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サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法
- 作者:チャディー・メン・タン,ダニエル・ゴールマン(序文)
- 発売日: 2016/05/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
序文 / まえがき
- EQ(情動的知能):
- 原語は emotional intelligence であり,EIとも略す.
- 本書は具体的なエクササイズとガイダンスに沿って進むことのできる道筋であり,瞑想を通して他人や自分自身とかかわるためのアプローチであり,それに体系的に取り組めば人生が一変し自由になれる.
- わずか八週間のトレーニングで,瞑想の大きな効果が観察しうることが明らかになった.
イントロダクション|サーチ・インサイド・ユアセルフ
- SIY:
- 科学に基盤を置き,とても実践的で,誰でも理解できる言葉で表されている,という素晴らしい特徴をもっている.
- 効果:
- 意のままに心を鎮める方法
- 集中力と創造性が向上する
- 自分の心のプロセスや情動のプロセスをしだいに明瞭に知覚できるようになる
- 自信は鍛錬を積んだ心の中に自然に湧き起こるものであることに気づく
- 自分の理想の未来を見いだしたり,成功に必要な楽観と回復力(レジリエンス)を育んだりすることを学ぶ
- 練習によって共感の力を意識的に高められることを発見する
- SIYは次の三つのステップから成る:
- 注意力のトレーニング
- 注意力を鍛え,穏やかであると同時に明瞭な心を生み出す.
- 自己意識と自制
- 自分の思考の流れや情動のプロセスをとても明瞭に観察できるようになる
- 役に立つ心の習慣の創出
- 自分の意志で,習慣を身につける.
- 注意力のトレーニング
1|エンジニアでさえEQで成功できる
──EQとは何か,EQはどうやって育めばいいか
私のようにはなはだ内気で理性的なエンジニアでもうまくいくなら,おそらくあなたもうまくいくはずだ.
- EQの定義:
- 自分自身と他人の気持ちや情動をモニターし,見分け,その情報を使って自分の思考や行動を導く能力.
- "What is Emotional Intelligence?"(PDF): https://scholars.unh.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1007&context=personality_lab
- EQの五つの領域:
- 自己意識──自分の内面の状態,好み,資質,直感を知ること
- 自己統制──自分の内面の状態,衝動,資質を管理すること
- モチベーション(動機づけ)──目標達成をもたらしたり助けたりする情動的な傾向
- 共感──他人の気持ち,欲求,関心を認識すること
- 社会的技能──他人から望ましい反応を引き出すのに熟達していること
EQの恩恵
- 職場というコンテクストでは,EQのおかげで三つの大切な技能を発揮できる:
- 優れた職務遂行能力
- 抜群のリーダーシップ
- 卓越したリーダーを際立たせる能力の80~100%を情動面での能力が占める
- 幸せのお膳立てをする能力
若いころの私は,当然とても不幸せだった.何も良いことが起こらないと,基本設定によって不幸せになった. ところが,今はまったく逆だ.何も悪いことが起こらないと,基本設定によって幸せでいられる.
汝自身を最適化せよ
- EQを伸ばす目的:
- あなたが自分自身を最適化して,すでにできる以上の水準でも機能するのを助けること.
注意力を鍛える
- 自己認識は自分を客観的に眺める能力があってこそのもので,客観的に眺めるには,自分の思考と情動を第三者の立場から眺める能力を必要とする.
- マインドフルネス:
- 「特別な形,つまり意図的に,今の瞬間に,評価や判断とは無縁の形で注意を払うこと」
- 「自分の意識を今の現実に敏感に保つこと」
生理的なレベルで鍛える
- マインドフルネスを経験するふたつの方法:
- 「やさしい手法」
- たんに二分間,穏やかで一貫した注意を自分の呼吸に向ける.
- まず呼吸していることを自覚し,次に呼吸のプロセスに注意を払う.
- 「もっとやさしい手法」
- とくに何をするでもなく,二分間座っているだけでいい.
- 狙いは,二分間だけ,何かを「する」モードから「あるがままでいる」モードへ切り替えることにある.
- 「やさしい手法」
2|命がかかっているかのように呼吸する
──マインドフルネス瞑想の理論と実践
- メタ注意が強くなると,注意がそれてもすばやく頻繁に復元できる.
- 注意をすばやく頻繁に復元できれば,結果的につねに注意を払っている状態を保てる.それが集中力.
