COLLISION VISUALIZATION OF A LASER-SCANNED POINT CLOUD OF STREETS AND A FESTIVAL FLOAT MODEL USED FOR THE REVIVAL OF A TRADITIONAL PROCESSION ROUTE

 

Paper(4500 words)

「初期の巡行ルートの復興のために使用される,レーザー計測で得られた街路と祇園祭の山鉾の点群の衝突可視化」

https://www.int-arch-photogramm-remote-sens-spatial-inf-sci.net/XLII-2-W7/255/2017/isprs-archives-XLII-2-W7-255-2017.pdf#search=%27collision+visualization%27

 

 

Abstract

本論文では,長い歴史をもつ京都の祇園祭で使われる山鉾を取り上げる.京都府政は,狭くて現在使われていない初期の巡行ルートを復興させる計画を進めている.復興のためには,山鉾が住宅や看板,電線,ルート沿いのその他のものと衝突しないかを確認することが重要である.そのため,本論文では,Point Cloud Objectの衝突を可視化する手法を提案する.本提案手法のメリットは3つある.(1)1つめは,正しい奥行き感覚(形状を視線に対して奥から手前に順に描く)の半透視可視化は衝突範囲を決定するのに役立つということ.(2)2つめは,実際の衝突範囲と同様に,衝突リスクが高い範囲を可視化できること.(3)3つめは,衝突範囲に対して点密度を増やすことで,目的の可視化範囲を強調することができることである.

 

1. Introduction

これまでのところ,文化遺産への技術の応用は,主に静的な3次元形状を記録するものである.しかし,この技術は動的な3次元の文化遺産の分析にも役立つはずである.私たちは,衝突判定シミュレーションが,伝統的な祭りのような実体のない文化遺産の保護や分析に役立つということを主張する.

点群の衝突判定のためにいくつかの手法が提案されている.3D空間をoctreeやkd-treeを用いて,小さいセルに分割する手法がある.この手法は,正確な衝突判定に向いている.高速な衝突判定に適したscreen space methodsというものもある.ノイズが多い点群に対する確率的衝突判定も提案されている.私たちの提案する衝突可視化は,これらのどのタイプの衝突判定手法にも応用可能である.現在の研究では,kd-treeに基づく手法を採用する.

これまで,レーザースキャンされたデータのpoint-basedな衝突判定の研究は,可視化の研究とあまり関係がなかった.本論文では,点群の衝突判定に適した可視化手法を提案する.(1)に関して,確率的レンダリングに基づく半透明可視化(以下の論文)

ci.nii.ac.jp

を利用している.レンダリングによって実現された高精細半透明可視化に基づいて,私たちは衝突範囲と衝突のリスクが高い範囲を(2),(3)を用いて効果的に強調する方法を提案する.私たちが提案する半透明可視化では,点群データの冗長性を効率よく利用することによって精確さを実現する.したがって,私たちは点群の削減は行っていない.

本論文の構成は以下のとおりである.セクション2では,祭りの山鉾や街路の衝突可視化の目的を説明する.セクション3では,私たちが提案する衝突可視化手法について述べる.セクション4では,文化的に重要な祭りの山鉾の衝突可視化に対して,提案手法を実際に適用して検証する.セクション5では,結論を述べる.

 

2. Project of reviving the original procession route of the festival float

祇園祭は869年から続く伝統的な祭りだが,第2次大戦などの影響があり,途中で元々の巡行ルートが変更になった.京都府政は,このルートを復活させることを望んでいるが,新しく建てられた住宅や電線,看板など道路状況の大幅な変化があったため,山鉾が今でも接触することなく巡行することができるかわからない状況である.

そのため,私たちはレーザースキャンされた点群で構築された仮想空間上で,山鉾と巡行ルートとの接触を検知するシミュレーションを行う.

 

3. Proposed method

 このセクションでは,衝突可視化の手法を説明する.本手法は2つのステップで構成される.1ステップ目は,点に対する色と不透明度の割り当てである.2ステップ目は,確率的レンダリングに基づく半透明可視化の実装である.以下で,各ステップを説明する.

3.1 Assignment of Colour and Opacity to Points
用意された2つの点群の各点の色と不透明度は,kd-treeにおける最近傍探索に基づいて決定される.1つの点群の各点に対して,もう一方の点群の最も近い点を探索して見つけ,その2点間の距離を取得する.(Figure 3.のd1, d2, d3)そして,その距離に応じて色と不透明度を割り当てる.(Figure 4.)2つの点群のすべての点に対してこの計算を行う.

