなければならない.
  • 一つの文を書くたびに,読者がそれをどういう意味に取るだろうかと,あらゆる可能性を検討する.
  • 修飾語を置く位置を,修飾すべき語に密接させるのが原則.

 

8.4 簡潔

  • 必要ギリギリの要素はなにかを洗い出し,それだけを,切り詰めた表現で書く.
  • 一語一語が欠くべからざる役割を負っていて,一語を削れば必要な情報がそれだけ不足になる──そういうふうに書くのが理科系の仕事の文書の書き方の理想.

 

8.5 読みやすさへの配慮

8.5.1 字面の白さ
  • 用のないところに漢字を使わない.
  • かたい漢語やむずかしい漢字は必要最小限しか使わないようにする.
8.5.3 受け身の文
  • 日本語の文は受動態で書くとひねくれて読みにくくなる.
  • 能動態で書くと,読みやすくなるばかりでなく,文が短くなる場合が多い.
  • 理科系の仕事の文書では受け身の文は少ないほどいい.
8.5.4 並記の方法
  • 条件,その他をいくつか並べて書くときには,(a)(b)のように番号を打って,読者に「これと同格の内容がいくつか続きますよ」と予告するのが親切なやり方である.

 

8.6 文章の中の区切り記号

  • セミコロン(;)を積極的に利用することを勧めたい.これはコンマ(,)より強く区切りをつけたいときに使う.
  • なかぐろ,あるいはなかてん(・)は,並列,並列連結をあらわす記号.
  • ダッシ(──)は,形式ばる必要がない場合にコロンやカッコの代わりに使われる.

 

8.7 私の流儀の書き方

8.7.1 漢字の使い方
  • <漢字だけで書くことば>をベタに二つ続けるのは避ける.
    比較的少ない → 比較的すくない
8.7.2 文末の述語
  • 次々の文の最後の述語が変わっていくように心がける.
  • 同じかたちでおわる文が続くことは特に心して避ける.
  • 「である」は,固苦しくなるため,たとえ続く場合でなくてもなるたけ使わないようにつとめる.
    「である」→「だ」,「であろう」→「だろう」

 

9 執筆メモ

9.1 日付

  • 他人の目に触れぬメモやノートの類でも,最初に必ずその日の日付──年月日──を入れて書きはじめることを勧める.
  • <年>を入れることが大切.あとで「<年>を入れておいてよかった」と思うときがくる.

 

9.2 辞書

  • 「この字はこれでいいのかな」,「この言葉はこういう意味に使ってもいいかな」と,チラとでも疑問を感じたら即座に辞書をひらく習慣をつけるべきである.

 

9.4 文献引用

  • 他人の報告,データなどを引用するときには,必ずその出所を明示しなければならない.

 

9.6 図と表の書き方

  • 読者はしばしば図や表に最初に着目する──それだけしか見ない読者もいる──ので,図にも表にも,必ずキャプションを書く.説明は,原則として本文を読まないでもその図や表の中身を理解できるように,きちんと書かなければならない.

 

9.7 読直しと校正

  • 原稿をいちど他人に読んでもらって,まちがっているところ,わからないところ,わかりにくいところ,そのほか改良を要するところを指摘してもらうことを勧める.
  • 原稿をしばらく寝かせておいてから読み直すといい.忘却が目を新鮮にし,アラがよく見えるようにしてくれる.

 

10 手紙・説明書・原著論文

10.1 手紙

10.1.1 用件の手紙の扱い方
  • この種の手紙についての心得としていちばん大切なのは,手紙を受け取ったらすぐに返事を書くこと.何日かかけて調査をしたり,考えたりしないと相手の用件にこたえられない場合もあるだろう.そういう場合でも,「お手紙は◯月◯日に受け取った.御依頼の件についてはいつごろまでにご返事する」というメモを出すのである.
10.1.3 本文
  • 仕事の用件の手紙は最も簡潔に,しかし要点は残りなく言いつくすように,書かなければならない.

 

10.2 説明書

10.2.2 使用説明書
  • 原著論文や大学院生のレポートなどは,いわば内容の高さを生命とするものである.これを書くときには,研究・努力によってそこに盛るべき新しい情報を獲得することが第一の仕事.
  • しかし,使用説明書を書く場合はこれとは違う.
    整理して読者にとって必要なものだけを洗い出すことが要件.
  • この説明書は,誰が,どういう目的で,いつ,どこで読み,どう利用するのか,を考え,それに適するように情報を選択・配列することが第一の仕事である.
  • 読者が,何をどの順序に知りたがるかを考えてみる思考実験が必要.
  • 機械を設計し,製作するときにとくに意を用いたことでも,使用者が知る必要のないことは思い切りよく省くべき.

