あの人はなぜ,東大卒に勝てるのか──論理思考のシンプルな本質
あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質
- 作者: 津田久資
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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はじめに
競合よりも優れたアイデアを,競合よりも速く引き出すうえで真に必要なのは,情報収集や学習でもひらめきの力を磨くことでもない
「競合に打ち勝つアイデアは,論理思考から生まれる」──これが本書を貫く思想だ.
- 本書を読み終えたとき,「ビジネスで勝つためには,どんな考え方をすればいいか?」について,かなりクリアに理解しているはず
第1章 思考のフィールドで勝つ
- 何らかの公式やフレームワークなどに当てはめることと,その公式そのものを生み出すことはまったく別物であり,前者は「考える」とは言わない(本書においては)
- 「学ぶ」能力にはかなりの個人差があるため,この領域で戦うのは分が悪い
- 一定のオリジナリティがあれば,容易に競合に追い抜かれない.これが「考える」の産物.
- これまでの「頭がいい人=学ぶのがうまい人」から「頭がいい人=考えるのがうまい人」へと知の条件が変化した
- 「頭がいい人」の条件は,たくさんの知識を蓄えているかどうかではなく,物事を考え抜く力があるかどうかにシフトしている
- 思考力で競合に打ち勝つというのは,思考の成果,つまり発想(アイデア)において,相手よりも優位に立つこと
- どの戦場においても,「しまった=9割以上」が常態となるようなダイナミクスが働いている( 人は「自分と同じ潜在レベルを持った人たちがいる戦場」に集まる)ため,「しまった」を避けることこそが,勝率を高めるための最短ルート
- 「しまった」の敗北は,「自分も発想し得たが,競合のほうが発想が早かった」ことによる敗北
- アイデアの質を高めたければ,発想を広げ,発想の総量を増やすことが重要
- 「発想のスピードを上げること」は「発想の質を高めること」に直結する
- 「アイデアの質の高さ≒アイデアの量の多さ」であり,一流と言われる人ほど発想量が多い
- 天才ほど多作であり,駄作の山を築いている
第2章 思考の幅を広げる
- 「自分がどの範囲を考えているか」を意識できていないために,その「外」に発想が広がっていかない
- 「自分がいま,何について考えているか」を明確にする
- フレームワーク(枠組み)をつくるということは,自分の思考を一定の範囲に限定しながら,その「外部」も同時に意識化することに等しい
- 逆に,思考がフレームワークを欠いているときには,「いま思考している範囲がすべてである」という思い込みがある
- 「発想する」とは,頭の中に潜在的に眠っているアイデアを顕在化させることにほかならない
- 僕たちが「しまった」と思うのは,相手が現実に発想したアイデアを,自分も潜在的なかたちで持っていたからである
- 発想をするためには,こうした情報量(知識量)が多いだけでは意味がない.これらを組み合わせて,「アイデアの種」へと深化させることが不可欠
どれくらい幅広い発想ができるかということは,
① アイデアの素材がどれくらい頭の中にあるか(情報量)
② 素材をどれくらい潜在的アイデアに加工できているか(加工率)
③ 潜在的なアイデアをどれくらい顕在化できているか(発想率)
という3つの変数が絡み合って決まっているのである.
- ③発想率を高めることが,発想の質を高める最短ルート
第3章 論理的に考える
- 人が考えているかどうかを決めるのは,その人が「書いているかどうか」である
- アイデアを引き出すとは,アイデアを書き出すことにほかならない
- 「頭の中にアイデアがある」ということと,「そのアイデアを引き出す」ということは,まったく別物
- エジソンですら,アイデアを顕在化させる(=考える)ためには,書かなければならなかった(生涯3500冊のノートを書きつぶした)
論理思考の本質とは,言葉が本来持っている境界線としての機能を最大限に発揮させて発想を広げ,競合が見落としているアイデアを先に引き出すことでなのである.
だからこそ,「論理思考の力」とは「発想の力」なのである.
- 「言葉を明確にする」と言っていることには,2つの含意がある
- 対象を言葉にする(イメージでとらえず,言語化する)
- 言葉の輪郭をはっきりさせる(言葉の意味を曖昧なまま放置しない)
- あとから市場参入したにもかかわらず,のちに業界トップまで食い込んだ企業は,ほとんどの場合,何か新しいものを生み出している
論理思考とは,言葉を部品としながら筋道をつけていく発想である.
イメージによって思考するということは,たとえば図や絵や動画だけでものを考えるということである.そうなると当然のことながら,それを他人に伝えるときにも,そうしたイメージを使うことになる.しかし,イメージだけで伝えることには,やはり限界があるように思う.
一般的なビジネスパーソンに求められる最終的なアウトプットは,やはり言葉なのである.
やはり僕たちは,論理思考で発想の質を高めていくべきなのである.
