いかにして問題をとくか How to Solve It A New Aspect of Mathematical Method

 

いかにして問題をとくか

いかにして問題をとくか

 

 

訳者のことば

  • 今まで我々に与えられてきた教育は,はじめに一般的なものを授け,問題をそれに当てはめて処方通りに解けば良いという,いわゆる料理本的な傾向が強かった.本当に学問を深め,それを活かすためには新しい心の創造が何よりもまず大切なことである.それにはどうすればよいかをこの本が鮮やかに示してくれている.
  • 「この解法はうまくて間違いがないように見えるけれども,どうしたらそれを思いつくことができるだろうか.どうしたら私は自分でそれを思いついたり発見したりできるだろうか.」熱心な学生たちは同じような疑問を持っているだろう.また,そうであることを望んでいる.
  • 本書は,新しいことを見つけ出すことに興味のある人達ならば,誰にでも役に立つだろう.

 

第1に 問題を理解しなければならない

問題を理解すること

  • 未知のものは何か.与えれているもの(データ)は何か.条件は何か.
  • 条件を満足させうるか.条件は未知のものを定めるのに十分であるか.または,不充分であるか.または,余剰であるか.または,矛盾しているか.
  • 図をかけ,適当な記号を導入せよ.
  • 条件の各部を分離せよ.それを書き表すことができるか.

 

第2に データと未知のものとの関連を見つけなければならない

計画を立てること

  • 前にそれを見たことがないか.または,同じ問題を少し違った形で見たことがあるか.
  • 似た問題を知っているか.役に立つ定理を知っているか.
  • 未知のものをよく見よ!そうして,未知のものが同じがまたはよく似ている,見慣れた問題を思い起こせ.
  • 似た問題ですでに解いたことのある問題がここにある.それを使うことができないか.その結果を使うことができないか.その方法を使うことができないか.それを利用するためには,何か補助要素を導入すべきではないか.
  • 問題を言い換えることができるか.他の問題に帰着できないか.定義に帰れ.
  • もしも与えられた問題が解けなかったならば,何かこれと関連した問題を解こうとせよ.もっとやさしくてこれと似た問題は考えられないか.もっと一般的な問題は?
  • 問題の一部分を解くことができるか.条件の一部を残し,他を捨てよ.そうすれば,どの程度まで未知のものが定まり,どの範囲で変わりうるか,データを役立たせうるか.
  • データをすべて使ったか.条件のすべてを使ったか.問題に含まれる本質的な概念はすべて考慮したか.

 

第3に 計画を実行せよ

計画を実行すること

  • 解答の計画を実行するときに,各段階を検討せよ.その段階が正しいことをはっきりとみとめられるか.

 

第4に 得られた答を検討せよ

振り返ってみること

  • 結果を試すことができるか.議論を試すことができるか.
  • 結果を違った方法で導くことはできるか.それを直感的に理解することができるか.
  • 他の問題にその結果や方法を応用することができるか.

 

第Ⅰ部 教室にて

問題の区分と主な問い

  • 同じような問題をいくつかやっているうちに,頭の良い学生はその根底に横たわる考え方をのみ込んでしまうだろう.すなわち,すべてのデータを上手に使うこと,データを色々に変えてみること,対称の考えあるいは類推などがそれである.そのような点に注意を向ける習慣がつけば,問題を解く能力は一段と増すことであろう.

 

第Ⅲ部 発見学の小事典

分解と結合

  • 問題は,「何がいちばん本質的なものであり,何がそうでないか」を予め知ることができないという点である.それゆえ,まず始めに問題を全体として考察し,それから2,3の重点を調べてみると,さらにどこを詳しく調べたら良いかはっきりしてくるであろう.このようにして,問題を少しずつ分解していくことができる.

逆向きに解くこと

  • 要求されているものから出発し,求めるものは既に得られたと仮定せよ.
  • 望みの結果は,どんな前提から導かれるか.どのような処理をしたら,望みの結果に至るか.

補助問題

  • 人間が優れているのは,元の問題が難しければ適当な補助問題を考えて,直接には答え難い障害物を迂回できることを知っていることである.

補助要素

  • 一般に,前に解いたことのある関連問題を思い起こした場合,それを当面の問題に応用しようとするならば,それを利用するために何か補助要素を導入すべきではないか,と問うてみる必要がある.(三角形の関連問題を思い起こしたならば,当面の問題に補助線を足して,三角形を作る.)
  • もしも,怪しげな補助線が何の理由もなく,いきなり図中に現れてきて問題を解いてしまうなら,すぐれた学生や読者はがっかりするであろう.各段階での動機や目的が不明のままに留まるならば,推理や発明について学びうるところは何もないであろう.

方程式をたてること

  • 条件を数式であらわそうとするとき,まず第1に条件を完全に理解しなければならない.第2に数式の形に通じていなければならない
  • 条件を理解し,条件の各部分を分離し,それを書き表すことができるか.
  • 1つの観察から,一般的な法則を得ることができる.

