ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法
ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法 (角川書店単行本)
- 作者: 落合陽一,猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2018/10/31
- メディア: Kindle版
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第1章 テクノロジーは社会課題を解決する
- 視点を変える,という経験がなければ本質は見えてこない.
- 日本国内も多種多様であり,まず東京と地方ではまったく違う.
- 日本の文化を知り,他国の文化を知った上で,立ち居振る舞いを決める.これが国際的な舞台で求められること.
- 現場を知ることから,本当の意味での広い視野,歴史的な視点,多角的に物事をとらえる力をもった人材が生まれてくるはず.
- プラットフォーム化したテクノロジー(スマホ,SNSなど)は,分断をうながすというより,都市と地方を結んでいる最大の共通項になっている.
- 課題先進国である日本で,その課題が最も先鋭化されて噴出してくるであろう地方で,テクノロジーによって課題を解決することができれば,その自治体なり技術は世界を20年先取りするイノベーションを起こしたということになる.
- 2つの選択肢しかなかったところに,第3の選択肢を入れてみる.
- 技術力がある民間が参入することによって社会的な問題の解決につながるようなイノベーションが起きて,マーケットニーズが生まれる.
- どこにいっても日本には鉄道,道路,テレビ,ラジオ,インターネットと,インフラは全部整っている.これを効率的に適材適所に組み替えていくのが「ジャパン2.0」,つまり日本の近代インフラの超克と改修である.
- ブロックチェーンは分散型の台帳技術,簡単に言えば,あらゆるデータの移動歴を信頼性ある形で保存し続けるためのテクノロジー.非中央集権的な技術であることに最大の特徴がある.
- 上司の命令を聞いてただ仕事をしている人より,提案型の社員の方が評価されるし,個人として評価がついてくる.
- 日本が他国よりも速いペースで人口減少・高齢化が進むことは,高齢化社会にいち早く適応し,そのための知見をいちはやく積めることを意味する.
- 他国に先駆けて知見を積み上げること,それ自体が最強の輸出産業の土壌になる.
第2章 2021年の日本風景論
- 高度経済成長
- 均一な教育
- 年功序列の給与と住宅ローン
- マスメディア
- 均一な教育とは,一人ひとりのニーズというよりも集団行動を優先し,人に言われたことをやるということに特化した教育のこと.
- 最初に頭金を支払ったあとに,数十年間にわたって住宅にお金を支払い続けるという仕組みができていて,自動的に家計の所得からローンが差し引かれ,家という大きな買い物ができるようになっていた.
- 幸せや夢を演出したのが,テレビを筆頭にしたマスメディアだった.メディアが流すことで消費者の購買行動が規定された.
- 日本は何を見せていくのか.日本の近代化の歴史や風景なのか,それとも日本の未来なのか.キャラクターコンテンツ盛りだくさんのジャパンが,私たちがほんとうに発信したい日本なのだろうか.
- 心象風景とは,簡単に言うと,経験をしたこともないのに誰もがぱっと思い浮かべることができる風景のこと.風景を問うことは,日本とは何かを問うことにつながる.
- なぜ心象風景として日本のシンボルとして思い浮かべることができるのか.それこそが明治期から近代化の過程で作り上げられていったナショナリズムの力.
- それぞれバラバラだった風景を,誰もが思い浮かべる心象風景として統一していく過程,それが国民国家の始まりとしての明治時代だった.
文部省唱歌として国定教科書に載る.それをみんなで歌うことで統一的な風景として,伴奏は三味線ではなくピアノで,同じ風景を共有した.唱歌は共通の心象風景を作り上げ,僕たちは同じ日本人だというふうに認識できた.風景は近代のメロディーによって再編成された.
"ドラえもん"には出てこないが,しかし現実の世界でいまの日本を象徴するような風景は,
- コンビニ
- ショッピングモール
- スマホ・ソフトウェアプラットフォーム
- アートとしてテクノロジーと伝統芸能の親和性は高い.伝統と未来の融合を閉会式でみせれば,それは日本の新しいビジョンを象徴するものになるのではないか?
