粒子ベースレンダリングを用いた医用データの半透明可視化と融合可視化
論文
1.はじめに
- 医用可視化は,他分野の可視化に比べて以下の2つの特徴をもつ.
- 第1の特徴は,半透明可視化,すなわち「透視」が重要なこと.なぜなら,多くの場合,病変部が人体内部に生じるから.
- 第2の特徴は,生成画像の利用目的によって,以下の3種類の形状が可視化されること.
- スライス(人体を輪切りにした断面図)
- サーフェス(臓器表面や等値面などの曲面)
- ボリューム(ゼリー状の半透明物体に見立てた中身の詰まった立体形状)
- 本稿では,医用可視化に適した高精度な半透明可視化手法
「粒子ベースレンダリング」の概要を紹介する.
6.まとめ
- 開発した手法は,レンダリングアーティファクトなしに奥行き情報を正確に半透明可視化できる.
- さらに,医用可視化に用いられるボリューム,サーフェス,スライスという3種類の形状を自在に重畳して融合可視化できる.
- 現在,重要な部分を強調し,不要なものは描かない手法を開発中である.
2.半透明可視化とデプスソート
- 正しい奥行き感を実現するために,従来手法では,半透明可視化した多数の描画プリミティブを視線方向に沿って並べ替え,視点に遠いものから順に重ね描きする.この並べ替えをデプスソートといい,描画プリミティブ数を$n$として$nlogn$に比例する計算時間を要する.
3.粒子ベースレンダリングの概要
- 粒子ベースレンダリングでは,デプスソートを確率的な期待値計算に置き換えることで,デプスソート自体を不要にする.
- 半透明可視化の手順は以下の4ステップ.
- <粒子生成>
第1のステップは,可視化対象となる3次元形状を記述する粒子群の生成である.形状がスライス(平面)またはサーフェス(曲面)の場合には,その上に一様な粒子密度分布で粒子群を生成する. - <粒子群分割>
第2のステップは,ステップ1で生成した粒子群を,複数の部分粒子群にランダム分割することである.部分粒子群の数をリピートレベルとよび,以下では変数$L_R$で表す.各部分粒子群に含まれる粒子数は同一とする.各部分粒子群は,統計的に互いに独立かつ同一な粒子密度分布をもつ. - <粒子投影>
第3のステップは,ステップ2で生成した各部分粒子群に対して,それぞれ独立に,構成粒子を画像平面に投影し,$L_R$枚の中間画像を生成することである.投影の際には,粒子が不透明であることを反映させ,隠点処理を行う.各中間画像において,画像平面上の各ピクセルの色(輝度値)は,背景色のままか,あるいはそのピクセルに投影される粒子のうちで最も視点に近いものの色となる. - <画像平均>
最後のステップは,ステップ3で得られた$L_R$枚の中間画像を,対応するピクセルごとに平均して,平均画像を生成することである.この平均画像における各ピクセルの色は,視点から様々な距離(デプス)にある粒子の色と背景色の期待値となる.これは半透明可視化に他ならない.
4.不透明度制御
- 粒子ベースレンダリングでは,実現される不透明度の値を正確に制御できる.