リラックスしていて,しかも隙のない状態
- 瞑想の大きな秘密は,心はリラックスしていて,しかも隙のない状態に行きつけること.
- 心がとてもリラックスして,しかも隙のない状態になれば,心の素晴らしい特質が三つ,自然に現れてくる:
- 穏やかさ
- 明瞭さ
- 幸せ
- 心がとてもリラックスして,しかも隙のない状態になれば,心の素晴らしい特質が三つ,自然に現れてくる:
幸せなのは心の基本設定状態
- 心は穏やかで明瞭になると,基本設定に戻る.そして,その基本設定が幸せな状態なのだ.
- 心を自然な状態に戻しているだけ.
つまり,幸せは追い求めるものではなく,自ら可能にするものであるということだ. 幸せは,ただあるがままでいることなのだ.この洞察が私の人生を変えた.
- 心を自然な状態に戻しているだけ.
瞑想は運動のようなもの
- 瞑想は,いわば心の運動だ.
- たとえば,瞑想のエクササイズをたくさんやれば,心が前より穏やかになったり,注意を強く長く集中させられるようになったりする.
定期的に瞑想し始めてから数週間か数ヶ月たつと,活力が増し,心が穏やかで明瞭になり,
喜びに満ちあふれ,具合が悪くなる回数が減り,微笑むことが増え,そのために社会生活が改善し,自分におおいに満足する.
マインドフルネス瞑想の練習
- まず,意図(マインドフルネスの状態でいたいと望む理由)を生み出す.
- たとえば,ストレスを減らすことでもいいし,自分の健やかさを増すことでもいい.
- 意図を生み出したら,今度は呼吸をたどる.呼吸のプロセスにそっと注意を向けるだけでいい.
命がかかっているかのように,呼吸をする.
3|座らないでやるマインドフルネス・エクササイズ
──マインドフルネスの恩恵を座った姿勢以外にも広げる
- 前章では,マインドフルネス瞑想がEQを伸ばすカギを握る手立てであることを学んだ.
- 本章では,マインドフルネスを日常生活のあらゆる側面に広げる方法を学ぶ.
一般に,マインドフルネス瞑想を一般化する
- 重要なのは,マインドフルネスの恩恵を,座っている状態から人生のあらゆる部分へと広げること.
- 静から動へ:じっとしているときのマインドフルネスを,活動中のマインドフルネスへと広げる.
- 自己から他者へ:自分に向けたマインドフルネスを,他人に向けたマインドフルネスへと広げる.
活動中のマインドフルネス
- 座ってやる瞑想とそっくりだが,瞑想の対象が呼吸ではなく,そのとき取り組んでいる課題である点だけが違う.
- 一番のお薦めは「歩く瞑想」
- 歩いているときに,一瞬一瞬の注意を体の動きと感覚のひとつひとつに向け,注意がそれるたびに,ただそっともとに戻してやればいい.
他人に向けたマインドフルネス
- 一瞬一瞬の注意をすべて別の人に向け,注意がそれるたびに,そっともとに戻してやるだけでいい.対象が他人である点だけが違う.
自分の注意は,私たちが他人に与えることのできる最も価値ある贈り物だ.
あなたの人生で気にかけている人がいたら,毎日かならず数分間でも注意をすべて彼らに向けてほしい.彼らも花のように咲き誇るだろう.
マインドフルな会話
- 心の中で気を散らすものに応じるには,それに気づき,それを認めるにかぎる.
- 気を散らすものがそこにあるのを知り,それに対する評価や判断をしないようにし,それに去っていく気があれば,放してやる.
練習を継続する
- マインドフルネスは運動と似ている.頭で理解するだけでは不十分で,実践して初めて恩恵が得られる.
- マインドフルネスを習慣化させるまでの,練習の継続方法に関する三つのお勧め:
- 仲間をつくること
- めいっぱいやらないこと
- 練習を負担にしないのがコツ
- 重荷になるほど長く練習をしてはいけない
- 短時間の練習を頻繁にやる
- 一日ひと息だけやること
- 注意しながら一回息を吸って吐けば,その日のノルマを果たしたことになり,あとはすべておまけだ.
瞑想の軽さと喜び
- ある日,いっしょうけんめいやるのをやめることに決めた.
- 座って微笑み,自分の体に注意を払う,ただそれだけにした.すると,わずか数分そうしただけで,隙がなく,しかもリラックスした状態に,すっと入っていけた.
