日本再興戦略

 

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

 

 

 

はじめに

  • 日本の,人に言われたことをやることに特化したシステムは,大量生産型の工業社会,例えばトヨタの車をつくるのには向いていたし,ソニーのテレビを作るのにも向いていた.ただし今は,工場が本質的に機械知能化されてきているため,日本の教育は時代に合わなくなってきている.
  • 高度経済成長の正体とは,「均一な教育」「住宅ローン」「マスメディアによる消費者購買行動(消費者が同じものを欲しがり,同一な価値観で物を判断して購買する)」の3点セット.言い換えると,国民に均一な教育を与えた上で,住宅ローンにより家計のお金の自由を奪い,マスメディアによる世論操作(特定の価値観・モノの視点を多くの大衆に植え付けること)を行い,新しい需要を喚起していくという戦略.
  • アーティスティックな価値観や考え方は,経営者が持っているべき素質の1つ.それがないと,人が時間をかけて作ったものや,深い価値のあるものを正しく評価できないから.
  • 教育・研究・経営・アートのすべてに影響を与えるのがテクノロジーである.
  • 指数関数的成長にとって,全ての点は,いつでも始まったばかりだ.
  • コモディティ化とは,市場参入時に高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し,一般的な商品になること.

 

第1章 欧米とは何か

  • 「西洋的思想」と「日本」は相性が悪い.
  • 欧州のどこを真似するかという議論は一旦やめて,そもそも「日本には何が向いていたのか」,そして「これから何が向いているのか」を歴史を振り返りながら考えていかなければいけない.
  • 平等は,全員に同じ権利があること.
  • 公平は,システムがフェアであること.
  • 日本人は,システムがフェアであることは意識するけれども,権利が平等であることにはあまり意識しない.(例:センター試験カンニング,地域教育格差)
  • そもそも,西洋思想の二分法的考え方は,アジア的な安寧に関する感覚,美的感覚や価値観には合わない.それにもかかわらず,日本人は「個人」を無理に目指してきた.
  • 欧州や米国は,人間個人の権利を最大化しようとした挙句,結局,「部分と全体の間」を修復できなくなってきた.
  • 個人のためではなく,自分が属するコミュニティの利益を考えて意思決定すればよい.これを技術的に解決する余地が,人工知能による統計的判断や最適化にはあるのではないか.
  • ワークとライフを二分すること自体が文化的に向いていない.オンとオフの区別をつける発想自体が向いていない.生活の一部として仕事をする.
  • これからの日本に大事なのは,色々なコミュニティがあって,複数のコミュニティに所属しつつ,そのコミュニティを自由に変えられること.
  • 東洋的な価値観とは,わかりにくいものを頑張って勉強することで理解していく,というもの.
  • 西洋的な価値観とは,もし内容が理解できなければ,「分かりやすく説明しないお前が悪い」というもの.
  • 地方が国と異なる方針で動くことで,地方自治は国に大きな発言力を持つことになる.個別最適と全体最適は異なる.
  • 帰属意識と参加意識,自分の選択が意味を持っている実感を,それぞれの人々が感じ,相互に依存することから日本再興は始まっていく.
  • シリコンバレーイノベーション×ソフトウェア)は,米国にありながらも,米国平均とは別ロジックで動く場所.
  • 重要なのは,発信すべき内容があるかどうかであり,英語そのものはただのツール.
  • 「欧米」「グローバル人材」といった,メディアによく出てくる,定義できない言葉によって成り立つふわっとした言説は疑ったほうがいい.
  • ポピュリズムとは,Brexitトランプ大統領当選などに見られる良識的な判断とおよそ真逆にあるような世の中の流れ.

 

第2章 日本とは何か

  • 日本は学校教育で歴史を学ぶときに,昔話として習ってしまうので,歴史が今の日本や世界認識にどのような影響を与えているのかを理解していない.
  • 天皇家も世代交代によって為政者としての才覚に差があるから,天皇に権力を集中させるのではなく,天皇という統治者と官僚という執行者を分けたほうが国はうまく治まると考えた.
  • 秀吉的世界.中央集権の自由経済的なオープンな世界で外の国を攻めるなど外交的成長戦略.
  • 徳川的世界.非中央集権の地方自治で,内需に頼る鎖国戦略.
  • 日本には,非中央集権が合っている.
  • IT産業はカーストの抜け穴.
  • 一周回って,士農工商の考え方が時代の最先端になってきている.
  • いつの時代も,社会の中での重要性を決めるのは,市場での希少価値.
  • 多動力こそ百姓.
  • マスメディアによる価値観の統一やドラマによる人生のサンプルの流布のせいで,日本人が目指す人生像がとても画一的な凝り固まったものになってしまった.
  • マスメディアによって新しい概念(こうしなければいけないという洗脳)がつくられ,昔の考え方が破壊されていく.
  • マスメディアや広告にコントロールされて,無意識的に自分の中に価値観がインストールされている.
  • モノを作る.社会に貢献する.社会に価値を生み出す.

