採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの
はじめに
- 採用の決め手になるのは,地頭でもケース問題の正答率でもない
- 本書で目指したのは,以下の2点の根本的な原因を追求すること
- 「これからの時代にグローバルビジネスの前線で求められるのは,どのような資質をもった人なのか」
- 「日本ではなぜそれらの資質が正しく理解されていないのか」
第1章 誤解される採用基準
- なによりも面接担当者が知りたいのは,「その候補者がどれほど考えることが好きか」,そして「どんな考え方をする人なのか」という点
- 「頭の中から解法という知識を取り出すこと」と「考えること」はまったく異なる行為
- 自分が話していることを,今,相手がどう感じているのか,退屈だと思われていないか,的外れなことになってはいないか,理解されているのかいないのか,そういったことに鈍感では,地頭がよくてもコンサルティングの仕事はできない
- コンサルタントに向いているのは「半端でないレベルまで考え尽くすことができる人」
- さまざまな事実を包括的に理解して「全体として何が起こっているのか」を見極めるのは,現状分析として,問題解決プロセスの前半部分に必要となる能力
- コンサルタントが問題を解決するためには,これら前半プロセスに加えて,「では,どうすればよいのか」という,処方箋を書く後半部分が必要
- 深く掘り下げるという現状分析作業とは反対方向の思考である,「今は存在しない世界」をゼロからイメージして組み上げていく思考が求められる
- ラジオを分解してその内部構造を理解する能力に加えて,バラバラに散らばった部品や材料を見ながら「これらを使って,何か価値のあるものがつくれないだろうか」と考える力が必要
- 「どんなに大変な状況に陥っても,ここに持ち込めば必ず勝てる」というスパイクがあってこそ,難局を乗り切ることが可能
第2章 採用したいのは将来のリーダー
- リーダーシップこそコンサルタントにとって最も重要なスキル
- 問題を解決するには,言語化された解決策のステップを,ひとつずつ行動に移していく必要がある.そのときに必要になるのがリーダーシップ
- 自分以外の人の言動は,リーダーシップなくしては変えられない
- 問題解決リーダーシップとは,プロセスをうまく回すためのスキルではなく,答えの質そのものの向上を追求するためのスキル
- 思考を深められるよう視点を何度も変更してみたり,みんなの発想を刺激するため,思わぬ角度から質問を投げかけてみたり,時にはあえて反論を述べ,参加者の意思や論理構成がどれほど強固なものか,試してみる場合もある
- 全員がリーダーシップをもつ組織は,一部の人だけがリーダーシップをもつ組織より,圧倒的に高い成果を出しやすい
- リーダーとは,「チームの使命を達成するために,必要なことをやる人」
- 求められているのは,「自分で決め,その結果に伴うリスクを引き受け,その決断の理由をきちんと説明する」ことであって,上司の指示をすべて聞き入れることではない
- 社会人としての最初の訓練を受ける場所の影響は絶大で,一定の行動様式をすり込まれてしまうと,後から矯正することは容易ではない
第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
- 成果が厳しく求められない状況が多いからこそ,日本ではリーダーシップが問われることが少ない
- 日本では,本来,成果目標を問うべき状況であるにもかかわらず,その目標が明確にされないために,みんなが,”和”を優先し,誰もリーダーシップを発揮しないことがよく起こる
- 「自分はやりたくないが,誰かにはぜひやってほしい」と考えるのは,リーダーシップの対極にある考え方
- 「リーダーとは和を尊ぶ人ではなく,成果を出してくれる人」
- マネジャーに昇格する人は,マネジャーになる前に「マネジャーとしても十分なリーダーシップを,すでに発揮しているから」マネジャーに昇格する.
- 順番が重要.「役職が先でリーダーシップが後」ではない.
- 日本企業であっても組織の管理職には成果目標が問われる
- しかし,一般的な管理職研修には,リーダーシップに関するものは多くない.これが不幸の源.
- 成果を出すためには,リーダーは細かいことにクチを出さず,すべてを自分でやろうとしないほうが良い場合も多い.
- リーダーは,組織の和よりも成果を出すことを優先する.
- したがって強力なリーダーは,同じ時代,同じ空間を共有する人にとっては,必ずしも「一緒に働いて楽しい人」ではない.
結局のところ,メンバーがリーダーにどこまでついていけるかということは,
「その成果を出すことに,それぞれのメンバーがどれほどコミットしているか,成果を出すことを,みんながどれほど重要だと思っているか」
にかかっているのです.