- 執着を捨てるのがうまい人ほど,瞑想も眠りに落ちるのもうまい.
- 「瞑想の前には期待をもっていい.だが,瞑想中は何も期待してはいけない」
禅と歩く赤ん坊
- 瞑想の進歩には二段階ある:
- 「最初のアクセス」
- ある心の状態に自分がアクセスできるようになるが,その心をあまり長くは保てない.
- 「強化」
- 特定の心の状態を意のままに引き出し,望みどおりの強さで望みどおりの時間にわたって保てるようになる.
- 一見,進歩らしい進歩がない期間が苛立たしいほど長く続いたあと,突然,ほんの短期間にバーンと途方もない進歩を遂げ,完全に自分のものにできる.
- 「最初のアクセス」
- 自分の瞑想が進歩しているようには見えなくても,やる気をなくしてはいけない.
- 変化の時は急に訪れるのであり,ひとつひとつの努力がそれに向かってあなたを少しずつ近づけているのだ.
4|100パーセント自然でオーガニックな自信
──自信につながる自己認識
明瞭さ
- この章のテーマは,自分の内をのぞくこと.
- 自己認識を深めるのは,自分の内側の明瞭さを向上させるということ.
- ここで伸ばしたい具体的な特質がふたつある:
- 解像度
- 鮮明さ
- ダニエル・ゴールドマンは自己認識を,「自分の内面の状態,好み,資質,直感を知ること」と定義している.
自己認識の能力
- 自己認識の領域には三つの情動的能力がある:
- 情動の自覚──自分の情動とその影響に気づくこと
- 正確な自己査定──自分の長所と限界を知ること
- 自信──自分の価値と能力を強く実感すること
正確な自己査定能力をもった人は,自分の能力や限界を自覚しており,フィードバックを求め,失敗から学び,改めるべき部分も承知しているし,
自分の短所を補うような長所を持つ人と協力すべきときも心得ている.
正確な自己査定は,優れた実績をもつ人の事実上全員で見つかる能力だった.
- 抜群の職務遂行能力を発揮するには,自信が重要であることを示す研究はたくさんある.
- 自分が最大の貢献ができる分野に価値を付加することに集中する
- 持続可能な自信に必要な,子の種の深い自己認識や自分に対する赤裸名なでの正直さをもつというのは,自分に対して隠すものがいっさいないことを意味する.
- 自己認識や正直さは,正確な自己査定から生まれる.
- 自分の最も神聖な志についても,最も邪な欲望についても,自分に対して正直になれる.
- 人生における最優先事項を知り,何が自分にとって重要で,何が重要ではないので手放してかまわないかわかる.
- やがて,あるがままの自分でいるのがしっくりくるようになる.
- 自分に関して,対処できないことが何ひとつなくなる.
- これが,自信の基礎だ.
自己認識を育む
- マインドフルネスに基づくふたつのフォーマルな練習:
- 「ボディ・スキャン」
- 生理的なレベルで機能し,情動の自覚を育むのに最適.
- 一瞬一瞬の注意を体のさまざまな部位に,ただ体系的に向ける.
- 頭のてっぺんから始め,足の親指の先まで下ろしてくる.
- 「ジャーナリング」
- 意味のレベルで機能し,正確な自己査定能力を伸ばすのに最適.
- 頭に浮かんだことをなんでもいいから書く
- 「ボディ・スキャン」
私の情動は私ではない
- 情動は自分が感じるものにすぎず,自分ではない.
思考と情動は雲に似ていて,美しいものもあれば,暗いものもある.
一方,私たちの核を成す存在は空のようなものだ.雲は空ではなく,空で起こる現象で,現れては消える.
同様に,思考と情動は私たち自身ではなく,心と体で起こるたんなる現象で,現れては消える.
5|情動を馬のように乗りこなす
自己統制の力を伸ばす
- この章のテーマは「衝動から選択へ」
- この章では,自己認識を利用して,自分の情動を支配できるようになろう.
捨てる練習
- 執着を捨てるというのは並外れて重要な技能で,瞑想の練習にとって不可欠の基礎のひとつ.
- 枯れる花は苦しみを引き起こさない.花が枯れないようにという非現実的な願いが苦しみを生み出す.
- したがって,心がこれに気づいて執着を捨てられるようになれば,愉快な経験はほとんど,あるいはまったく,苦しみにつながらない.