 

第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか

  • テクノロジーは確実に我々の生活を変えていく.
  • 夢物語に感じる程度にビジョンを描き,そして実際に手を動かす.
  • 20世紀に最も生活にインパクトを与えた発明は,「電気製品」と「自動車」.
  • 最初にお金をかけて作って,生産して回収するサイクル.品質を保つデザイン.
  • インターネットを個別最適化するための関数が人工知能
  • インターネットは「マス」から「パーソナライズ」へ移行しようとしている.
  • アップルは単なる製品だけではなく,ライフスタイル自体をデザインしている.
  • インフラのテクノロジー水準の公平性に関する要求が高いのが日本.日本は公平じゃないとすぐにクレームを入れる.
  • 5Gで将来的には,3次元的な空間そのものを共有できるようになる.

 

第4章 日本再興のグランドデザイン

  • 日本は諸外国と比較して人口減少と少子高齢化が早く進行するぶん,ソリューションを生み出すことができれば,"輸出戦略"になる.
  • 以前の日本は,欧州や米国などで生まれたビジネスを時間差で日本に輸入する「タイムマシンビジネス」が主流だったが,今後は「逆タイムマシンビジネス」が可能になる.
  • 日本は,人口減少×機会化でちょうどよい.
  • 中国は,日本のロボット技術を真似しようとするだろうが,長年積み重ねてきた品質の良さをそう簡単には真似できない.
  • 日本が世界に先駆けて,機会化をリードする.
  • テクノロジーを有効に活用することで,明るい未来が到来することをわかりやすく,粘り強く説明していくことが大切.
  • ブロックチェーンとは,あらゆるデータの移動歴を,信頼性のある形で保存し続けるテクノロジー.誰かが一元的に管理するのではないため,非中央集権的テクノロジー.
  • 今,日本に必要なのは,中央集権的な民主主義を地方自治重視にアップデートすること.
  • 地方の主な税収は,住民税と固定資産税しかなく,財政的な自由度が高くない.
  • これから面白い開発が行われる自治体ほど,良いビジョンがある自治体ほど,株価が高くなる.
  • 今の我々の生活は,シリコンバレー発のプラットホームに支配されている.シリコンバレーの植民地みたいになっている.
  • 今のうちから,人口減少・高齢化社会に対応した社会に移行できれば,日本は世界より20年先を行ける.

 

第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)

  • 外交でもっとも重要なのは,どこの国と仲良くするか.
  •  民主主義は,最大公約数的な決定措置.つまり,人口が増えすぎて多様な利害や意見を持つ人が増えすぎると成り立たなくなる.
  • 東京にとっては正しくても,大阪や九州にとっては正しくないということが起こってしまう.地方自治が進めば,各地域ごとに最適な選択肢を選べる.
  • 地方にはそれぞれ違った幸福の形があるのに,東京からマスメディアが発信する価値観を無理やり根付かせようとするから,よくない.
  • リーダー2.0は,全部自分でできる必要はない.
  • 日本のリーダーは,西洋的なリーダー1.0のモデルに縛られず,どうリーダー2.0やリーダー3.0に進化できるか,そこが日本最高のカギ.

 

第6章 教育

  • 弁護士・公認会計士・税理士は,給料は高いものの,社会に富も価値も生み出していない.AIが進化すると代替される.
  • これまでの価値観では,ひとつのことを専門家としてするほうがかっこよく見えているが,今後はいくつもの職業を掛け持ちすることが大切.
  • 時代感覚を掴むことが大事.投資能力と近い.時代性を理解しなければならない.
  • まず,1つの分野を掘り下げてから,横に展開していく.(縦から横)
  • 小学校で大切なのは,好きなことを見つけること.
  • 新しいことを考えたり,面倒くさいことを自動化したり,モノを分解する.
  • センター試験があることによって,高校の教育が規定されてしまっている.廃止すれば,教科が多様になり自由になる.
  • 誰かがやったことは研究にはならないから,研究することによって,その分野におけるトップ・オブ・トップになれる.
  • 研究においては,コンテクストを理解することが大事.
  • どういうお作法でアートができているか,アートの価値はどこにあるか.
  • 複数の意味に取れる単語は使わない.文章を長くしすぎない.

 

第7章 会社・仕事・コミュニティ

  • ワーク・ライフ・バランス,労働時間で区切っても意味がない.
  • 企業は大学の研究室や,研究室から生まれてきたベンチャーへの投資を率先してやっていくべき.
  • 専門性のある会社でキャリアを磨けば,市場価値が上昇しやすくなる.
  • 大企業とベンチャーの間の人の流動性を高くすることで,イノベーションが生まれやすくなる.
  • ベンチャーも攻めの人材ばかりではなく,守りのうまいおじさんを入れたほうが良い.
  • 大企業からディフェンダ―人材が市場にリリースされれば,大企業の風通しが良くなって若手が活躍しやすくなるだけでなく,ベンチャー企業も成長しやすくなる.
  • 今できることをやり続けないと,よっぽど勘の良い人でない限り,「将来的にこうなるから,こうだ」みたいな予測をすることは意味がない.
  • 「自分がそれをしたいのか」,それとも,「自分がそれをできるのか」「するべきなのか」の区別は絶対につけたほうが良い.

 

おわりに