 

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閾値に対して評価したあとに色と不透明度を割り当てる際に,衝突範囲の色,衝突リスクが高い範囲の色,衝突範囲の不透明度,衝突リスクが高い範囲の不透明度を定義する必要がある. 私たちの定義は以下の通りである.私たちは,衝突範囲に対しては白色,衝突のリスクが高い範囲に対してはレインボーカラーを採用した.(Figure4.)この組み合わせは役に立つ.というのも,この2つの色は決して重複しないからである.2点間の距離がちょうど閾値,つまり最小衝突距離の場合は,衝突リスクが高い範囲の色は赤色になる.青色の範囲は,非接触範囲である.(Figure 5.)

衝突範囲(白色)の不透明度は0.9となっている.衝突リスクが高い範囲の不透明度は衝突リスクの段階に依存する.具体的には,赤色から橙色では0.8,黄色から緑色の範囲では0.6,水色の範囲では0.4,青色の範囲では0.2となっている.これらの不透明度は,確率的レンダリングに基づく半透明可視化によって用意に実現できる.

Figure5. では白色の範囲を確認するのは難しいが,セクション4で実際に目的のケースを検証する.

 

3.2 Realization of the Collision Area Opacity and the High Collision Risk Area Opacity based on Stochastic Pointbased Transparent Rendering

大規模点群を扱うために最近提案された,確率的レンダリングに基づく半透明可視化を使った正しい奥行き感覚(形状を視線に対して奥から手前に順に描く)が,衝突している点群の精確な半透明可視化を可能にする.計測点群に対してレンダリングする際に,最初に,統計的に独立した曲面上の局所領域(曲面の面積を$S$とする)にランダム分割する(粒子セット群生成).その後,粒子の分布が$S$(曲面の面積)において一定だという仮定(粒子密度の一様性の仮定)のもとで,不透明度$α$は以下の公式に従う.

\begin{align}α = 1 - {(1-\frac{s}{S})}^n\end{align}

$n$は各局所領域$S$における粒子数であり,$s$は画像空間における1ピクセルの面積である(粒子断面積).$(1)$の公式は,粒子数$n$によって不透明度$α$をコントロールすることができるということを示している.すなわち,粒子数$n$を増減させることで,より高い不透明度を実現することができる.粒子数$n$を増やす(計測点群の点の数が少なすぎる場合)ことは,計測点群でランダム選択された粒子を適当数コピーする(ランダムに点を増殖(コピー)した後,全体をシャッフル)ことによって簡単に実現できる.同様に,粒子数$n$を減らす(計測点群の点の数が多すぎる場合)ことは,計測点群の粒子をランダムに削除する(ランダムに点を間引く)ことで実現できる.$S$における粒子数$n$を調整することによって,すなわち,$S$の粒子密度を調整することで,曲面上の局所領域の見える確率をコントロールできる.これは,不透明度$α$を調整することを意味する.

粒子数$n$を増やす際に,計測点群データに対して新しく点を追加する必要はないということに注目すべきである(点を増やしたい場合は,ランダムに点をコピーすればよいだけ).計測点群データをそのまま可視化に使用する(何も処理を加えない)ことの利点は,直接実世界を計測して取得したデータに基づくシミュレーションの信頼性が高いことである.

 

4. Experimental results

私たちは,セクション3で説明した可視化手法を祇園祭の巡行ルートにおける山鉾の衝突検出に適用した.京都府三条通りの計測点群は2300万点である.そこから,衝突検出のために地面の点群を削除した(地面は衝突検出には無関係であるため)点群は140万点である.このような複雑かつ大規模な点群を自動で正確にポリゴンメッシュに変換するのは困難である.これは従来のポリゴンベースの衝突検出アルゴリズムが,私たちの目的に適していないということである.一方,山鉾の計測点群は970万点である.

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Figure. 7は,山鉾の点群を巡行させた結果を示している.この結果から,山鉾が電線と衝突する(白色部分が衝突領域)ことが想像できる.交差点に差しかかる際に,看板や他のものとの衝突もまた予測できる.