- 歴史=伝統文化と未来=テクノロジーの融合こそ,ポスト平成,近代の終わりを終わらせ,近代の超克を実現しようとする僕たちが見出していくべき活路ではないか.
- 標準的教育とマスメディアの呪縛からいかにして離れるかが,ポスト平成の日本を構想する際にもっとも重要なポイント.
- イメージは多様でいいはずなのに,マスメディアを介して広がっていった価値観のなかでしか物事をとらえられなくなっている.
- 日本人はマスメディアや広告が打ち出した価値観が自分にインストールされていることに無自覚.消費者は常にコントロールされ,憧れ自体も自分が考え出したものではないという状況に慣れてしまっっている.
- 「普通」であることは,研究やイノベーションアートの世界では価値をもっていない.
- 今の時代にこそ,自覚的に汗をかいて,歴史を紐解き,文化を学び,美意識を養う必要がある.
- 風景の違いは都市の歴史を探るヒントになる.
第3章 統治構造を変えるポリテックの力
- 文書を残しておくのはなんのためか.役人の保身や政権のためではなく,後世の歴史のため.
- 重大な意思決定は常に歴史から検証されなければならない.失敗にしても,成功にしても,歴史から学ぶことが重要.
- 戦前は天皇主権で戦後は国民主権,ではなく,戦前も戦後も官僚主権というのが,日本の近代の特徴.
- 政治の課題をテクノロジーで解決する.テクノロジーの課題を政治的に解決する.そして政治とテクノロジーがそれぞれ変わっていく.これが「ポリテック」の意味.
- 政治家が「もしかしたらテクノロジーが役立つかもしれない」という発想を持てるようになれば,社会課題に対し技術者を集めて前向きな検討がなされるようになる.
- テクノロジーについてのアドバイザーをもっと積極的に登用し,政策の意思決定の中に組み込んでいけば,スムーズな連携ができるはず.
- 身体に障害があるなら,それをテクノロジーで補えばいいという社会がやってくる.
- 変えようと思えば,自分から提言をするということ.しがらみに屈することなく,提言を続けること.組織の内輪の論理を疑うこと.これが周りとの差を生むことにつながる.
第4章 構想力は歴史意識から生まれる
- 歴史とは,課題を見つけ出す力を養うためにこそ学ぶべきもの.
- 次の時代を考える上で,重要なのは大別すると3つ.
- 歴史や統計データを知ること.
- 論理的な日本語力を身につけること.
- 時代に適合した文理問わない教養を身につけること.
- これまで何が語られてきて,昔はどうなっていて,いまはどのあたりの研究が進んでいて,社会の統計をながめて何が語られているかを自分で知っている.だからこそ,こんな未来がやってくると予測できる.
- 未来のことを考えようと思ったら,それ以前の歴史を学び,その本質をつかんでいくしかない.
- 「言語化は最高の思考ツール」,考えていることを正しく言語化できれば,多くの恩恵を受けることができる.
- 最近のAIの研究では,コンピュータを用いた統計的アプローチでは正規分布の範囲内から外に出るのは難しいことが指摘されている.ど真ん中ストレートのスーパー官僚みたいなものは作り出すが,外れ値を出すことが難しい.
- 能力差というのは経験差であるという時代がやってくる.どんな分野でも,「何を経験し,何を試行したか」が重要な差になってくる.つまり,「何をやりたいのか」というモチベーションの部分が重要になる.モチベーションの有無がそのまま人間の価値を左右する変数になっていく.
- 研究をするということは,自分しか知らないことに挑み,その分野でどんなに狭くてもいいからトップになるということ.研究はだれも知らないことをやらないと意味がない.
- すべての出来事で0から1を生み出す必要はない.いままでの積み上げの中で,さらに前へ一歩進めることが「未知」なのである.