次元のテスト

  • われわれは問題の最後の結果または途中の式を次元のテストによって調べることができる.

実際的な問題

  • 数学に限らず,ある問題を解くときにわれわれは同じような問題を解いた経験に頼りつつ,ちょっと形の違う,似た問題を見たことがあるか,関連した問題を知っているか,とたずねるのである.

結果を利用できないか

  • どんな慎ましい発見でも,発見をした後では,何かそれ以上のものが背後に潜んではいないかをよく考えてみることが大切である.
  • 新しい結果がもたらす光明を見逃さず,そこに用いられた手続きを繰り返して利用するべきである.成功を探れ.
  • その結果を,または方法を他の問題に利用できないか.

決意,希望,成功

  • 君は,希望がなくてもそれを実行し,成功しなくても我慢しなければならない.
  • 科学の研究においては,見通しを持つことが大切である.
  • 問題を解こうとする意思がないばかりか,問題を理解しようともしないから,結局問題を少しも理解していないのである.好奇心が何より大切.

教育の規則

  • 発明それ自身よりも,どうしてそれが発明されたかを考えることの方がおもしろい.

未知のものをよく見よ

  • 目的を見よ.目的を心に留めよ.ゴールを見失うな.何をしようとしているかをよく考えよ.要求されていることを見失うな.未知のものをよく見よ.結論をよく見よ.

問題を変形させること

  • 人間はいろいろな可能性をよく理解し,失敗やまちがいによって学び,もっとさらに賢明に行動しうるか,あるいは少なくとも賢明に行動できるはずである.
  • 同じ点にばかり集中していると疲れてしまう.注意をいきいきと保つためには,集中の対象を絶えず変化させなければならない.
  • 問題を色々変えてみなければならない.何か役に立つものが見つかるまで,変化させ,言い換え,繰り返し変形させることが必要である.

パプス

  • なすべきことはなされ,求むべきことは求められたとし,証明すべきことはすでに証明されたと仮定してみる.逆向きに解く.

進歩の兆候

  • 未知のものの性質をよく理解することはそれ自身進歩である.
  • 兆候を正しく読み取ることには経験を必要とする.専門の狩猟人は獲物の足跡に気づき,それが新しいか古いかを見分けることができるが,素人には到底不可能である.
  • 非常に有用な人が優れているのは,異常な感受性である.

進歩と成果

  • 問題を解くためには,主題となっている事柄についていくらかの知識が必要であり,われわれはすでに持ってはいるが,眠っている知識の中から関係のあるものを選び出し,集めておくことが必要である.
  • 記憶の中から,関係のある要素を取り出すことを「動員」と呼ぶことにする.
  • 数学の問題を解くには,思い出した知識を適当なまとまりを持った一体とするための論議を組み立てなければならない.このようなまとまりをつくることを「組織化」と呼ぼう.
  • 問題を変化させることなしに,進歩を遂げることは困難であろう.
  • 「そうらしい」という仮の考え方をせずには,確実な最終の結論を見出すことは不可能である.われわれには発見的推理が必要なのである.
  • 解決に一歩近づくとはどういうことであるか.それはわれわれの知識を動員し,組織化することであり,われわれの問題に対する考えを革新することであり,われわれの最終の結論を構成する段階を予知することである.

すぐれた解答者

  • もしも問題を解く熱意がなかったらそれに手を付けぬ方が良い.本当に成功するためには,全身を問題に打ち込まなければならないのである.

  • とにかく,何らかの言い換え,問題の変形が新しい結果をもたらすのである.
  • 問題に含まれる全ての大切な概念を考慮に入れたか.それをどう使ったか.その意味,定義を使ったか.それに関する重要な事実,定理を使ったか.
  • 定義に帰ることは重要な精神作用の一つである.言葉の定義がなぜそんなに大切であるかを知りたければ,まず第1に言葉が大切なことを理解しなければならない.
  • われわれは,言葉や記号を使わずに心を働かせることは殆ど不可能である.言葉や記号は力を持っている.
  • したがって,言葉の背後にある意味と事実とを求めるのが正しい.

特殊化

  • ある事象の集合に関する考察から,それに含まれるそれより小さい集合,またはその中の一つの事象について考えることを特殊化という.
  • 問題を解くときに,特殊化はしばしば有効である.
  • 角を扱う場合であれば,2つの極限として,0°と180°の場合を考えてみる.
  • 特殊例について式をテストし,さぐりを入れてみる.
  • 極限の場合について調べることは非常に役に立つ.
  • われわれは,より難しい一般的な問題を解くための踏石として,もっとやさしい,内輪的な特殊な補助問題を解くのである.

予想を検討せよ

  • 多くの予想はどこか違っているものであるが,それにもかかわらず,それは良い考えを導くのに役に立つのである.

  • 問題の条件を全て満足したと考えれる仮想的な図を描け.
  • 幾何学的でない問題を,見やすい幾何学の問題に変形することは,解答へそれだけ近づくことになる.