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Figure. 9は,提案手法である衝突の半透明可視化の例である.衝突範囲(白色)と衝突のリスクが高い範囲(レインボーカラー)に加えて,衝突のリスクがない範囲(青色)もまた可視化されている.

上記で示したように,私たちの衝突シミュレーションと衝突可視化は,もし山鉾が初期のルートを巡行すれば,多くの衝突が発生するということを明らかにした.山鉾が直線に巡行する際は住宅や看板などとの衝突はないが,交差点に差しかかる際は衝突が発生するということを発見した(山鉾の動き方や回り方にもよるが).

(〜略〜)

最後に,性能について述べる.いくつかの図で示した通り,私たちの可視化手法は約1000万点で構成される点群に対してインタラクティブなフレームレートで応用可能である.衝突検出シミュレーションのコンピュテーショナルな速度は,本論文の論点ではない.そして実際私たちのシミュレーションは,速さよりも正確さに焦点を当てて実行した.提案手法は,リアルタイムレンダリングに十分なほど速くはないが,多くの場合の衝突調査に十分なインタラクティブレンダリングスピードを実現した.その上,祭りのルートにおいて衝突の可能性がある領域は比較的限られているため,衝突可視化はその領域周辺に焦点をしぼり実行される.

 

5. Conclusion

本論文では,計測点群をポリゴンメッシュに変換するのではなく,計測点群のまま衝突可視化を行う手法を提案した.従来の半透明レンダリング手法では,レーザースキャンによって取得された大規模点群を扱うさいに問題があった.それとは対照的に,提案手法を用いることで,正しい奥行き感覚で衝突が強調される(正しい衝突範囲を把握できる).衝突範囲と衝突のリスクが高い範囲を強調するための適切な色と不透明度もまた提案した.私たちの可視化は,衝突範囲を確認するための直感的な方法を提供する.

私たちは,レーザースキャンされた京都府三条通りと文化的に重要な山鉾の点群との衝突を調査することによって提案手法を検証した.可視化結果に基づいて,祇園祭の伝統的な巡行ルートに沿った山鉾の巡行の復興の可能性の調査が行われた.例えば,山鉾と電線との衝突が多く検出されて,危険であることがわかった.山鉾が交差点に差し掛かる際に,住宅と衝突する可能性があることもまた明らかになった.

将来的には,リアルタイムで衝突判定シミュレーションを行うつもりである.この目標のために,並列処理技術を利用することによって本手法をさらに加速させるつもりである.

私たちの手法は,各点と最近傍のポリゴンとの距離を正確に計算することによって,点群やポリゴンメッシュの衝突可視化に応用可能である.もし,ポリゴンメッシュデータがすでに用意されているならば,この応用は明らかに有用である.しかしながら,この応用において,私たちの正確な半透明可視化の適用方法はそれほど簡単ではない.その他の応用可能性としてボリュームデータの衝突可視化がある.ボリュームデータが適切に点群に変換されれば,本衝突可視化手法を適用することができる.この応用もまた有用である.というのも,多くの文化遺産はCTによってスキャンされ,ボリュームデータとして保管されているからである.

 

Words

  • float 山鉾
  • procession route 巡行ルート,行進ルート
  • see-through visualization 半透明可視化
  • robust 影響を受けない,不変
  • precisely 正確に
  • So far, これまでのところ,
  • intangible 実体のない
  • Thus far, これまで,
  • stochastic 確率的な
  • transparent 透明な
  • redundancy 余分,余剰,冗長,重複
  • reduction 削減
  • religious 宗教上の
  • appease 〜をなだめる
  • outbreak (突然の)発生
  • epidemic (突然のよくないものの)流行,はやり
  • The Yama-Hoko floats are portable shrines. 山鉾は持ち運びできる社である.
  • resurrect 復活させる,復興する
  • opacity 不透明度
  • inter-point distance 2点間の距離
  • tuning 調律,傾向
  • subgroup セット群
  • uniform 一定の,一様な
  • a small local surface segment 局所領域
  • size 面積
  • formula 公式
  • Similarly, 同様に,
  • raw 元の,生の,計測したままの
  • validation 検証
  • experimental 実験の
  • conventional methods 従来の手法
  • opaque 不透明な
  • performance 性能
  • repetitively 反復して
  • In contrast, 対照的に,
  • seize 把握する
  • intuitive 直感的な
  • trivial 簡単な,些細な,普通の
  • acknowledgments 謝辞