 

10.3 原著論文

10.3.1 科学論文の区分
  • 原著論文は,新しい研究──または技術,装置──を記述するものでなければならない.しかも,読者が追試を試みようとするとき,または著者の論理を追跡しようとするときに必要な情報を,漏れなく書き込んだものでなければならない.
10.3.3 原著論文の書き方
  • 論文は読まれてはじめて役に立つ.ひとりよがりでわからない論文,悪文で読みにくい論文は読んでもらえない.
  • 簡潔で,しかもスラスラと読者の頭にはいるように書くことは決して容易ではない.著者は,準備・執筆・再検討・仕上げの各段階に十分に時間をかけ,努力をはらわなければならない.
  • 書き進むたびに「読者の身になって自分の書いたものを見直す」心がけが肝要.
  • 原稿を書きはじめる前に,十分な時間──少なくとも数週間──を準備についやすべきである.まず,論文に盛り込む必要のある情報は何と何かを,一つ一つ秤にかけるつもりで洗いだす.
  • 書き出しの部分には必ず,「その論文では何を問題にするのか,どこに目標を置いてどんな方法で研究したか」を示す,少なくとも1〜2パラグラフの序論がなければならない.
  • 次に本論にはいって,研究の具体的な手段・方法を述べ,それによってどんな結果がえられたかをしるす;最後に,その結果を従来の研究結果と比較して検討し,自分はそれについてどう考えるか,何を結論するかを書く.
  • 序論では,なぜそういう研究を計画するに至ったかを書くのが自然である.そのために,その主題に関する従来の研究を批判的に展望することになる場合が多い.
  • 長い論文の場合には,序論の最後に論文の構成を示しておくと読者に役立つ.

 

  1. パラグラフを意識して文章を構成すること.とくに,いま書いているパラグラフのトピックは何かを常に念頭に置くこと.
  2. 最初に読み下すときには理解できず,読みかえしてはじめてわかるような,逆茂木型のぶんを書かぬこと.
  3. 読者は,論文の主題ならびにそれに関連するいろいろな研究を,著者のように知りぬいているわけではない.
  4. 「ほぼ」,「ぐらい」,「らしい」などと書くのは,これらのぼかしことばが本当に必要なのかどうかを検討してからにせよ.
  5. 事実と意見をはっきり区別して書くこと.とくに事実の記述の中に意見を混入させるな.論文の中では,自分の舌仕事と,他人の仕事の引用とがはっきり区別できるように書くことが特に重要である.
  6. できるだけ短い文で文章を構成すること.
  7. 理解できるように書くだけでなく,誤解できないように書く心がけが大切.
  8. なくてもすむことばは,一つも書かないように心がけること.
  9. できるだけ,受け身でなく,能動態の文を書くこと.

 

  • 著者は,そこまでは,もっぱら自分の研究の内容を述べ,その結果を明示することにつとめてきたのに,考察では,いったん立場を変えて自分の研究に残っている課問題点を吟味し,その上ではじめて結論をまとめるのである.
  • <主張する>立場にある自分から離れて,第三者として自分の主張を見直すことが大切.
  • 論文は,その中に与えてある情報だけによって著者の記述をすべて理解できるように書かなければならない.
  • データを示す場合には,どういう誤差がありうるか,データの精度はどれだけかを明記しなければならない.同様に,結論は,どんな条件のもとで成り立つのかを明示して書かなければならない.
10.3.4 再検討・仕上げ
  • ひろく読まれる論文を完成するためには,原稿を書き上げてから,十分に時間をかけて検討し,手を加えなければならない.

 

11 学会講演の要領

11.1 「読む」のではなく「話す」

  • 講演はどちらかというとゆっくりめのほうがいい.10分間講演に対して400字詰原稿用紙6枚が目安.
  • 読むときにはいつでも読みかえしができるが,講演では,いちど聞き逃したら聞き手側ではどうしようもない.つまり,ひとに聞いてもらう話には適度のくりかえしが必要.
  • 与えられた時間内に要点を尽くすためには,少なくとも初心のうちは,十分に推敲した原稿を用意すべき.
  • 欧州では,正式の挨拶や講演は原稿を手にしてするのが礼儀とされる.
  • 完成した原稿で十分に練習を積んで──暗記は無用,細部は毎回変わるのが自然──,いざ壇に上がったときには簡潔で見通しのいいメモを見ながら話したほうがいい.

 

11.2 話の構成

  • 最初に「こういう目的でこんな研究をして,こういう結果を得ましたから,それを報告します」ということを,1分内外で話す.
  • 残りの9分を,<序論>,<研究方法>,<結果>,<考察>の四つに均等に割り振るつもりで話を組み立てると具合がいい.
  • 序論に2分半近くは長すぎると思うかもしれないが,研究の背景を説明し,自分のねらいを明らかにすることは,10分間講演の場合とくに重要である.
  • なぜかというと,聴衆の過半が理解できるのはここまで──要旨と序論だけ──かもしれないから.
  • 10分間講演で複雑な計算を追うことは無理で,長い式を見せるのは無駄.
  • 思い切って削る能力のある人だけが,10分でよく研究成果の真髄を伝えうるのである.
  • 最初の1/3はその会場のすべての聴衆にわかるように,また中間の1/3も大部分の聴衆が「わかったような気がする」レベルで話さなければならない.

 

11.4 手持ちメモ

  • 「...を報告させていただきます」などという丁寧すぎる言い方も,学会講演にはふさわしくない.学会は経験・年齢の差を問わず平等に学問を追求する場なのだから,たとえ聴衆が先輩ばかりだったとしても,「...します」,「...です」でよろしい.
  • 注意を惹きたい場合には,大きな声を出すよりも,ちょっと黙ってみる.「どうしたのかな?」と聴衆の注意が集中する.そこで,「つまり...」といちばん大切なことを言う.

 

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