第4章 発想率を高める
- 発想の広さ = ①情報量 × ②加工率 × ③発想率
- チェックリスト(ToDoリスト)は,発想のモレを防ぎ,網羅的に広く考えるためのツール
- 発想の質を高めるには,発想率を高める(発想のモレを減らす)ことが必要
- 優れたチェックリストの条件は,次の2つ
- 項目にモレがない
- 項目ができるだけ具体的である
- チェックリストに基づいて具体的な答えを出す段階には,ロジック(論理)を超えること(直感)が必要になる
- つまり,ロジックツリーというのは,論理思考によってチェックリストをつくり,直感の適用対象を極限まで広げた結果にほかならない
- MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:相互に排他的,かつ,全体として網羅的=ダブりなく,モレなく)
- 一般に,問題や課題を解決する際には,いくつかのより小さなイシューに分解する必要がある
有意義な分解は,「自分がどこについて考えていて,どこについて考えていなかったかがわかる」ような分け方だということだ.
「あ‼ こっち側を見落としていたぞ.危ないところだった…」という気付きが得られるかどうか次第なのである.
- よいアイデアを発想するためには,発想を広げる「拡散」のプロセスだけでなく,その中からどれか1つに絞り込む「収束」が不可欠である
- 4Pなどのフレームワークは,ただ枠を埋めて事象を整理するためのものではない.発想のモレを防ぎ,より発想を広げるためのツールなのである
チェックリストをつくり,そこからさらにMECEに分解を進め,もうこれ以上分けられないというところまで来てから,直感によるジャンプを試みるべきだろう.
第5章 発想の材料を増やす
- 情報=アイデアの素材をインプットするうえで,工夫できることは2つある
- 頭の中の情報は「絶対量」を増やすよりも,「幅(多様性)」を広げるべき
- 頭の中の情報を「知識」で終わらせず,「知恵」へと深めるべき
- どれだけ自分で知見を広げているつもりでも,結局のところ,それらの情報収集は,自分の経験・知識・常識の枠組みの中で行われるものでしかない
- 知識に多様性を持たせるには,情報流入(受動的な状況)が必要
- どんな知識が役立つのかはわからない.その意味でも,「興味のない情報が強制的に入ってくる環境」を構築するのは意外に大切
- 情報流入は,いますぐ答えを出さなければならないような短期的な問題解決には向かない
- 成り立ち,あるいは,理由まで含めて理解された知識のことを,僕は知恵と呼んでいる
一度学んでしまったが最後,僕たちはその知識を飲み込んでしまう.
だからこそ,どんなかたちで学ぶにしても,こう思っていたほうがいい.
「初めて学ぶときが,知識を知恵に変える唯一無二のチャンスである」と.
第6章 発想の質を高める実践知
- MECEに考えたいときには,次の3ステップを踏むといい
- 論理思考が成功したかどうかの基準は,「直感だけで発想したときよりも,アイデアが広がったか」である
- そもそも日常的な「しまった」というのは,より上流での分岐を見落としていることで,広い範囲をごっそり考え損ねてしまうことから起きている
- 成果を出すような思考力がある人というのは,「思考の能力」と「思考しようという意欲」のどちらか(あるいはどちらも)を持ち合わせた人
- いわゆる質問力がある人というのは,相手の思考の穴に気づき,そこに質問を投げかけることで,相手の発想を広げることができる人
第7章 結論思考の情報収集術
- 情報収集をしようとしたら,まずは結論仮説(情報収集に先立って持っている「答え」)をはっきりとしたかたちで顕在化(=言葉化)させるべき
- 何よりもまず必要なのは,自分の結論仮説(=論理)を徹底的に「考える」ことである
- まずやるべきは「質の高い結論仮説を考える」こと.そして,その仮説を検証するために,情報収集をする
- 何よりものメリットは,集めるべき情報が明確であるがゆえに,情報収集のムダを一気に減らせること
- まず徹底的に思考して,多様な仮説を引き出し,その中で最も価値のありそうな結論仮説に対して,情報収集による検証を行うのである
終章 あの人はなぜ,東大卒に勝てるのか?
- 先人が命をかけて生み出した成果を一瞬で摂取できてしまうのが,学ぶという行為の素晴らしいところである
自分の頭で考えて,自分で発想したアイデアがないと競合には勝てなくなってきているのだ.
なぜそう言えるのか? いま僕が「考える」をすすめるのには2つの理由がある.
①「学ぶ」の競合が増えている(人材がグローバル化している)
②「学ぶ」の価値が下がっている(知識が大衆化している)
- 結局「フィールド選び」が勝敗を大きく左右する
- あなたの前に,なにか決まったルールや理論が存在しない戦場が広がっているのであれば,なおさらあなたは思考力を磨き,そこで存分に戦うべきだろう